プロミシング・ヤング・ウーマンのレビュー・感想・評価
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痛快なのにモヤるのは、きっと弱者は弱者のままだから。
スカッとしきれないから、奥が深いというか、なんというか。
本作に思い出すのは、痴漢に遭うのは短いスカートなんかはいているからだ。
云々のやり取りである。
ならそうしたものを前にしたとき人の心から、
自制心や善悪の区別、良心なんてなくなっていても問題ないよ、
ということなのか。
社会の目という他人事と、当事者視点が交錯することで、
本質をあぶり出してゆくサイコ・ホラーのようで復讐劇のような本作。
キレ者主人公が単独行動、無双なだけにハラハラも止まらない。
加えて「正義を行っている」と信じて邁進する女性の
堂々たるたたずまいが痛快だ。
同時に、そうまで駆り立てる怒りや絶望はもの悲しさを誘い、
のっけからチープ感漂う楽曲に退廃的な雰囲気も重なれば、
醸し出されてくる破滅感に懐かしの「テルマ&ルイーズ」さえ思い出してしまった。
この辺り、弱者が誰なのか最初から示しているようで、
ただ中で主人公が頑張れば頑張るほどぐっときもする。
シナリオはアッ、と驚くようで案外、古典的でカタイ展開をなぞっていると感じている。
ただパンチがこれほどまでに効いているのはひとえに、
その弱者が最後まで救われることがないところにあるのだろう。
やっぱりそこは令和の「テルマ&ルイーズ」だからかも。
スカッとしきれずモヤモヤ残る。
ここが何よりいい本作だ、と思うのである。
後味の悪さが残る怪作
すごい評判の本作、やっと劇場で鑑賞できました。
結論から言うと、ストーリー自体もオチもよくあるサスペンスですが、演出と演技が一つ上のランクへ押し上げてます。
実際には女性一人でこんな危ない事を何度もやれるとも思えないし、怒りの持続も容易でない。しかし、中盤一度前に進もうとした時は、幸せの中にも何か物足りなさを感じてる風でした。彼女がナンシーにそこまで固執する理由が見えなく、サイコの片鱗を感じそこまで物語に入り込めない部分もありました。
にしても、なんともやりきれない問題で、こういうクズが許されてしまう世の中はどうしようもないのか?オリンピック小山田的なエスタブリッシュ問題もあるよなぁ。
自分が死んでも制裁を下すというのは納得出来なかった。彼女の両親や、ナンシーの母親はどう思うのか?なんとも後味が悪いラスト、彼女のあまりにも孤独な人生が哀れに思える。
スタッフはなかなか興味深い人達で固められていた。特に彼氏役の人はなかなかの才人ですね。クリストファー•ミンツ•プラッセが見れたのも嬉しかった。
将来有望な若者、本懐を遂げる
辛い内容でも、映画は見に行くようにしている。直視するのが厳しい時も痛みを忘れてはならないと思うからだ。
だから映画冒頭から正直主人公のキャシーに辛いことが起きるんじゃないかと悪い意味でドキドキしながら見た。あの流れで、キャッシーが殴るけるをされたりレイプされても驚かないからだ。
そのうちそれが何回か続くと、この主人公は自殺願望があるのか?と思うようになった。主人公の行動は騙す喜びより、殺されに行っているように思えた。彼女は死にたいし、できれば殺人罪を着せたい相手に殺されたい。だから親たちは「忘れて」「生きて」と彼女にいうのだ。
復讐?そうだろうか。前回も弁護士に守られた。なぜ今回は違うと思えるのか。彼女の死は事故ではなく、当初から彼女の成し遂げたかったことだ。彼女は殺人者をランダムに選ぶのではなく、確実に殺しそうな相手に照準を合わせて成し遂げた。
生きることに希望を見出せない将来有望な若い女性は、死に向かって疾走する。はっきりしているのはそのことだけだ。なんの希望もなくて本当に辛くなった。
女性監督だから、かな、なんて書くと顰蹙を買うかも
知れませんが、この映画がアカデミー最優秀脚本賞というのに驚きます。
まず、酔った振りして、言い寄って来る男どもにお仕置き?お説教?するというのは、無理でしょう。
相手が寄っていたとしても、男と女、それに、相手の家に行くんだから、武器持ってるかも知れないし、主人公かわ、余程の戦闘能力が超能力がないかぎり、少なくとも、頭の良い人がやってるとは思えません。
それに、手帳に何十、何百と戦果をメモってましたが、そんなにやってたら、噂になるし、逆にはめられたりするんでは。
ネタバレしないように書きたいので途中は端折りますが、最後のどんでん返し?も、この作品が初めてでもないし、、、
主人公はそれなりに良かったけど、脚本賞ってほどではないかなっていうのが率直な感想です。
ということで、普通よりちょっと良いくらいの星3つにしておきます。
バランス
忘れている、「子供だったから」と言い訳する当事者
「優秀な(加害者である)若者の未来」を優先した大人
罪を贖いたい関係者
全てのバランスが良く、「あの時私が」と悔い続ける主人公が全身全霊で復讐を成し遂げる113分。
一瞬でも、
美人だから、隙を見せたからなんじゃないの?
