「心打つ、骨太のアメリカ映画」マークスマン garuさんの映画レビュー(感想・評価)
心打つ、骨太のアメリカ映画
昨年2021年公開のアイスロードは、 アクション映画としての出来が良く、大いに楽しめた。 リーアム・ニーソンのアクション映画にはハズレがないという印象で、 今回も期待しつつ、寒空の下いざ映画館へと出発。
見始めて30分ほどで、 ヒーローが活躍する類の作品とは違うことがわかる。 一向に激しいアクションシーンが出てこないのだ。 元凄腕の兵士という設定ではあるが、 現実離れした戦いをするわけでもなく、 子供を連れて悪者から逃げるばかり。 途中で自分の役目を降りようとする人間臭ささえ見せる。 終盤に撃ち合いと格闘のシーンがあるが、 ここも地に足の着いた演出が施されており、 物語のリアリティが確保されている。 そして最後は、 とても深い余韻を残して終わる。
結局、脚本が素晴らしいのだと思う。 アイスロードも娯楽映画としての脚本の完成度が高かったが、 ニーソンの映画にハズレがないのは、 脚本の選択眼が鋭いからなのだろう。 そしてもうひとつ、 監督がイーストウッドの作品のプロデュースを手掛けてきた人物だと知り、 非常に納得した。 今まさに新作の「クライマッチョ」が上映開始されたばかりだが、 マークスマンを観た人は、イーストウッドの監督作品を一本観たような気分になると思う。
監督のロバートロレンツ氏は、 あくまでも骨太のアメリカンスピリットを描き、 広く世に伝えようとしている人なのだろう。 母性的な価値観を敷く日本社会とは違い、 独立独歩で生きようとする父性的価値観を基盤とするアメリカ人の人生観は、 このような監督やプロデューサーから映画を通して教えられてきたように思う。 今回も、セリフの一つひとつが奥深く、新鮮だった。
クライマッチョではプロデューサーではないものの、 これもまた古き良きアメリカ人の良心に触れることができる作品なのではないかと期待している。 近日中に観に行くつもりだ。