モーリタニアン 黒塗りの記録のレビュー・感想・評価
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名前のせいかもしれないけど、カンバーバッチの細長い顔を見るとキュウリを連想してしまう?
『グアンタナモ、僕たちが見た真実』(2006)を観たときに、グアンタナモの実態を知った。アルカイダの首謀者ビンラディンの関係者として、拘束することに躍起になっていたアメリカ政府も理解できるが、その裏には恐ろしいまでの拘禁生活や拷問、虐待、洗脳があった事実を知ったものだった。
そんな中でもアルカイダの中枢部分に関与した者として、大した証拠もないのに違法な投獄があった事実を思い知らされる今作。モーリタニア青年のモハメドゥがドイツ留学していたときにアルカイダへとリクルートしたということやビンラディン名義の電話があったことなど、同時多発テロ事件とは直接関係なさそうな理由のみによるものだ。
日本でも公文書が黒塗りにされたニュースをよく見たけど、どこでも行われてるものなんですね。都合の悪いことをひた隠しにする権力者の腐敗構造、冤罪、でっち上げの横行。さらに事件の被害者遺族の感情やアメリカのメンツだけにこだわっていたブッシュやラムズフェルドという実名も晒されるのだ。
ストーリーの中盤まではモハメドゥの感情が変化する様子によって、それほどまでの内容とは感じられないけど、悪夢がよみがえるシーンには驚愕の一言。こんな拷問もあったのか?!ヘビメタとカントリーの大音量って・・・ヘビメタ好きの囚人だったらヘッドバンギングしまくって頸椎損傷、硬膜下血腫で死に至るかもしれない・・・。
MFR(記憶用覚書)について説明もあったのですが、つい忘れてしまい、何だっけ?とならないように記憶しなければなりません。あぁ、もしかすると俺もヘビメタにやられちゃったのか・・・
グアンタナモで酷い虐待が行われていたのは周知の事実。先進国でも国家...
グアンタナモで酷い虐待が行われていたのは周知の事実。先進国でも国家ぐるみで人道に反する事が行われるって恐ろしい事です。
証拠は無いけど本当に無罪だったのか、そこはまた微妙な描かれ方でしたね。
エンタメとしてはもうひと工夫欲しい感じでした。
誰でもいいわけではない
どうしたらあの環境、状況で正気を保てるのだろう。
彼にはアラーがいたけど、私からしたら神が絶対に正しいわけではないと思うし、法律が全て正しいとも思わない。
罪になることはやっていない、という、自分を信じられる精神的な強さがあったからかな?
もう一つ、ラストの映像からわかるけど、明るい人だ 笑
だからかな?
とにかく、強い、ぶれない、柳みたいなしなやかさを感じた。生きていくこととチャンスを掴むことへの情熱と頭の良さを、持った人たちがたくさんアンチアメリカの国にはいるんだろうな、とも思った。
裁判に勝ったのにその後7年間も拘束され続けるなんて、その段階で私なら絶望しちゃいそう。
これが事実の世界とは、アメリカ、恐るべし。
大義の為なら個人の命なんか二の次なのかな。
ただ、そんな中でカンバーバッチさまの「誰でもいいわけではない」とおっしゃった一言に救われた気がした。
誰でもいいから疑わしきだけで犯人、死刑だなんてたまったものではない。実際、現実はきっともっと厳しかっただろう
けど、人権擁護弁護士が本当に正しい人を救ってくれるのは素晴らしいと思う。
弁護士って、たまになんでこんな人を救おうとするの?と思ったりしてしまうが、人間ひとりひとりのやってきたこと、やらなかったことを法の下に明らかにする,というやはりすごい仕事なのだと改めて思った。だから、弁護士さんには余計にお金儲けだけでなく、名誉や知名度のためでなく、法の下のジャスティスのために仕事していただきたい。と祈る。
神も法も信じないとかいいながら、やはり最後のよすがはそこなんだよね 笑
ジョディー・フォスターとカンバーバッチ様の共演は嬉しかった。相変わらずお美しい、ジョディー・フォスター。
アラビア語では、「自由」と「許し」は同じ言葉だ。
モーリタリアン=モーリタリア人。不勉強ながら、モーリタリアと聞いて、何処にある国かピンとこなかった。なるほど北西アフリカに位置し、モロッコ・アルジェリア・マリ・セネガルに囲まれた領土、旧フランス植民地、アラブ系民族か。
