劇場公開日 2021年7月16日

プロミシング・ヤング・ウーマン : 特集

2021年7月12日更新

この結末は、絶対にネタバレしないでください
キャシーはあえて“体目当ての男を誘惑する” なぜ?
数年前に起きた暴行事件と悲劇――彼女の復讐が始まる

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フリードリヒ・ニーチェ曰く「希望は最悪の災いである。苦しみを長引かせるのだから」。

7月16日から公開される映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、キャシーという名の女性の激しい怒り、自分の将来を踏みにじった人々への過激な復讐、甘く幸福な恋、そして業火に焼かれるかのような苦悩を描き出す。

緻密なプロットは驚嘆の一言に尽き、怒涛の勢いで突入するクライマックスは圧巻そのもの。映画ファンであればあるほど“やられる”この結末は、鑑賞直後に「記憶を消してもう一度観たい」と思うほどの衝撃に満ちている。

この特集では、本作の見どころを詳細に語っていく。映画.com編集長によるレビューも掲載するので、本編を鑑賞しようか迷っている人はぜひとも目を通し、参考にしてもらえればと思う。


【予告編】甘く危険、アカデミー賞受賞の衝撃作

ネタバレする者に地獄を…物語がとにかくすごい!
復讐劇はあなたの想像を超える“最悪で最高な結末”へ

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まずは見どころに言及しよう。「あらすじ」「普通じゃない物語運び」「海外の評価」などにスポットを当てていく。


[あらすじ]将来を期待されていたキャシーは、ある日突然、大学を辞めた 彼女は夜ごとにバーへ行き、泥酔したふりをして男性に近づく

カフェのアルバイト店員キャシー(キャリー・マリガン)。30歳を目前にひかえた今も実家暮らしで、将来の夢もなく、恋人も友人もいない彼女だが、かつては医大で首席を争うほどの秀才だった。

“プロミシング・ヤング・ウーマン”(将来を嘱望される優秀な女性)だった彼女は、およそ10年前のある日突然、医大を辞めた。現在は昼はカフェでぶっきらぼうに働き、夜はバーへ出かけて泥酔したフリで“体目当ての男”を誘惑している。いざ行為に及ぼうとしたとき……キャシーは演技をやめ、男に何らかの罰を下す。

なぜそんなことを? 彼女なりの復讐だからだ。キャシーが医大を辞めた理由。親友への“レイプ事件”と、その後の悲劇――。

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アメリカン・レトロなペールトーンのカフェで働きながら、キャシーはモノクロの世界に生きていた。失望の日々に鮮やかな色は存在しない。ところが偶然、職場に大学時代のクラスメートだった男性(ボー・バーナム)がやってきたその時から、彼女の人生はまた一変する。

彼から「学生時代、きみが好きだった」と伝えられた。そしてレイプ事件の加害男性や、助けを求めたが無視を決め込んだ女性たちが、今は幸福に暮らしていることも知らされた。自分はこんな状態なのに。キャシーは彼らへの復讐を決意し、ある計画を立てる。

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[ネタバレ厳禁の結末]予想を破壊する“甘美な猛毒”に、あなたの感情は爆裂する

ネタバレになるため具体的に言及できないが、できる限り“結末のすごさ”を語っていこう。本作のキャッチコピーは「甘いキャンディに包まれた猛毒が全身を駆け巡る、復讐エンターテインメント」。しかし復讐劇はあくまでも表の顔に過ぎない。

時間を追うごとに徐々にその仮面が剥がれていき、クライマックスには最も凶暴で、最も美しく、最もカタルシスに満ちた“素顔”が明らかに。あなたはスクリーンからひとときも目が離せないばかりか、理解不能の感情が胸で暴れ、やがて爆裂するのを体験するはずだ。

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[普通じゃない物語運び]復讐劇と恋愛譚が同時進行…映画好きであるほど“やられる”

