「歳は自分で決める。私は、18歳だ。」ベル・エポックでもう一度 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
歳は自分で決める。私は、18歳だ。
フランスのブルジョアが、金にものをいわせて、"オーダーメイドの時間旅行"を楽しむ。クライアント側も、雇われた役者陣も、再現性の高い映画セットさながらの"空間"と"時間"を、配役になりきって忠実に演じる。
はじめ、悪趣味だと思った。金持ちの"プレイ"にしか見えなかったからだ。そこには、嘘しかない。過去の美化された思い出をやり直す、いやらしい自己満足にしか思えなかった。
それが、どうだ。ヴィクトルは、どんどん活き活きとしていくじゃないか。それは、そこに喜びがあるからだ。嘘を本物に変えようとする情熱があるからだ。ところがある時に、自分のとってかけがえのないものに気づく。ノスタルジックな感情がそれを思い出させる。長年当たり前に手にしてて忘れてしまったものに。
ああ、なんて若さ溢れる老人なんだろう。ヴィクトルの気分は、まさに今18歳なのだ。ネガティブな事実なんて、かるく吹き飛んでいく。妻の情事なんて些細な事にしか思えないのだ。そしてその強い思いは相手をも動かす。だって、もともとヴィクトルはイラストレーターとして才能に恵まれ、人を魅了してきた男なのだから。見直して当然なのだ。
時間旅行をすることになったきっかけも、思いやりを感じた。その結末にも、愛があった。
萎びて、しょぼくれた男女にとって、もし捨てるほどの金があるのなら、こんなビジネスが実在しててもいいかもしれない。ただ、みんなこんな結果を手にするとは限らないが。
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