そのモーリタリア人であるモハメドゥが、9.11テロの関与を疑われてアメリカに拘束され、キューバのグランタナモ基地(かの悪名高き)で過酷な拷問を受けた実話をもとにした構成。実に、14年2か月間の拘留というのだから、おそらくどれほど想像しても、現代の平和な日本で暮らしている自分には想像しきれないのだろうな。
彼を死刑囚として立件する終着地点を確定したうえで進める米国家側と、人権擁護の弁護側。国家側は不都合な資料は一切開示する姿勢は見せず、どうやってもゴリ押しして犯人に仕立てようと躍起。次の9.11が起きる前に決着をみせたいのはわかる。が、性急で強引な対処が、なにかを信じている人間には無意味なことがどうしてわからないんだろう。だから、本当の犯罪者の偽りの言葉なのか、無実のモハメドゥの切実な言葉なのか、どっちも同じにしか聞こえなくなる。
映画の中でもいう。「9.11は許しがたい。犯人はその償いはしなければいけない。だが、その報復を受けるものが誰でもいいわけではない」と。そこは本来、正義の国を標榜するアメリカという国家の専売特許じゃないのかよ。
当初、通訳が必要だったモハメドゥが、いつしか英語が堪能になっている。それも開放をあきらめない彼の不屈の努力の賜物。嬉しそうに歌うのがボブ・ディランの歌っていうのも、いいなあ。
その歌『the man in me』の冒頭の歌詞は"俺の中にいる男は、どんなことでもやってのける"と叫ぶ。まさに、モハメドゥの心境そのものだった。
アメリカっていう国、つくづく尊いなと思う。
国にとって隠蔽したい過去を、このようにして映画で取り上げるところ。
国としては知られたくない恥部を、公開するというところ。
アメリカっていう国はすごいなと、改めて思いました。
黒塗り文書。
日本と照らし合わせてしまいます。
アメリカは許さなかった。
この差は何なのでしょう。
日本でこのような力強い映画が生まれることを願います。
違うな、日本でこのような隠し事が起きないことを願います。
映画としても、今観るべき映画としても
大変優れた作品です。
古今東西、政府のパワーをもってすれば、イチ個人なんかどうとでもできる。
それは分かっていたつもりですが、それにしても事実として追体験するのはわけが違います。
個人的に面白かったのは、アメリカは公文書をキチンと記録保管する国なんだということ。
仮に尋問が拷問であっても、その様子をMFRに記録するということだ。
権力の濫用であっても後から検証可能となっているそのシステムに不謹慎ながら興味深いと感じた。
どこぞの国のようにシュレッダーしてしまいましたなんて馬鹿げた言い訳は皆無です。
実録ものではありますが、ミステリー•サスペンス•法廷モノなど多くの切り口があり、お話としても面白いです。
なによりも、ジョディフォスターとカンバーバッチの2枚看板を使って娯楽大作として、仕上げてくれたことに感謝です。多くの人が観て感じるべき作品なので。
良作の多い今年にあっても決して霞むことのない傑作です。
だからアメリカは…
14年もの長い間、人生を奪っておいて一言の謝罪もなかったとはね〜
アメリカって謝らないね〜
そういう傲慢な、アメリカ1番的な考え方がテロの標的にされるんじゃない?笑
モハメドゥさん、生きて帰れて良かった。
拭えぬ闇
ベネディクト・カンバーバッチ、「クーリエ」に引き続き政治の作品に出演、しかし今回は弁護する側という前回の被害者的立場とは全然違う人に成り代わっていました。
徹底して描かれるのは9.11の裏側、つまりその後の話なんですが、不法逮捕が続出しており、モハメドゥもその1人でした。タハール・ラヒムの好演も手伝って、辛さ悲しさ、その中から見出せる希望、が強く強く表現されていました。
特に後半の拷問シーン。水責めに無理矢理な性行為、ひたすらの暴力と見るに耐えないものになっていました。
エピローグではアメリカという国が抱えてる闇を一気に羅列していきます。イギリス製作の映画とはいえ、ここまで切り込んでくるのはさすがだなと思いました。
エンタメとしても政治劇としても中々面白いさくひんでした。
鑑賞日 10/30
鑑賞時間 12:30〜14:50
