「理解した〈つもり〉になっていないだろうか、と自分の心に問う。」彼女が好きなものは Haruさんの映画レビュー(感想・評価)
理解した〈つもり〉になっていないだろうか、と自分の心に問う。
深いテーマだった。2時間近くの作品でいろんなことを考えた。
物語は、同性愛者の主人公(男子高校生)が、1冊の本を拾うところから始まる。その本は、クラスメートの女子高生が買おうとしたBL漫画だった。彼女は中学時代のトラウマで、自分がBL好きであることを隠しているという。そんな彼女が主人公と話しているときは、どこか楽しそうで話しぶりが弾んでいた。「本当に好きなんだなぁ」と思わせるくらいに。
好きなものを否定される。それは、自分という人間性をも否定されることにつながると考える。それも、生きづらさの原因のひとつだろうし、特に「学校が世界の全て」の時期であろう思春期の学生にとっては、もはや絶望に近いものだ。彼女の場合、中学時代の友人から「え、キモ」のたった3文字で関係を絶たれている。自分が好きなものを言っただけなのに、それだけで仲間外れにされるのか。今までの自分の価値観も否定されたような気がして、どこか落ち着かないし立ち直れない。そんな感情になる。
中盤、主人公のある行動がきっかけで、学校全体として同性愛について考えるようになる。教室で生徒が意見を言うシーンは、映画であることを忘れるくらいリアル感のある撮り方だった。生徒たちが「ドラマや映画などで取り上げられるようになって…」「相談してくれたら…」など、まるで他人事のような意見を言う中、クラスメートの小野がこう言った。「理解者面すんな」と。このことにハッとした。
確かにいろんな媒体で取り上げられるようになって、世の中にはいろんな悩みを持つ人がいるという知識は得られるようになった。しかし、理解した〈つもり〉になっていないだろうか。実際にその当事者を見かけた場合、興味の対象物として見てはいないだろうか。小野のこのセリフで改めて気づかされた。大事なのは、その知識があるうえで、その人のためにどう行動するのか。その第一歩が重要だと考える。
というのも、なんか理想論なんだよな。一人ひとりの考え方は違うからなぁ。そんな深いテーマを考えさせられた映画だった。