「【”世界の全てが、平和になるために・・。そして、政治思想の壁はいつ無くなるのであろうか・・。”米ソ冷戦期の「キューバ危機」回避のために行動した英国とソ連の崇高な二人の姿をスリリングに描いた作品。】」クーリエ 最高機密の運び屋 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”世界の全てが、平和になるために・・。そして、政治思想の壁はいつ無くなるのであろうか・・。”米ソ冷戦期の「キューバ危機」回避のために行動した英国とソ連の崇高な二人の姿をスリリングに描いた作品。】
ー 今作で象徴的に描かれるバレエ観劇のシーンが印象的である。
東欧を行き来する英国人商人ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)が、GRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)の重要なメンバー、オレグ・ペンコフスキー大佐(メラーブ・ニニッゼ)と共にロシアの劇場で「白鳥の湖」を観劇し、終演の際、他の観客と同様に椅子から立ち上がり、”ブラボー!”と叫び、拍手するシーンである。
この「白鳥の湖」を観劇するシーンは二度描かれる。
一度目は、オレグ・ペンコフスキー大佐が、米ソの冷戦状態を憂い、且つフルシチョフの直情的な言動を近くで見ていたからこそ口にした”あの男が核のボタンを握っているのは、危険だ・・”と言う思いで、重要な手紙をCIAに届け、CIAとMI6の協力により、ウィンとの距離を縮めるために「白鳥の湖」に誘うシーン。
二度目は、二人の身が危うくなった状況で、ウィンが単身ロシアに乗り込むシーンである。
□この二つのシーンを見て思ったのは、
”文化の壁は異なる思想を持っていても越えられるのに、何故、政治的な壁は越えられないのであろうか・・。”
という事である。
◆感想
・ソ連が崩壊し、冷戦という言葉は、表面上は使われる事は激減した。
だが、この作品は当時の冷戦状態のソ連と米国が、”核武装競争”をキーに、激しく対立する姿を、英国の商人ウィンとソ連のGRUの崇高な思想を持つオレグ大佐が、二人の大切な家族を愛する姿と共に、距離を縮め、大切な友となって行く過程を、スリリングに描いている。
ー イントロで流れる、”実話である”と言うテロップの重さが、見ているうちにドンドン増してくる。
そして、CIAとMI6が裏で様々に動く姿を描くことで、現代でも世界のあちこちに、”冷戦”が存在する事も、暗喩している。ー
・観る側に、二人の行為を”大変に崇高なモノ”として、劇中頻繁に登場する、ウィンとオレグ大佐の愛する妻と、幼き子供たちの姿が、この映画に重みを与えている。
ー 愛する妻、幼き息子、娘がいながら、世界の安寧、平和を願い、危険な行為に身を投じる二人の姿。ー
・又、最初は嫌々ながら(それはそうだろう・・。)ソ連側から得る機密情報の伝達役(クーリエ)に仕立て上げられたウィンが、何度も、モスクワ往復を繰り返す。心配する妻の姿。最初は”浮気だと思っていたが・・。
ー この前半のシーンも、最後半のウィンと妻の再会のシーンに効いてくる。ー
・そして、友になったオレグ大佐と家族を亡命させるために、彼が、単身モスクワに乗り込むシーンは心に響く。
ー ウィンの心が葛藤と共に、変遷していく様を、ベネディクト・カンバーバッチが絶妙に演じている。ー
・二人の行為が、KGBに漏れ、ウィンは独房に繋がれ、オレグ大佐は亡命寸前に家族の前で囚われるシーン。
ー 特に、KGBのウィンに対する処し方は、苛烈に描かれる。
久々に会った妻が見た、異常に痩せこけたウィンの姿。
当時のKGBの恐ろしき組織の片鱗が伺える。ー
<KGB幹部たちが盗聴する中で、再会したウィンとオレグ。
オレグは拷問により力なく、それでもウィンを思い
”ウィンは運び屋として利用しただけだ・・”
と話すが、オレグの真意を見抜いたウィンがオレグに対し、何度も叫んだ言葉。
”君は、世界を救ったのだ!””君は、世界を救ったのだ!”・・。
今作は、処刑されたオレグが遺したメモから明らかになった実話であるそうだが、米ソの冷戦下においても、人間性を失わなかった二人には、深く敬意を表します。
そして、今作は製作にも関わったベネディクト・カンバーバッチ出演作品の中でも、ベストアクト作であると、私は思います。>
この作品、とても良かったですね。2度鑑賞しました。カンバーバッチのベストアクト作品…私も同感です。なんせ、丸刈り、フルヌードも披露してますからf(^_^;たった数分の為に丸刈りになり、何キロ減量したのでしょうか?メイクアップではなく、明らかに頬がコケていました。役者魂を感じました(>_<)DAU退行は初日に観に行きました。私を含め数奇な物好きは7名でしたf(^_^;間違いなく赤なので、次作を上映してもらえるか、不安デス。