座席 C-12
アメリカの闇
自宅にいたモーリタニア人の青年モバメドゥは事情聴取という名目でアメリカに拘束され、9.11アメリカ同時多発テロに関与した疑いで取調べを受けた。弁護士のナンシーとテリーは、モハメドゥの弁護を引き受け真相究明にとりかかった。モバメドゥは裁判すら受けられないまま、キューバのグアンタナモ米軍基地で拷問と虐待の日々を送っていた。調査を始めたナンシーたちだったが、黒塗り資料の壁に阻まれなかなか調査が進まなかったが、次第に拷問による自白だった事が明らかになってきたという話。
これ、実際に無実の罪で8年間も起訴もせず拘束し、無罪判決が出てからもさらに7年間拘束し続けたとは、酷すぎるアメリカの闇だな、って思う。
拷問自体はホロコーストや北朝鮮を扱った作品で多く観てるのでそれほどとは思わなかったが、最近のアメリカが行っていた事に衝撃を受けた。
ナンシー役のジョディ・フォスター、ステュアート中佐役のベネディクト・カンバーバッチは流石に素晴らしかった。モハメドゥ役のタハール・ラヒムの意志の強さと悲しみの表情が良かった。
骨太な実話エンターテインメント
TRUE STORYと銘打ち、国家元首も政府高官も、とんでもない命令の指示者として、或いは不作為者として実名で登場する、しかしエンターテインメントのツボは外さず説得力を持って見続けさせる映画力(えと、そこじゃないですかね)。BBC製作というだけで増す信頼感。
どこの国でもあることと開き直れない、他国の人権問題を批難している米国政府が起こしている問題。米国ではない英国の制作ながら、スターを起用してエンターテインメントになせる事は自由主義陣営のまだ信頼できる自浄作用、中国では間違いなく許可されないだろう(それどころか今後は香港映画さえ過去作を含めて検閲強化されるという…これはまた別の話)。
同世代のスター、ジョディ・フォスター、あんなにスルッとしたお顔だったのに流石に目立つ皺、でも変わらす美しい。ラストに出てくる写真の御本人のイメージ通りの白髪。カンバーバッチは御本人とは大きく異なるルックながら真面目さを全面に押し出して納得感。
自由と許すが同意のイスラム、深い。
グアンタナモ、アメリカ合衆国が9.11の報復、正義を振りかざすために違法なことを行い続けた施設、というイメージを持っていたが、目にしたニュース映像や内容がおぞましく、深掘りしたいと思わなかった。この映画を見たいと思ったのは、何よりジョディ・フォスターだ。そしてカンバーバッチ。この二人が共演するなら見ないわけにはいかない。実際、期待を裏切らない作品だった。
アメリカはやはりおかしな国だ。法律が遵守され、権利が守られる制度はあるが、権力がそこをねじ曲げ、政権が変わるとその悪事が必ずばれる。正義感のようなものを持ってる人が必ず暴く、という印象。だてに聖書に宣誓するわけではないのか。
驚いたことに、イスラム教もキリスト教も正しい信仰を持っている人には愛があり、語る言葉も祈る内容もほぼ同じ、そして人を許す事が出来る。この壮絶な映画の中でこの真理を見る事ができるとは予想しておらず、とても感動的なシーンだった。
宗教は関係ない、悪いのは私利私欲と自分勝手を通そうとして暴走する人々。それをテロリストというのだろう。
この作品の最後にご本人達が出で来る所ホッとさせられた。
誰かに責任を負わせなければならなかった
本作で描かれた事実に絶句した。
ここまで、視覚的に観ているのが辛くなるのは初めてだったし、モバメドゥ本人の苦痛は想像を絶するものだろうと思った。
真意はわからないが、誰かに責任を負わせなければならないほど(当然誰でも良いわけはない)アメリカ人の怒りは収まりきらなかったのかなと思った。
その中で、怒り、偽りの事実に囚われず戦い続けたナンシーやスチュアートがいなかったらと考えると恐ろしい…
大国の隠された真実
映画紹介には、法廷サスペンス・ドラマと紹介されていたが、これは、立派な社会派ドキュメンタリー・ドラマである。冒頭、「This is a true story」とあり、監督がドキュメンタリーでは定評のあるケビン・マクドナルドだけに、9.11爆破テロの容疑者として無実の罪で拘束された、モハメドゥの16年もの長きに渡る闘いを、見事に描いている。
