「母ちゃんは、負けない、と言うけれど!」茜色に焼かれる 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
母ちゃんは、負けない、と言うけれど!
2021年。石井裕也・監督・脚本・編集。
力強くメッセージ性のある映画でした。胸撃たれました。
コロナ禍で居場所を失い貧しさに拍車のかかる人々。
田中良子と息子の純平(和田庵)の悪戦苦闘の日々が描かれます。
母親を演じた尾野真千子は、「山路ふみこ映画賞」女優賞を受賞した。
「死ぬ気でやる」と石井監督に告げた尾野真千子。
すごい熱量、迫力。
多面性を持つ母親・田中良子(リョーコ)を表現豊かに演じ切りました。
リョーコは7年前に夫(オダギリジョー)を、交通事故で亡くした。
暴走してブレーキとアクセルを踏み間違えた運転者は、アルツハイマーの老人で、
元官僚の上級国民だった。
特異なのは良子が保険金を全く受け取らなかったこと。
映画はその交通死亡事故を起こした老人の、
盛大な葬儀に田中良子が参列したシーンを写す。
「あなたが現れるなんて、嫌がらせではないですか?」
「なんなら、警察を呼ぶ選択肢もあるんですよ」
加害者の息子(鶴見慎吾)の言い草だ。
リョーコは夫を殺した老人の顔を心に刻みたいだけだ。
(私は加害者の家族にも重大な過失と責任があると思う。)
誰もが「池袋暴走事件」を連想すると思います。
多分石井裕也監督がこの映画を撮るキッカケは「池袋暴走事件」だったと思います。
理不尽な社会で、シングルマザーは虫けら。
夫のいない女の立場は弱い。
一番最初に切られるのは弱者。
リョーコと純平そしてケイちゃん(片山友希)に
《世の中の理不尽と不条理》が襲いかかる。
ケイちゃんは生まれつきの糖尿病の風俗嬢で、父親から性的虐待を受け続けていた。
リョーコの経営していたカフェはコロナ禍で傾き、
花屋のバイトでは生計をたてられずに、夜は風俗で働いている。
義父が脳梗塞で倒れて、施設費用のうち10万円を負担しているし、
夫が浮気して生ませた娘の養育費6万円も負担している。
花屋の時間給・・・・930円。
風俗の時間給・・・3200円×6時間=19,200円。
(風俗店での描写は赤裸々です。客が風俗嬢をいかに見下すか?よく分かる。)
…………俺を喜ばせないなら、高い金払ってんだから、責任とって、死ね!!………………
風俗は男たちのストレスの捌け口。
そんな3Kの職場でケイちゃんは職業病に罹患する。
市営団地の家賃・・・・27,000円。
これを純平の中学校の友達が、
「税金をかすめてる」と言う。
公営住宅の住民はそんな蔑みの目でみられるのか?
…………まったく思ってもみなかった…………………
観てて一番、辛かったのは純平が友達に虐められるシーン。
今の子ってこんなに荒んでるの?
病んでいるの?
弱者をいたぶる描写に慄然とする。
友達の行動は辛くて書けないし、ネタバレでも書けない事件もある。
上級国民がずる賢く、
「すみません」と謝る言葉を知らない。
リョウコはただ一言、「すみません。申し訳ない」が聞きたかった。
上級国民は下級国民に頭を下げて謝らない。
夫(オダギリジョー)の口癖は、
『TOPのTOPをとってやるぞ!!』
…………純平はその可能性を秘めている……………
(嬉しそうに空を見上げて笑う尾野真千子が可愛い)
ピアノ曲がいつも優しく寄り添うように流れる。
風俗店店長の永瀬正敏。
清濁併せ呑む人間。
夫(オダギリジョー)も清濁併せ呑むひとり。
(好きだなぁ)
世の中の《不条理》にめげず、信念を貫く《田中良子》が見る茜色の空。
母ちゃんを世界一と思ってる純平のひと言・・・・
2人で並んで歩くだけで母ちゃんも純平も・・十分シアワセだ。
どんなに理不尽な世の中でも、生きて、生きて、生き抜いて、
リョーコは希望の種を蒔く。
一粒の希望でも、希望は希望だ。
過去鑑賞
コメントありがとうございます。
難しさはないのですが、この作品に寄り添うには自分自身が思い込みから解放されるような感覚を必要とするように思いました。
役者にそこまで思いを寄せる脚本はさぞ素晴らしかったのでしょう。
ただ、なぜリョウコがライターとたばこを見て自転車を盗んだのかが理解できませんでした。
いつもありがとうございます。
早速鑑賞しましたが、内容が濃い所為でレビューに相当時間がかかってしまいました。
池袋暴走事件のもう一つの現実
人生の不幸には原因があるのかもしれませんが、それを原因にしない考え方もあるのだと思いました。
それが彼女の生き方であったのだと思います。
神は細部に宿ると言いましたが、バンドマンのいやらしさは割と現実感を感じました。
一言では言い難いほど圧力のある作品でした。
コメントありがとうございます😊
一方向だからですか❓
出不精、わっかります。
あれだけ行きたかったのに、億劫で。
書いていただいたので、私も。
嬉しいのですが、
美紅さん、先先のこと不安なことばかりおっしゃっています。
車だけでなく、田中良子さん、
わけわからない。何故愛人の子のお金まで、保険金も。そして風俗。もう一人の人のこともコワいですね。でも実際にはもっとエゲツないと思います。
でも、田中良子は、生きる、のです。田中良子な幸せとは⁉️
ありがとうございました。😀
「死ぬ気でやる。」と言われたのですか、尾野真千子さん。
正直申し上げて、琥珀糖さんのレビューほぼ感動させていただいています。涙は出ないですが。
琥珀糖さんこそレビューを書く時真剣そのものと推察しております。
コロナ禍の中どうしても用があり一度心斎橋の百貨店に行って2,30分ぐらいで電車に乗って帰ったのですが、2週間ビクビクしてから、
懲りました。
東京のど真ん中池袋という有名な市街地で高齢で足が上手く動かない人が、プリウス運転するのか。いくらでも交通機関もタクシーもあるのに、と全国田舎暮らし民は、そこだけでもおかしいと思ったことでしょう。そのプリウス、殺人マシーンに変貌❣️
恐ろしすぎます。仰る通り妻が止めねばならない。息子も、運転するな❗️と厳命すべき事案。
日本🇯🇵が嫌になり恐ろしいところだと全国民80%は感じた
本レビュー、感動、🥲涙出ませんが。
コロナ禍、池袋暴走事件。
田舎に住む自分としては、車無いとどこにも行けないです。コロナ禍の影響で近鉄電車JRに乗って大阪梅田に行くのが楽しみでしたが、パッサリやめたのです。奈良県知事、県民に電車バスに乗って、とお願いされたようです。県内なら皆さん車でしょう🚗
未だにあまり行きたく思わずに過ごしています。
いえ、フォローしないことかな?
どっちかちょっと不明、すみません。
あれ100個ありますが、お一人で一度に行く人たくさんいますよ。
フォローかフォロワーか?の人数によっても違います。
コメントいただきましてありがとうございました😊
ご覧になられましたか。
ちょっと面白いでしよ。
フォローしていない方のは見れません。共感コメントフォローチェックインが表示されます。嫌ならフォロワーを無くすことですね。
では、レビューを拝読させていただきまーす♪