「ニーナとキャシーは永遠」プロミシング・ヤング・ウーマン デブリさんの映画レビュー(感想・評価)
ニーナとキャシーは永遠
『シリアル・ママ』みたいにコミカルに仕立ててあるのかと思ったら、全然そうじゃなかった。たった一人で世界を相手にしているような孤独な戦いぶりで、その寂しさに共感したし、最後まで持てる全てで戦う冷静さと覚悟はめちゃくちゃかっこよかった。感動した。
キャシーが言った「正したい」という気持ちがすごくわかる。傷はいつか癒えるとか、止まない雨はないとか、だからあなたも前を向いて歩いていかなくちゃとか、それっぽいことはそれが響く人たちの間で言い合っていればよくて、押し付ける権利なんか誰にもない。悪いことをした人が相応の罰を受けて後悔してほしいと願うのは、別に異常なことじゃない。ニーナが忘れ去られる世界が普通なわけじゃない。キャシーが孤独に陥る世界なんか虚しいばっかり。
弁護士がぐずぐずになっているところで少しだけ救われたような気持ちになったし、ニーナのお母さんの言うことが本当に辛かった。
最初の方で、工事現場で働く男たちが、朝方に乱れた服装で歩くキャシーに向かって卑猥な言葉を投げつける。キャシーは何も言い返さずに、ただ真顔で男たちを見返す。それだけで男たちはうろたえ、怒りだして、今度はキャシーを必死に罵倒する。あれは印象的なシーンだった。女に真顔で見られたらそれだけで恐怖し動揺するなんて。そんな描写がうすら寒いと思えたらよかったのに。ありそうなことだ、リアルだ、と思ってしまった。
私は映画の登場人物の名前を覚えるのが苦手だけど、キャシーが一生懸命だから、ニーナのことはフルネームで覚えられた。ニーナ・フィッシャー。ニーナ・フィッシャー。素敵な人だったんだろうな。