「極限状態の中に研ぎ澄まされたサスペンスの魅力が光る」RUN ラン 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
極限状態の中に研ぎ澄まされたサスペンスの魅力が光る
チャガンティ監督の前作「search」で革命的なサスペンス構築力と新時代の映像文法に酔いしれた自分にとって、次なる「RUN」はことのほか意表をついた作品に思えた。きっと一般的な監督ならば最初に「RUN」のような作品で自らのシンプルながら強靭な感覚や才能を世に知らしめつつ、次の段階へ向かうのだろう。だがチャガンティの場合、第一歩で想像もつかない次元に足跡を残し、二歩目で極めてオーソドックスなところに着地した。よく言われるようにヒッチコックをはじめとする伝統的なサスペンスの語り口に則しつつ、それでいて主人公が受け身ではなく能動的に呪縛から解放されたいと願うとき、破格の意志の力が放出される。と同時に、行動の制約、視点の制限という意味では前作を踏襲する部分もあり、物語と状況がよりナチュラルに馴染んでいる進化ぶりが伺えたりも。できれば前情報をいっさい入れず、ニュートラルな視点で楽しみたい作品である。
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