「【”いつか日本がジェンダーレス社会に、なりますように。”腐女子とゲイの恋愛を軸に彼らを優しく、時に厳しく応援する友人達の姿が心に沁みる作品。】」彼女が好きなものは NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”いつか日本がジェンダーレス社会に、なりますように。”腐女子とゲイの恋愛を軸に彼らを優しく、時に厳しく応援する友人達の姿が心に沁みる作品。】
ー 2017年に荻上直子監督の「彼らが本気で編む時は」が劇場公開される”前”、ある映画サイトで、採点1が、立て続けに付けられた事があった。
そして、当時、アメリカで暮らしていた荻上直子監督のインタビュー
”アメリカでは、沢山の同性愛カップルが街中で、普通に暮らしている。それが、日本に帰国すると、同性愛カップルを見ることが無い・・”
今作も、前半は非ジェンダーレス社会の中で、自らの性的嗜好をカミングアウト出来ない笑顔無き男子高校生安藤君(神尾楓珠)と、腐女子(嫌な言葉だ・・)である事がバレ、悲惨な中学生活を送った三浦紗枝(山田杏奈)が、書店で”ぶつかって”しまうシーンから始まる。ー
<Caution ! 少しネタバレです>
・今作を観て、今更ながらに思うのは、自らの”日本の社会に受け入れられ難い”性的嗜好に悩んでいる人に年齢は関係ない、という事である。
先日、鑑賞した「リトル・ガール」の”少女”の強き両親が居る訳ではなく、毎日悶々と苦しき日々を幼い頃から一人抱えて暮らしている、という事が象徴的に描かれた、安藤君のゲイのライン友だちの真の姿が明らかになる再後半のシーンは哀しい。
・今作の見所は多数あるが、
抑制した演技で安藤君が抱える哀しみ、不安を体現した神尾楓珠と、近作「ひらいて」の姿も記憶に新しい、”好きになった男の子が、ゲイだった・・”というショックを乗り越え、全校生徒の前で腐女子である事を、カミングアウトするシーンを演じきった山田杏奈の姿であろう。
この若き女優さんの芸歴は長いが、「ひらいて」と今作で、更に素晴らしき女優さんになられたと思う。
・又、二人を様々な表現方法で支える、安藤君の5歳からの幼馴染で剽軽な亮平(前田旺志郎)や、ぶっきらぼうながらも、周囲に媚びずに、正論を言う小野(三浦りょう太:観た事ないなあ、と思っていたら何と映画初出演だそうである!)の描き方も素晴らしい。
<今作は、鑑賞側に、”人間として自分の性癖と対峙しながら生きるとはどういう事か”と言う、とても大切なことを考えさせてくれる作品である。>
■それにしても、日曜日の午後という、映画館のゴールデンタイムに、鑑賞者が私一人というのは、何とも寂しかった。
多くの方に鑑賞して頂きたい作品である。