9.11は世界に衝撃と恐怖に陥れた。当然、アメリカ側からしたら、躍起となってこの事件に関わった者達を取り締まり、犠牲者への報復を優先したのも理解できる。実際、ビン・ラディンが次第に追い詰められていく様子は、世界中が固唾を飲んで見守ったのも事実。
しかし、その裏では、こうした罪なき者への拘束や拷問を通して、裁判も受けさせないで、犯罪者へと祀り上げる魔女狩りのような事も行われていたことを、改めて知らしめる作品となった。また、それと同時に、国家ぐるみの恐るべき真実の隠蔽や陰謀が、実際に渦巻いていることに驚愕を覚える。拘束されたモハメドゥに対する、精神を狂わすほどの、拷問の数々。それに耐えて耐えて、耐えきれなくて、真実を曲げてまで強制自白させられた言葉…。あまりにもやるせない切なさと痛みが伝わってきた。
今回、モハメドゥ役のタハール・ラヒムは、多分、初めてスクリーンでお目にかかった。フランスを代表する俳優ということで、英語も流暢に話せるし、これからハリウットへの進出も楽しみな俳優だ。そして、何といっても、弁護士役のジョディー・フォスター。役柄、かなり顔の皺を強調し、年老いたビジュアルだったが、強く、諦めない、鉄の女としての健在ぶりは、『タクシー・ドライバー』から知る者として嬉しい限り。また、ベネディクト・カンヴァーバッチは、ジョディーと敵対する軍の検察側ながら、正義を貫くあたり、アメリカもまだまだ捨てたものではないことを訴えてくるようでもあった。
エンドロールで、国に戻り、自由を謳歌しているモハメドゥが映され、そのBGMにボブ・ディランの曲を流すのも何とも皮肉。しかし、彼が、「アラビア語では、自由と赦すは、同じ言葉」と言っていた言葉を象徴するようなシーンでもあった。
騙された。
かなり衝撃的な作品なのに、良くも悪くもあまり評されていないのは何故なんだろう。
役者陣も豪華だし、もちろん演技も素晴らしい。
正直、ジョディ・フォスターがいつの間にかこんな老けちゃって…と思っていたら、実在の弁護士に寄せた仕様だったと知ってひと安心。
そしてモハメドゥ役の彼がホントに良かった。理知的で洒落た彼が、どんどん追い詰められ、それでも神を信じ、崩壊することなく踏みとどまっている痛々しさが伝わってくる。
これまで911テロに関する映画は、アルカイダ側の活動を(当然批判的に)描いたものが多かったが、そういった数ある作品を遥かに凌駕するレベルで、もっと根深いアメリカ合衆国の闇を暴いている。
最初の15分を使って、拘留された若者モハメドゥの扱いについて人権派弁護士のナンシーと、911テロで友人を失った政府側のスチュワート大佐が対決する映画なんだ、不当な拘留や非人道的な扱いについて正しさを示す映画なんだ…と、かなり手際よく説明して見せて、実はそんな簡単な話ではなかった。
この手際の良さがまた、観客を騙すのに一役買っている。
で、途中で観客は思っていたのとは違う方向にエスカレートしていく流れに戸惑っている内に、後半「え?」「マジ?」というシーンが次々と繰り広げられてさらに翻弄される。
まさにナンシーの気分。
「信仰」ということについても象徴的に描かれている。
敬虔であるが故に苦しみ、敬虔であるが故に救われもする。
一部の有力者にとって不都合な真実が黒塗りで隠蔽されることは、もちろんこの日本ではよく見る光景だし「世界の警察」たるアメリカさえ起こる。
つい先日の「ケネディ大統領暗殺の情報開示延期」ってニュースもそういうことなんだろうな。
衆院選投票日の朝、この作品を観ることになったのも何かの思し召し。
誰かに丸投げすることなく、国民がちゃんと権力を監視し評価する側にいなければね、と痛感した。
(ここからネタバレ)
本当ならただただ重くて暗い映画になりがちなところが、主人公モハメドゥという人が、本当にユーモアがあって頭が良い人物であることが、最後の本人登場であらためてよく解ったし、観ている我々もそれで少しだけ救われた気分になれた。
最後まで観客は作り手に気持ちよく振り回され、それでもちゃんとメッセージが伝わる。
この夏から秋にかけて劇場公開される作品、どれもえげつないぞ。
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