と考えた自分を恥じ入りました。
ちょっと非の打ち所がない
自分の行いを反省して悔い改めるという当たり前のことができる男性が、啓示を受けたという精神病の弁護士だけ。
理由は分からないけどなんか不快、もしくは自分が攻撃されているように感じるとき、動画を見せられたときのあの彼氏のように逆ギレしてしまったりするものです。
映画が終わったあと、「所々無理矢理感があった。ホテルの部屋で目覚めたからってあんなに取り乱すなんてない、学長だってすぐに警備員を呼べば良かった」と強い口調で劇場で話している(盗み聞き失礼)男性がいましたが、なんとなく心情を察し、不快になるなというのが難しいにしても、皮肉を感じました。
女性は付き合う男性と一緒にこの映画を観てどんな反応を示すか試してみるのはその人を知る一つのリトマス紙になるかもしれませんね。
主人公の取った行動は現実世界ではありえない
でも映画を通して観ると、作品世界内においては腹落ちできる選択として、しっかり感情移入できます。
良くできた復讐モノであり、ラブコメであり、ミステリーでもあると。
つまり、これぞ王道フィクションだし、娯楽映画なのです。
プラスして作品内で語られるテーマ•主張を私なりに要約すると、
「夫婦•恋人•友人だろうが性的同意のラインを超えたら、普通にレイプだろ。」
「特に社会的地位があり、一見すると誠実そうに装っているが、酔い潰れた人間を介抱するフリをして近づいてくる奴!お前らが1番タチが悪いよな。」
「周りの奴もさ、『スキがあった被害者にも落ち度がある。』『こんな事件で将来有望な加害者の人生を狂わせるなんて逆に可哀想』なんて言ってるけど、じゃあ被害者の将来はどうなるわけ?」
「自分や、自分の身内が同じ目に遭っても、同じこと言えるの?」
少なくとも私は、この主張は正しいと感じますし、
誰でも加害者になり得ると言う点、今まではたして傍観者的な意味も含めて加害的な行動を取ったことがないと言い切れるだろうか、という反省も込めて、真摯に受け止めざるを得ないです。
いわゆる「極悪非道なレイプ犯」みたいな奴とか、今どき存在いるのかってくらいステレオタイプな「女性差別主義者」をでっち上げて糾弾するみたいな、そういう次元では話をしないよ、と言ったポリシーにも同意です。
つまり、「恐らく正しいテーマ•主張」を「よく出来た娯楽映画」に乗っけて、「どちらも余すことなく、きっちりと語りきっている」点が最高なんです。
秀逸なのは、キャシーのしたこと、してきたことが「良いこと•正しいこと」とは描かれていない、でも彼女がそうせざるを得ないという作品内リアリティはきっちり担保しているというところですね。
当初は意図的にぼやかされていた動機を徐々に明らかにしていく中での、「ニーナの件」の加害者サイドへの復讐。当事者たちの視点を反転させることで文字通り「わからせる」というリベンジ物王道の展開も良し。
途中で恋愛描写もあるのですが、この中の挫折と別れも、きちんと復讐行為とリンクしていて、お話の推進力を弱めずに主人公の人となりのコントラストを際立たせるナイスな寄り道。
クライマックスの加害者本人との対峙、これこそが映像的に観せたかったシーンでしょう。
ここまで意図的に、
①「主人公が最強」と観客に誤認させてきた
②「主人公が振るうものも含めた対人暴力」シーン省いてきた
この2つの下準備により、「男性の力に屈服する女性」をキャシー自身が(因果応報的な側面も込みで)観客に実演するという、大変ショッキングなシーンに仕上がっています。
ラストのオチは、クライマックスの後味の悪さを払拭してくれるだけでなく、観客をカタルシスの洪水に溺れさせてくれる、正直どうかと思うくらい良く出来たエンディングです。
思うに感動って、安っちい邦画でありがちな感動的なBGMを流し、人物が涙を流しながら、話のテーマ的な良いセリフを叫ぶみたいな「お涙頂戴」演出では生まれ得ないと思うんです。
この映画のオチのように、「喜び•悲しみ•怒り•驚き他」みたいに複数の相反する感情を揺さぶられることで、脳内がぐちゃぐちゃになり、故に涙を搾り取られる=感動なのではないでしょうか。
まさに、後々に映画館で観たことを自慢したくなるような大傑作です。
プロミシング・ヤング・ウーマン
プロミシング・ヤング・ウーマンだったのは誰か?
