「「作るの大変だったんだろうな」というのは伝わるけど……」JUNK HEAD しーぷまんさんの映画レビュー(感想・評価)
「作るの大変だったんだろうな」というのは伝わるけど……
まず前提として、
「ストップモーションアニメ」という手法やジャンル、
「グロテスクなキャラクター造形」「荒廃した世界」という世界観は私は好きです。
なのでこの映画自体に初めから偏見を持って鑑賞したわけではないということだけ前置きしておきます。
まずは造形。
「ほとんど1人で全てこなすにはかなり大変だったろうなぁ」というくらいジオラマやキャラ造形の作り込みは凄まじいものがありました。
強いて言えばモンスターは「どこかで見た事あるな…」と感じましたが、それは些細な事だと思います。
次にストップモーションアニメとしてのクオリティ。
これも私的にはかなり好感を持てました。
アクションも関節の動きなどは少し簡略化されていたとは思いますが、戦闘シーンや度々切り替わる主人公やモンスターの主観視点の使い方や、あえてキャラを動かさずにカメラだけ動かして背景に向けていく手法などの使い方は面白かったです。
血の描写もこちらの感情を揺さぶる描写がありましたし、特にクライマックスの岩を防ぐシーンは哀愁漂わせてくれる好きなシーンでした。
問題はストーリーとそれに伴った世界背景。
ストーリーはかなり寄り道が多く途中でどうでも良くなってくる時間が長く、特にそれがクライマックスへの伏線になってくるわけでもありません。
というか物語のオチもかなり個人的には消化不良でした。
「で、お前さん主人公と別行動しても帰れんの?」
「辿り着かずに終わり??その為に主人公来たのに……」
「主人公の求めてたものの真相がぜーんぶキャラクターの口から説明で終わりかよ…」
と、ツッコミどころは探さなくてもそこそこ出てきます。
後々調べてみたら三部作の一作目という位置付けだそうですが、続編ありき……というより続編依存のお話になってしまっていて、一作目だけじゃ手放しで喜べないのが残念でした。
続編ならもう少し続編を示唆するシーンを入れて欲しかったです。
ただの飲み会後に店の前で「これからどうする?」的に「駄弁って終わり」じゃなくて……
世界背景も「生殖機能を失った」というけど要するに人体の機械化ですよね?
しかも殆ど人と関わらなくていいような世界観なのに感染症で人口の10%以上が亡くなる事態?
あと生殖機能の回復(あれだけのテクノロジー持ってて生殖機能の喪失も微妙ですが)を目指すなら素人1人送っただけなんですかね?
政府が大々的に募集して失業者や主人公のようなワーキングプアの非軍人を危険地帯に送るならもっと人送ろうよ……
その人達がいるという描写を序盤や中盤の最後の種明かしのあたりで少しでも入れてればまた違ったとは思いますが……
総評としてビジュアル面はかなりのプラスポイントでしたが、物語としてはそのプラスポイントをどんどん削いでいったのが非常に残念でした。
せめて脚本は堀さんの世界観を上手くまとめられる人を雇って堀さんの演出でそれをさらにブーストする、という形にした方が良かったと思いました。
アニメのストーリーとしては20年くらい前のアニメにありそうなストーリーでした。
なので、ジオラマやキャラクター造形を目当てで行くことをお勧めします。