「赦せない!!」プロミシング・ヤング・ウーマン farさんの映画レビュー(感想・評価)
赦せない!!
あまり詳細を説明しないタイプの作品だったため、鑑賞直後は細かいところに囚われて「む??」となってしまったが、時間を置いて冷静に振り返ると、どうやらありきたりな復讐劇という枠には収まらないようだ。
最後のオチから察するに、どことなく『セブン』の結末を想起させる、自らの死を以って計画が完了する深慮遠謀だったように思える。
といっても、幼馴染の仇への復讐である本作と、サイコパスによる計画的連続殺人では、モチベーションがまるで違うが。
ともかく何かを望むなら、何かを棄てなければならない。そのバランスこそが、この世の理であり、主人公にはそれがわかっていたのであろう。
終盤、ロッジへ向かうときには既に、自らの死を以って憎き仇を破滅へと追いやる決め手と成す覚悟があったように感じる。
この結末を彼女が考えたのは、弁護士を罰しに行った後だろうか。弁護士だけが既に十分な罰を受けていると感じたことから、自分の死後の計画遂行を彼に委ねようと考えたのではと推察する。
彼女は、とにかく赦せなかったのだ。大切な幼馴染を死に追いやった獣たちが、まるでそんなことなど無かったかのように、今では幸せそうにのうのうと人生を謳歌していることが。
その背景にあるのは、男が女から搾取する旧態依然とした体質と、それを容認する男>女の社会的構造が抱える闇だろう。
後半、レイプ動画を突きつけられたライアンは、『ボクは何もやっていない』と言う。あくまで傍観者であって、悪事に加担してはいないと。
しかし、傍観することで、悪事を容認している。『何もやっていない』という選択を“している”のだ。
主人公は、最期にはアルからの反撃によって命を落とすが、それもまた計画の一部で──と個人的には思っている──、むしろそこからが〈終わりの始まり〉ということなのだろう。
彼女は復讐によって一矢報いたのではない。社会に一石を投じたのだ。
悲しく切ない終わり方だったが、それもまた前述の社会の闇の本質を如実に表しているといえるのかもしれない。