「「なぜゴールデングローブ賞受賞の本作がアカデミー賞でスルーされたのか?」という理由を考えてしまうほど【必見】と思える作品!」モーリタニアン 黒塗りの記録 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
「なぜゴールデングローブ賞受賞の本作がアカデミー賞でスルーされたのか?」という理由を考えてしまうほど【必見】と思える作品!
本作は、今年の第78回ゴールデングローブ賞で主演男優賞と助演女優賞にノミネートされ、ジョディ・フォスターが見事に受賞しています。監督はドキュメンタリーに定評がありアカデミー賞作品でも知られるケヴィン・マクドナルド。「ブラック・セプテンバー 五輪テロの真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、「ラストキング・オブ・スコットランド」では、主演のフォレスト・ウィテカーが、アカデミー賞を含め、その年のアメリカの主要映画賞の主演男優賞をほぼ独占しました。
それ故に、徹底的にリサーチし、映画の始まりには「This is a true story」と、あえて通常の「based on a true story」となっていないところが実に意味深です。
さて、本作の弱さをあえて挙げると、タイトルの意味がピンと来ない、という事でしょう。これは、私も同感で、だからこそ映画を見て初めて驚愕の真実を知る事ができるようになっているのです!
まず「モーリタニアン」とはアフリカの地名で、そのモーリタニアン出身のモハメドゥ・スラヒが2001年の9.11の2か月後にアメリカ政府にテロの首謀者の1人として拘束されます。
テロリストを擁護しようとは思いませんが、もし彼が全くの事実誤認で拘束され、キューバに作られたアメリカの収容所で自供の強要などを無理矢理させられていたとしたらどうでしょうか?
まさに、2015年に【検閲によって黒く塗りつぶされたモハメドゥ・スラヒによる「手記」】が出版され、衝撃が起こり、たちまちアメリカではベストセラーとなるなど大いに話題となり、問題視されるようにもなります。しかも、この時点でモハメドゥ・スラヒはまだ収容所に拘束されている状態です。一体、何が起こっていたのでしょうか?
「これこそ映画にすべき題材だ」と本作のプロデューサーとしてベネディクト・カンバーバッチが映画化に向け動き出します。
ちなみに、ジョディ・フォスターはアメリカ政府に戦いを挑む弁護士役で、対するベネディクト・カンバーバッチはアメリカ政府から「有罪にしろ」と急かされる軍の弁護士役を演じています。
本作は、なぜかアカデミー賞ではノミネートすらされませんでしたが、それは何かの意味があるのだろうか、とさえ考えてしまいます。
「アメリカの闇」と言っても過言ではない本事件を、まさに、見て知るべき【必見】と思える作品となっています!
【予備知識】
本作では「MFR」という言葉がよく出ます。この「MFR」とは「Memorandum For Record」の略で、要は、収容所での「尋問の際の記録用覚書き」を指すことを事前に知っておきましょう。
本作は実質的に裁判案件の作品のため、両方の弁護士が証拠の裏付けで必要不可欠となる存在で生命線となるものです。