「熱演 vs 国家の闇!表現の責務と可能性を今一度」モーリタニアン 黒塗りの記録 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
熱演 vs 国家の闇!表現の責務と可能性を今一度
これはジリジリと時間をかけてゆっくりと燃え上がる告発の炎、人間の尊厳をかけた闘い。ケヴィン・マクドナルド監督の演出・語り口は時に過多、幾分かヘビーウェイトすぎる気もしたけど、そんなことも気にならなくなるほどなタハール・ラヒムの嘘偽りのない存在感!弁護人ナンシー役ジョディ・フォスターも素晴らしい。二人が有無を言わさず引っ張る。そして本作の映画化を熱望し製作も務めた仕掛人ベネディクト・カンバーバッチもまた主人公と相対する立場ながら、一本軸の通った己の正義を貫く姿勢。
これが実話だということがものすごく怖く憤りを覚える一方で、そうした実際の登場人物たちのおかげで、なにより希望も持つことができる。自分の正しいと信じた道を曲げずに、いざとなったときに手を差し伸べてくれる人がいるのだと思える、信じられる。
権力の暴走!PROTECTED
隠蔽体質に腐敗した国家の根深く巣食った闇。こういう自白強要系実話を見る度ものすごく腹立たしく思うのはもちろん、そうやって付きっきりで犯人に仕立てている間に本当の犯人はシメシメと逃げおおせているぞ。なんなら次の犯行=この場合テロの準備をしているかもしれないぞ!…と思う。人権完璧無視・度外視な「そりゃ実際やってもないことでも自白するよ…」という余りにひどく目を覆いたくなるような所業の末に、"お前は有罪だ"ともはや洗脳としか言いようのない"犯人"と"真実"をでっち上げる。国として公式に謝罪して多額の賠償金を払うのは当然ながら、そんなこともできないようじゃそうした国家ぐるみの過ち・隠蔽体質からまた怒り、憎しみの火種という負の連鎖となり、そうした被害者から新たなテロリストさえ生み出しかねない。"世界の警察"アメリカ、恐ろしすぎる……。こんなふざけたことまかり通る世の中でいいんですか?
someone, not just anyone