「素晴らしい映画、、、」モーリタニアン 黒塗りの記録 Chuck Finleyさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい映画、、、
悪名高く恐しいグアンタナモ刑務所での衝撃的な長期不当勾留、虐待的尋問が冷徹に描かれています。困難でもスジを通す人たちの闘いの話です。
まず感じたのは全編を通じて落ち着いたカメラワーク、発色。薄暗いシーンでも見せるものははっきり見え、うるさいシーンや小声でも役者さんのセリフが自然に全部ちゃんと聞こえます。なぜこう言った基本的なことが今の邦画ではほぼ出来ていないのか不思議ですが、本作では当然のように安心して観られます。
また、ほぼダブル主演といえるタハール・ラヒムもJ・フォスター共に手堅くうまいですし、暴力やセンセーショナルなシーンを過多にせず、底知れず重厚で冷たく硬いが同時にとても重層的なアメリカの軍と法を淡々と描写しつつも観客が退屈に感じる前に次のシーンに手早く繋いでいます。近年大活躍のカンバーバッチの大立ち回りに期待する向きには少々残念かもしれませんが、その彼の役柄も全体の”アメリカ的な物事・アメリカに生きる人”という流れに沿っています。
でも‥ やっぱりこういう映画は政治的になってしまうのですね。若干ですがそれを感じてから、シーンやストーリー展開の政治的性有無を脳内で一々確認して客観視に務めてしまったので(結局大して気にすべきほどでありませんでしたが)、今一つ物語に入り込めませんでした。映画よ、ごめん。
ただ偏見ついでに言うと、上映の劇場内も日々日本の社会・政治悪を憂いておられそうな深いイイ感じの中高年の方が多かったように見受け、終映後みなさん深刻な面持ちで席をたってました。
小ネタ的に面白かったのは、「暴行犯の弁護をしたら私もレイプ魔に見られるのか。殺人犯の弁護についたら私も人殺しか。普通はそう見られないのに、テロ容疑者の弁護をするとテロ支持者と言われてしまう。これはおかしい」のくだり。私もそんな風な見方をしてました、反省です。