劇場公開日 2021年12月3日

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「うーん、評価がものすごく難しい…(ネタバレなしながら重要語句リスト入れました)。」天才ヴァイオリニストと消えた旋律 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5うーん、評価がものすごく難しい…(ネタバレなしながら重要語句リスト入れました)。

2021年12月3日
PCから投稿

今年192本目(合計256本目)。
 ※「アリア」「フラ・フラダンス」も観てきましたが、これらにレビューの需要はないと思うので飛ばします。

 他の方も書かれている通り、いわゆるユダヤ人問題を扱ったお話になります。
実話ではないですが、歴史がそうである以上は、「実話に準じる」という扱いにはなると思います(かつ、その部分がかなりその話題になる)。
音楽に関することは、音楽コンサートで使われるような語を知っていれば有利かな…とは思えますが、音楽を扱うシーンはほとんどないため(序盤と終盤で各1回くらい)、そこは知識の差は埋められないと思います。

 第二次世界大戦がはじまると、ドイツは他国と戦争をしたわけです。イギリスはドイツと戦っていたわけです。ここでナチスドイツのユダヤ人迫害が始まります。ポーランドに逃げた方もいれば、他国も含みます。そして、映画の中ではポーランドからイギリスにやってくる(逃げてくる)ようになっています。しかしポーランド自体もユダヤ人「だけ」の国ではなかったので、ポーランドもユダヤ人を何とかしたい(当時、難民が多すぎて対応が難しかった)という、単純な「イギリスとポーランドの対立」という問題ではなかったわけです。

一方、これは私は何度か書いているのですが、今のユダヤ人問題、換言すればイスラエル問題の元になったのは、実はイギリスの「サイクス・ピコ協定」です(1916)。この協定や、別の国とは全く違う協定をしたり、イギリスが相手国によって協定の内容をあれこれ変えたため、完全に破綻してしまっており、現在のイスラエルを含む国境が摩訶不思議な線引きになっているのは、こうしたイギリスの「適当な政策」(サイクス・ピコ協定含む)によるものが多いです(それがさらに、イスラム系国にも波及して、ISIS問題を引き起こした)。

もっとも、この問題はイギリスが制作しており(実際は、いくつかの国の合作)、イギリス自体が不利になるような表現はしないと思うのですが、この点、つまり、サイクス・ピコ協定にまったく触れないので、何が論点なのかかなりわかりにくくなっています(イギリス側の家族もその話は意図的にしないのか、まったく出てこない)。

さて、本題のタイトルは The Song of Names (あえて訳せば「名前の歌」)です。
これを何を指すのかは…。映画を見るとお分かりになるかと思います。

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(減点0.3) この映画で求められるのは、第二次世界大戦時のユダヤ人問題という、この映画の予告編などからで想像がつく範囲を超えてしまっており、ある程度は高校社会の世界史でもやると思いますが、現代史は何かとコマ数が足りずに駆け足で終わってしまいがちなところもまた事実です。
ちょっとこれは肩透かしを食った方も多かったのでは…とは思います。
日本公開のときは、この辺、もう少し字幕説明を増やすなどは必要ではないかな…と思いました。
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 ▼ この映画内で必要な事項(ネタバレなしなので、ネタバレになる部分は省略)

 トレブリンカ収容所:現在のポーランドにある収容所で、主にユダヤ人をターゲットに収容していたとされるところのひとつ(このユダヤ人収容作戦を「ラインハルト作戦」といい、三か所に集めていたのです。残りの2つは、ベウジェツ収容所とソビボル収容所)。

 棄教(ききょう): 信仰している宗教をやめること。宗教によって認められているもの、いないものがあり、また国によっても違います(日本では日本国憲法で信仰の自由を規定しているため、「棄教するのは止めないが、信仰している方には配慮してください」というのが一般的なようです)。

  ※ この「棄教する」という話は renounce (~を捨てる/(主義主張を)捨てる)という、かなりマニアックな語が出ます。このような状況でないと使われない語です。

 シナゴーグ: ユダヤ教において、ユダヤ教信者が集まる場所(会堂/「教会」を考えるとわかりやすい)のこと。

 ラビ: ユダヤ教信者の中でも年数、学歴ともに認められ、宗教指導者と呼ばれるような人のこと(国によっては「賢者」「師」等という"称号"が与えられることもあった)。

yukispica