劇場公開日 2021年3月26日

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「体が動いちまったのさ」JUNK HEAD フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

体が動いちまったのさ

2021年5月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

生態調査に行った人間の話

なんじゃーこりゃー!

たった一人で7年かけてこんなにも凄い作品が作れるのか?
しかも独学、全部自前ってホントに狂気じみてる、いや狂気の沙汰ですよ。
アニメ映画「音楽」もほぼ個人製作でスゲーなーと思ってたけれど「JUNK HEAD」も負けず劣らずスゲー映画です。

見ていて思ったのはストーリーが二瓶勉の「BLAME!」に似ている事。
超巨大構造物、独自の進化を遂げた生物、地下世界の冒険。どれも「BLAME!」の影響を強く感じた。
キャラ造形はギレルモ・デルトロとティム・バートン風でしたね。あとギーガー。

グロテスクとキモかわいいキャラクター達がストップモーションアニメならではのヌルヌル動く感じ、作品の雰囲気とうまく合致してましたね。

「ナイトメアビフォアクリスマス」「コララインとボタンの魔女」などの不気味だけどお洒落って作品とは一味も二味も違う。

堀貴秀監督の独特の世界観は気持ち悪いと汚いの狭間になにか惹きつけられるものを感じました。

既存の言語を使わない事で声優も自分だけでできるし、アイディア次第で映画ってどうにでもなるのだと改めて教えてもらいました。
仕事をしながらの制作でここまで作り上げた事にただただ拍手を送りたい。
努力とか根性とかの次元とは違う、趣味を続けてたら映画になっちゃいました的な、実際苦労された所は一杯あったと思いますが楽しく作ってたんだろうなーってエンディング映像見ながら思いました。

それにしてもエンドテロップでここまで一人の名前が占めてるのを見るのは初めてかも知れない。思わず笑ってしまいました。
お勧めだから絶対見てって言えない映画だし人を選ぶ映画ですが、後世に影響を与える映画で有ることは確かだと思います。

全三部作なので第一部の終わり方としてはここで終わり!?って感じなのでちょっと消化不良かも。
狩人の三鬼神とかヒロインが可愛いし、独特のギャグも笑えるし楽しかったなー。

主人公が地下に落下して頭だけになり体を入れ替えていく姿、木から落ちた実がマリガンへと成長する姿、別々の種族だけれど根本は同じっていうメッセージもよかったですね。
創造主である人間(主人公)は神だと崇められるけれど、実際問題非力でマリガン達より弱いしポンコツ。
もしも現実世界に神様が降り立ったら本作の主人公のように非力で無知で優しい人物かも、と想像してしまった。

狂気の沙汰ほど面白いとはいいますがまさにこの作品のことですね、監督の情熱を感じつつ、魅力的で癖になる世界観、世界の命運を委ねられたポンコツの冒険と活躍をこれからも期待して待てます。

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劇中セリフより

「あいつらちゃんと天国に行けたかな」

天国が有るかはわからないけれど、死後に行きたい場所の一つとして考えておいてもいいかもですね。

フリント