劇場公開日 2021年10月29日

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「硬派な魅力を放つ人間ドラマ」モーリタニアン 黒塗りの記録 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0硬派な魅力を放つ人間ドラマ

2021年10月29日
PCから投稿

硬派な魅力を持つ人間ドラマである。さすがマクドナルド監督。彼が手掛ける実話ベースの物語からは、題材の放出する”地熱”がじわじわと伝わってくるかのようだ。今回はグアンタナモ収容所という今や世界中の誰もがそこで行われていたことを知っている題材へと向き合いつつも、それは例えば「グアンタナモ、僕達が見た真実」(06)とは違い、複数の立場の視点を絡ませながら全体像を構築していくタイプの作品に仕上がった。すなわち、人権派の弁護士と検察側の米軍中佐という立場の全く異なる人物たちが”隠された実態”へ流れ着く過程をあぶり出すのだ。全ての中心にはタハール・ラヒムがいて、ジョディ・フォスターとカンバーバッチが各々の領域にて抑制された持ち味を添えていく。彼らの織りなすパズルのどこが欠けても弱くても、強すぎても、この絶妙なドラマ構造は成立し得なかったろう。非常にスリリングであり、かつ感動的な余韻が残る一作であった。

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牛津厚信