「色々と突っ込み所の多い作品。」RUN ラン FSSさんの映画レビュー(感想・評価)
色々と突っ込み所の多い作品。
アメリカで実際に起こった事件を元ネタにしたサイコサスペンス。前知識なしに見ましたが、はっきり言って期待ハズレ。
「障碍を持った娘の世話をしている母親」+「サイコサスペンス」という設定から、「まさか"代理ミュンヒハウゼン症候群"ネタじゃそのまんま過ぎるから、どうその辺を覆して来るかな〜」と期待していたら、そのまんまで逆にビックリしました(笑)。
この手の「何が真実か」に焦点を当てたサスペンスやミステリーは、ラスト付近まで真相が分からないように脚本構成に工夫が必要なはずですが、中盤を過ぎた辺りで(近所の知り合いの男を〇した時から)、やっぱり母親が狂っている事があっさり確定してしまい、そのまま何の工夫もドンデン返しも無いまま終了。
とにかくメイン登場人物が二人しかいないため、展開やオチの予想が容易についてしまうのがマイナス要素。脱出するシーンとかにしても、クロエの電気工学?の知識が「窓を割る」くらいしか活かされておらず、車椅子のハンデを知識で覆すような"知的"な抵抗シーンが少ないのが物足りない。
"新生児の誘拐オチ"も子供なら誰でも良いという感覚にはまったく感情移入も出来ません(母親が新生児の取り違いを知らなかった、とかならまだアリだけど)。母親のダイアンの過去についてもちょっと背中の傷を思わせ振りに見せただけで、視聴者の想像に100%丸投げ。そのためこちらも「ダイアンも精神を病んでいたのだろう」という、何ともありきたりな動機を想像するしかなく、虐待に至った過程に感情移入が出来なくなるのです。
あとやはり他の人のツッコミにも多いように、私も終盤に監禁された地下室に過去の「誘拐事件の新聞記事」や「クロエの死亡診断書」などの書類がご丁寧に保管してあったのはさすがに呆れた(笑)。あの母親にとっては絶対に思い出したくない(認めたくない)記憶であり、致命的な証拠でもあるはずなのに、どうしてあんなものを保管してあるのか?あれほどサイコパスなら過去に纏わる書類などはすべて処分したり、自分の記憶すら改ざんしていそうなものなのに、わざわざ「クロエに見つけられやすい場所」+「資料に名前まで書いて保管してある」という、ご都合主義的な展開に失笑してしまった。
そもそも病院から新生児を誘拐して自分の子供として育てるのも無理があるだろ。病院ならあちこち監視カメラもあるでしょうし、しかも同じ日に子供を亡くした母親まで消えたら、「ひょっとしてあの人が誘拐したのかも…」と真っ先に容疑者候補でしょう。当然、出産日のダイアンの個人情報もあるでしょうから(入院した地点ではまだ子供を亡くしていないのだから嘘の情報を書く必然性がない)、よく今まで警察に怪しまれずに育てられたなと気になってしまいます。
ラストにしても、結局、歩けるようにもなってないし、せっかく自由の身になったんだから、何年も陰湿な仕返しなんかしてないで、もっと前向きに生きるハッピーエンドを見せて欲しかった。オマケにクロエ自身が子供に虐待をしているような発言をする事で、安っぽいホラーみたいなエンディングになっていて、返って「虐待はいけない」というメッセージ性が伝わりにくくなっている気がしました。クロエ役の女優さんの頑張りに★1つ追加です。