「藤原竜也史上一番のハマり役かもしれない」鳩の撃退法 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
藤原竜也史上一番のハマり役かもしれない
予告編を観て面白そうだったので、公開初日に鑑賞いたしました。
原作は未鑑賞ですので、あくまで映画単体での評価になります。
藤原竜也さん主演映画は『デスノート』『カイジ』『ダイナー』などなど、たくさん観てるんですけど、年々演技がオーバーになっていって観客もそれを求めるようになっている雰囲気を感じていました。藤原竜也さんは俳優としては凄い好きなんですけど最近の演技スタイルは好きじゃありませんでした。
しかし本作の藤原竜也の演技は違いました。過去最高の当たり役で、自然な演技になっていました。脇を固める俳優陣も非常に素晴らしく、風間俊介さんや土屋太鳳さんなどのメインキャラクターも素晴らしいですし、個人的に好きな女優さんである佐津川愛美さんが本作でも体当たりのセクシーな演技を見せてくれて良かったと思います。
ストーリーの面でも、終盤に行くにつれて事件の真相が段々明るみになっていく様子や、ラストの展開も結構私好みで面白く鑑賞することができました。
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かつては直木賞を受賞するほどの実力派小説家であった津田伸一(藤原竜也)は、とある小説で大きなトラブルを起こしてからは小説の執筆を全く行わなくなっていた。そんな津田が3年ぶりに新作を書き始めたということで、担当編集者である鳥飼なほみ(土屋太鳳)は彼がバイトするバーに原稿を回収するために足繁く通うようになる。津田は自身と同名の主人公が様々な事件に巻き込まれるという"フィクション"小説を書いていたのだが、鳥飼はそれが実話を基にした小説なのではないかと疑い始めるのだった。
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本作の主人公でもある藤原竜也演じる津田という男。
藤原竜也の演技や過去のフィルモグラフィーも手伝って、とにかく雰囲気が胡散臭いんです。
その胡散臭い男が書き上げる小説が妙にリアリティがあり、担当編集者である鳥飼が「フィクションではなく実話を描いているのではないか」と疑い始めるというのが大まかなストーリーです。
本作は小説の再現映像と現実世界での津田と鳥飼のやり取りが交互に繰り広げられるという構成になっています。小説世界と現実世界を交互に映すことで真相が明らかになるという構成は2016年公開の映画『暗黒女子』と近い気がしますが、実際見比べてみると本作は『暗黒女子』とは違いますね。どちらかと言えば現代と過去のストーリーが交互に展開される『アヒルと鴨のコインロッカー』『渇き。』に近い構成に観えました。過去(小説)の出来事が現実と少しずつリンクしていくことで伏線が回収されていくという構成になっていて、私個人としても結構好きな展開です。
ただ、最後まで観終わって、伏線が回収されてスッキリした部分がある反面、一部理解しきれない部分もありました。ただ、それは私の理解力不足なのかもしれませんし敢えて説明を省いた考察要素なのかもしれません。とりあえずは色々な方のレビューを観てから判断したいと思います。
本作で特筆すべき魅力は何と言っても主演・藤原竜也の怪演です。
一筋縄ではいかない雰囲気の天才小説家津田伸一を演じた本作の藤原竜也は、叫び声を上げるようなオーバーアクションは封印し、声を抑えた比較的大人しい演技になっています。これが本当に良かった。近年の藤原竜也はオーバーに叫んで怒鳴って声を嗄らす演技ばっかりになってしまっている雰囲気があって、私はその風潮に憤りを感じていました。昨年公開された『カイジ ファイナルゲーム』が特に顕著でしたけど、とにかく叫んで怒鳴って「キンキンに冷えてやがる」とかの過去の名言言わせるだけみたいな演技をやらされている印象がありました。蜷川幸雄によって育てられた演劇出身の俳優だからオーバーアクションが得意だというのは分かりますが、その演技を映画でもやっちゃうのは間違いだと前々からずっと思っていました。
しかし本作では近年の藤原竜也に見られた過剰な演技は無く、非常に淡々とした演技をしています。この演技がとにかく上手い。早口で捲し立てるようなシーンもありますが活舌が良いのでしっかり聞き取れる。叫んだり怒鳴ったりするだけが藤原竜也の演技じゃないということをまざまざと見せてくれる素晴らしい演技でした。
藤原竜也の演技を観るためだけに映画を観る価値があるとも思いますし、それを差し引いてもストーリーや構成が非常に面白い作品だったと思います。
個人的な意見ですが、悪いことをしたキャラクターが然るべき罰を受ける展開の方が気分が良いので、浮気をした秀吉の妻が特に罰を受けていないことに対してはイマイチ腑に落ちない気分がします。ただ、そこは原作者も理解しているようで「小説の中では救われて欲しい」というようなセリフが挟み込まれていましたね。観客の考えを先回りしたようなセリフが入っているのも、原作(脚本?)の素晴らしいところです。
俳優陣の演技が光る素晴らしい映画でした。オススメです!!