ただクライマックスがすごいだけじゃない。本作はそこへ至るまでの過程も計算され尽くしており、観客を驚愕の底へ叩き落とそうと、虎視眈々と狙っている。

特徴のひとつは、復讐劇とラブストーリーが同時進行すること。ふたつがまるで二重らせんのように絡み合い、キャシーは世の男性や女性たちへの憎しみと、目の前の男性への愛しさに挟撃され、次第に心が引き裂かれていく。愛憎は一見、真逆とも思える要素だが、実のところは表裏一体。このことが物語を予想外の地点へと追いやっていく。

もうひとつは、復讐劇の緻密さ。刃物や拳などのバイオレンスで復讐を達成するのではなく、切れ者のキャシーは人間心理の落とし穴を突いていく。ターゲットはまるでピタゴラスイッチみたいに次々と奇妙な状況に陥り、やがて自身が最も恐れる罰に直面する……これこそが映画好きであればあるほど唸る最大の要素。そうきたか!の連続を、目を剥きながら凝視すべし。

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[絶賛の嵐]アカデミー賞では作品賞など5部門ノミネート、脚本賞を受賞!

すでに公開されたアメリカでは、しっかりと絶賛されている本作。世界最高峰の映画賞である93回アカデミー賞では、作品賞を含む主要5部門にノミネートされた。

特に監督賞ではエメラルド・フェネル監督が候補となり大きな話題となった(同部門の女性のノミネートは非常に稀)。結果的に、アカデミー賞では脚本賞を受賞。その物語が評価されたということだ。

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ほかにもゴールデングローブ賞では4部門にノミネート。どの賞でも、主演のキャリー・マリガンが「これまででベストの名演」と絶賛されているので、彼女の存在感に注目しても面白い。

伝統的な価値観が強い賞レースは、重厚な社会派作品が好まれがち。ゆえに本作のようなエンタテインメント作、ましてや復讐劇がここまで評価されることは異例中の異例だ。評価の根拠は類稀なクオリティにある。大袈裟かもしれないが、もしかすると歴史的な一本になるかもしれない。


【編集長レビュー】「編集部は全員観ろ」と激烈に評価
「個人的にはアカデミー作品賞&監督賞&主演女優賞」

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編集長・駒井尚文:映画を観る前は「プロミシング・ヤング・ウーマン」という題名が軽すぎて頭に引っかかりませんでした。本編が始まって、タイトルバックがダサいのと、冒頭のシークエンスがダルいので「この映画、大丈夫か?」って思ったんですが、主人公キャシー(キャリー・マリガン)が、医学部を中退した高学歴女子だって分かるあたりからどんどん面白くなります。

題名がしっかり記憶に刻まれるとともに、「将来を約束された若い女子が、将来を棒に振って、何でそんなことやってんの?」という疑問が起こるわけです。鑑賞が前のめりになる。

ストーリーは、まったく先が読めません。全然予測がつかない。左に行ったと思ったら、180度切り返して右に全力。もう、クラクラします。観る者は男であれ女であれ、キャシーに感情移入し、彼女の行動力に拍手を贈りたくなる。だけど万事上手くいくわけじゃなく、三幕目には想定を遙かに超える展開が待っていました。

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自身のオリジナル脚本でメガホンをとった女性監督エメラルド・フェネルは、本作が長編映画初監督ということで、お見事のひと言。そして、主人公キャシーを演じたキャリー・マリガンもスーパーでした。

この映画は、セクシャルなシークエンスの描き方など、女性監督じゃなきゃ無理な内容だし、加えて、美貌があってメンタルもタフな主演女優がいないと成立しない。奇しくも、やはり女性監督であるクロエ・ジャオが今年のオスカーを制しましたが、ハリウッドが新しい時代(=女性の時代)に突入したことは、本作の方がより本質を表していると思います。

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2020年のオスカー作品賞「パラサイト 半地下の家族」に匹敵するぶっ飛びのストーリーテリングで、しかも女性監督案件。私は「編集部全員が観るべし」と社内会議で力説しました。

もしも私がアカデミー賞の投票権を持っていたら、作品賞と監督賞と主演女優賞は「プロミシング・ヤング・ウーマン」に投票しましたよ。とにかく、新しい時代の幕開けです。女性監督&タフでセクシーな主演女優。傑作が生まれる新しいスキームを是非感じてください。

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