「なるべく先入観を持たずに観に行きました。」100日間生きたワニ Equinoxさんの映画レビュー(感想・評価)
なるべく先入観を持たずに観に行きました。
まずタイトルが改変されているせいでよくわからないものとなってしまっています。
100日間生きたワニ、ですが、これでは生後100日で死んだみたいです。実際には長い人生を歩んできた上で死ぬ、その100日前から(死んだ100日後まで)物語として描写しているだけです。「100日後に死ぬ」というタイトルに含まれる死という文字を忌避する為に考えた前向きなタイトルなんでしょうけど、日本語としておかしいのでもう少し考えるべきでした。
何よりも「100日後に死ぬ」という現在から未来を見ているタイトルと、「100日間生きた」という現在から過去を見たタイトルとでは意味合いが全く違います。単なるポジティブな言い換えではないんです。その時点で未来を知らずに日々を過ごすことから生じる切なさは失われました。
Twitterでは100日後に死ぬと言われていながら本当に死ぬのかどうか読者も見えていない状態で1日1話、カウントダウンと供に実際に100日かけて描かれた点がよかったと思っています。日々を無為に過ごしたり未来の約束をしたり、自分が死ぬとはわかっていないが故に日々を浪費するワニの暮らしを眺めることは、ワニと同じく1日1日を過ごす自分の身に置き換えて身につまされ日々を大事に生きていこうと思わせてくれるものでした。ワニの1日は自分の1日でもあったわけです。そのライブ感がとても秀逸だと思っていました。
一方映画で最初に死ぬ場面を持ってきたのは恐らく多くの人は結末を知っているだろうからの苦肉の策だったのかもしれません。映画というフォーマットが前提にある時点でそれは1つの制約だったでしょうし。しかし、観る側からするとそんなの知ったこっちゃないです。
話を戻すと、最初に死を見せてから100日前に遡るのですが、そこからの時間展開がよくわかりません。冒頭で桜吹雪の中で死んでいるので、クリスマスや正月の描写で時間経過はある程度わかるのですが、100日目に向かってカウントダウンしていく、刻一刻と残された日が減っていく感じがありません。
場面の転換にメリハリがなく、そして何日残っているのかわからないダラダラした印象のまま春になります。ワニ本人は死ぬとわかっておらず、原作でも無為に日々を過ごしており、また100日分全て映像化してカウントダウンするわけにもいかないですし、ここは敢えてそういう演出にしている可能性もありますが、単純に映画として見た時に余りにも退屈で冗長な印象を受けました。
その後の第2部ともいうべき、ワニが死んだ後ですが、ワニの代わりに出てくるコミュニケーションが下手で嫌われ者のカエルのおかげで、ワニの死によって気不味く疎遠になった仲間達が再び集結するんだろうなという予想通りの展開で、予想通りなのに冗長なのでこれがまた辛い展開でした。カエルの性格もムカつくのですが、作劇上そういうキャラがいてもそこはいいでしょう。
とにかく、全般的にすごく冗長に感じるので60分が2時間くらいに思えました。
次に、声優さんも全般的にお世辞にも上手とは思えず、棒読み感が強い印象でした。神木隆之介さんは君の名はとか上手だったと思うんですが、ワニは棒読みでした。あえてああしてるのかもしれませんがそうだとすると意図がわかりません。また、台詞回しがわざとらしいくらい若者言葉に寄せてる印象も受けましたが、それはそれで絵柄と合ってない感じもしました。原作もそこまで変な若者言葉で話してなかった様な…。
事前にネットでバズっていた紙芝居という批判については個人的にはそこまでこき下ろす程ではないと思いました。動くべきところは往年のFlashアニメ並には動いていたし、絵柄もリアル寄りでもないので紙兎ロペみたいなものかなと思いました。あれもあれで成立してますよね。
作画崩壊という批判についても特に原作もあんなもんでしょうとしか思えなかったので崩壊しているとは思いませんでした。作画崩壊って言ってる人はどっちもちゃんと観てないんじゃないですかね。
ダラダラ書きましたが、原作のいいなと思った部分を全てスポイルし、余計なものを付け足した冗長な映画という印象しか受けられず、映画館で1900円出す価値はないと思いました。1日1分くらいで100日間分のTVアニメにした方が成功したんじゃないかと思います。
ただしここまで書いたことは全て私の主観であり客観的な観点ではありません。
未見でこれを読んでしまった方は、事前の悪評に惑わされずにご自身の目で観て判断された方がいいと思います。そしていいと思ったら誰がなんと言おうと高い評価をしたらいいと思います。
なので、誰がなんと言おうと私はクソ映画だと言います。映画というフォーマットにすべきではありませんでした。