フェミニストが作った作品のようで、男性に対する反感、憎悪がここかしこに感じられるが不快ではない。実際ありそうな話しではある(特にアメリカでは)。キャシーの両親以外女性も含めて主人公の周りには尊敬すべき(というか愛すべきというか)登場人物がゼロで設定にややリアリティを欠く気はする。ライアンの素性は予想通り。最後のオチだけは若干想定外。途中まではプロミシング・ヤング・ウーマンはニーナだと思っていたがミスリードされていたようだ。しかしこれがアカデミー賞脚本賞とはいくらなんでも過大評価ではないか?
性犯罪は心の殺人
重いテーマを、ポップでキュートでパステルカラーにあふれたかわいらしい映画に仕上げてくれてたから、まだ救われた。
製作陣が女性だからこそ、できるのかな。
でも、観終わって涙が止まらなかった。被害者だから気持ちが痛いほど分かる。
殺されたらその人は戻ってこないように、
時が少しは癒してはくれるものの、完全なもとの心に戻ることはない。一生引きずる。
加害者は自分が犯した罪自体すら忘れがちだが、被害者はそれに一生苦しむ。
恥を知れ。
ガーリーで毒可愛い主人公のお洒落映画なのにストーリーが完璧!
2021年で観た映画の中で1番良かったかもしれない!
観る前は、ファンキーな姉ちゃんが男を蹴散らしまくる復讐劇かな?可愛い毒っ気な雰囲気だし観たい〜!くらいな気持ちでしたが、観た後の印象は全然違う!
違う映画を例えに出すのは好きじゃないのですが、2019年公開の映画「ジョーカー」の女性バージョンと説明するとネタバレなくどんなジャンルか伝えられるの…かな?
復讐やレイプ性犯罪、性差別と言った重いテーマの映画とは思えないようなポップで明るい音楽と可愛らしい衣装やセットが美しいです。
主人公のキャシーがとにかくガーリーで可愛い…!
復讐で得るものは有るのか?
救えるものはあるのか?
と、とても考えさせられる切なく悲しいテーマですが最後の最後まで美しく可愛らしい映像と音楽だけでなくストーリーも抜かりなく芸術的。
何を言ってもネタバレになりそうなくらい良かったです。
フェミニズムが強い映画なので好き嫌いが分かれそうなのが残念…。
フェミニズム
男性に対して嫌悪感を抱く過去をもった主人公の復讐劇だが、単純に言えば、フェミニズム作品と言えよう。酔っていて勢いで、みたいな男性の欲の満たし方を痛烈に批判したブラックコメディーか。
酔ったふりして、男性の本能を引っ張り出し、最後は一刀するというのは、面白い発想だし、今作がブラックコメディーたる所以だが、ちょっとハニートラップっぽくて、冷静に考えると女性は凄く怖いなあと思った。まあ女性からすれば、欲を満たそうとする男性が怖いのでしょうが。
こういった映画って、観る人によってとらえ方がちょっと違いそうですね。
私もあまりフェミニズム論には日ごろからちょっと触れたくない傾向がある。
本当、理性だけはいつでも保っているしかないですよ、男性は。
この手の映画を手放しで褒めると、男性の本能がある限り、この世に平等はない、男性はいらない、と言ったちょっと選民思想になりそうで、難しい。
余談だが、ラストシーンでナース風に変身したのだが、ちょっとハーレイクインぽくて、この辺はアメリカンコメディーっぽいなあと思った。
毒を以て毒を制すとはまさにこのこと
公開まで全然チェックできてなくて、Twitter上の評判に期待して観に行った映画。期待通りの映画だった。ラストにガツンとやられた。
大切な友を汚され、失ったキャシーが復讐に身を捧げ、
友を汚した者たちへと近づいていく様はおどろおどろしい。
表面上は激しい怒りに囚われていないように見えるから怖い、本当に怖い。
復讐の内容も精神抉ってくる感じがまさに「目には目を、歯には歯を」
復讐することだけが生きる目的のようになってしまっているキャシーを観て、
私はかわいそうだと思ってしまったけど、
キャシーに言わせれば「大きなお世話、あんたの知ったことじゃない」と。
起承転結が上手い時間配分で流れていって、息を呑む結末にガツンとやられた。
エンドロールの間、なんとも表現しがたい粘着質でグルグルととぐろ巻くような感覚になっていた。
たぶんこの結末は観る人によってだいぶ感じ方が変わってくると思う。
それまでの人生やそれによって築き上げられた価値観などで全く異なった感想になるはず。
それがこの映画が話題になっている理由の1つなのではないかな。
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