「ストップモーションアニメとしての出来は凄いがストーリー性は弱い。」JUNK HEAD Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
ストップモーションアニメとしての出来は凄いがストーリー性は弱い。
三部作らしいので第一部のみの評価です(予定2025年現在)。長文失礼。
他の方の指摘に多いですが、ストップモーションアニメとしては手間も掛かっていて良く出来ていると思いますが、肝心のストーリーについては二の次という感じで、ほとんど印象に残らない内容。
「人間の世界が環境汚染で住めないから地下世界を作る」、「そこに作業員として人口生命体のマリガンを作る」、「人間は遺伝子操作で不死」、「その代償で生殖能力を失う」、「地下世界で独自進化したマリガンの調査」、「人類の生存の道を探る」、という大まかな基本設定が導入で軽く説明されるが、作中でそれらの設定が深堀りされる事も無く、やっている事の大半は終始グロテスクな怪物から逃げているだけ。
その怪物のデザインにもバリエーションが無く、カンブリア紀のハルキゲニアとヤツメウナギみたいなやつがいるくらい。そもそも何でこんな人類の命運に係る重大な任務に送り出されるのが素人の主人公ひとりだけなのかも疑問。普通は専門家を含めた複数人の調査チームを編成するはずでは?
ストーリー展開に着目しても、最初に調査員の主人公が爆破されて変なジャンク品の身体になったかと思えば、すぐに怪物にバラバラにされてさらに別のポンコツロボットにされて…と、確かにタイトルにまでなっている「JUNK HEAD」にされる訳ですが、その展開にどんな意味があるのかよく分からないまま。どんなにボロボロになっても頭部さえ無事ならいくらでも身体を換装できてしまうので死ぬかも知れない緊張感も薄い。そのくせそうした命の軽重についての言及もナシ。人間を神だと思っている設定も何も活かされていないし、求めていた生殖能力がありそうな怪物もただの肩透かしオチで、あとはラストまで怪物と戦っていただけで、全体のストーリーとしてはほとんど何も進んでいない。
SFディストピアものとしても斬新な着眼点は見当たらず、舞台となる地下世界もダンジョンRPGのような無機質な通路や階段があちこちにあるだけで謎解きの魅力や面白みも無く、シュールでグロテスクなドタバタ劇としても徹底感が足りず中途半端。あんな何も無い地下世界でどれだけの人口のマリガンが、どうやって生活を維持しているのかといった基本的な事も語られず仕舞い。SF、ホラー、コメディ、アクション、謎解き、人間?ドラマ、どれをとっても中途半端な印象。ストップモーションアニメの出来の良さ以外に、見るべき部分が無いのが勿体ない。もう少しストーリー性を高めた続編なら見たいものの、これだけ手間の掛かる作業だと完結するのはいつになる事か…。