「【ブルーアワー/年上の女性と年下の男性の恋愛⑤】」明け方の若者たち ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【ブルーアワー/年上の女性と年下の男性の恋愛⑤】
若い頃、明け方のブルーアワーまで起きて遊んだり、語り明かしたりすると、確かに世の中を支配しているような気になった。
時間に縛られちゃいないとか、人々がやっと起き出してくる時間帯に起きているという優越感なのだろうか、そんな感覚があった。
大学のゼミの合宿で議論を朝まで交わした時も、友人と夜通し車をブルーアワーまで走らせた時もだ。
ただ、独りだとそんな感覚はなかった。
だから、きっと若者は集うのだ。
(以下ネタバレ)
ちょっと年上の人妻の”彼女”と、”僕”の恋愛は、就職を控えた学生と社会人の”はざま”ような、希望とも不安ともつかない時の中で揺れ動く感じだ。
ブルーアワーも似たようなものかもしれない。
こんな感覚を共有すると余計に親しくなる感じがするのは僕だけじゃないように思う。
でも、世界は残酷だ。
思い通りにならない会社。
くだらないルール。
同じように繰り返される日常。
飼い慣らされていく感覚。
非日常に思いがけずドキドキしてしまう人間性が失われる怖さ。
恋愛だけが逃げ場と思っていても、いつかは、その場所も変わる。
そこだけが自由というのは幻想なのだ。
いくら”はざま”を共有したからといって、”はざま”に止まり続けることは出来ない。
これは僕たちの世界そのまんまだ。
ブルーアワーは明け方だけのものではない。
暗闇が支配する前の時間帯も実はブルーアワーだ。
明け方のブルーアワーの後の希望の時間は、日がさす日中だったのかもしれない。
でも日は必ず暮れる。
でも、また、日はさす。
僕はそんなふうに思う。
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