「ちゃんと良作でした」100日間生きたワニ LIN.Kさんの映画レビュー(感想・評価)
ちゃんと良作でした
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ようやく見に行けましたが、なかなかの佳作でした。
作画はキャラクターは原作準拠でシンプルですが、背景も構図も演出もきちんとしていて、ちゃんとしたスタッフで丁寧に作られていることが分かります。
メインのキャストには本職の声優ではない人も多いですが、皆さん違和感なく自然に演じておられました。
元ネタの「100ワニ」は1日1話、日常の小さなエピソードを淡々と重ねてゆくことで、それが突然断ち切られる理不尽さと、だからこそ振り返ってみたときの過去の何気ない日常の尊さ、愛おしさが際立つ、という作品でした(そして直後に台なしにされた)。
映画の後半では、その先、遺された人々の喪失の物語を描きます。
映画の短い時間では原作のようにエピソードを積み重ねるには到底時間が足りず、エッセンスを凝縮した形になりますが、それが後半、同じ場所、似たようなシチュエーションを重ねることで、その後を生きる友人たちの喪失感と癒えない傷を繊細に描き出す。
前半のエピソードが後半の展開に密接に関わる構成は美しく、さすがの上田監督かと。
派手な見せ場はないですが、日本映画らしい味わいのある作品でした。
ただ、大きな映画館で大々的に全国展開するような大作扱いは違和感ですね。
小規模な映画館でいいから、ちゃんと映画が好きな人々に、愛されながら楽しまれるべき作品でしょう。
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