イントロダクションのレビュー・感想・評価
全2件を表示
【人生の荒波の中、幾つかの”抱擁”により生きる力を与えられる青年の姿を描き出した作品。”現実は厳しいが、生きろ!”と言うホン・サンス監督のメッセージ性を感じた作品でもある。】
ー モノトーンで、章立てで物語は進む。-
1.ヨンホ(シン・ソクホ)は、漢方医師である父の病院へやって来る。父は、鍼灸師でもあり患者を見ながらも、時に机に突っ伏し”金の半分は寄付します‥。”と謝罪の言葉を誰ともなく、告げている。
父の友人の高名な俳優も診療に来ている。
ヨンホは、ガールフレンド、ジュウォン(パク・ミソ)と会った後、病院の中年の女性スタッフと雪の中、抱き合い別れる。
ー 第一章では、ヨンホは”父に呼び出された”と言うが、父と会うシーンは描かれない。父子関係が上手く行っていない事を、暗喩しているのだろう。
又、父の”神への謝罪”ともとれる言葉は、彼自身の金に塗れた生き方の皮肉であろう・・。-
2.ガールフレンド、ジュウォン(パク・ミソ)は、ドイツに留学に来ている。
そこに、ヨンホが、わざわざ韓国からやって来る。
二人は、川べりで会話を交わし食事を取りに行く・・。-
ー この章は、ヨンホとガールフレンドの別れを暗喩しているのだろう。ー
3.ヨンホは母親に呼び出され、海岸沿いの食堂で1章で出て来た高名な俳優と、ヨンホの友人と食事をする。
ヨンホは、俳優を目指していたが彼女が居ながらキスをする事に違和感を覚え、俳優の道を諦めたと高名な俳優に話す。それを聞いた高名な俳優は酒の勢いもあり、激高する。
ヨンホは友人と、中座し海辺を歩く・・。
---------------------
そこに、別れたガールフレンド、ジュウォンが現れ”目を悪くした。死にに来た”とヨンホに語り掛ける。ジュウォンはドイツ人と結婚した後に別れたと自ら言う。
- ココのシーンは、ヨンホが見た白昼夢だと思う。-
---------------------
ヨンホは、友人と車の中で酔いを醒ましてから、冷たい海に戯れに独り入る。
友人は、そんなヨンホの肩を抱えて、彼に優しく上着を掛けて上げる。
<今作は、作りのトーンも独特だが、不思議な余韻を与えてくれる作品である。
ヨンホを演じたシン・ソクホが常に浮かべているやや哀し気な、けれど優し気な微笑みが印象的である。
未だ、世に出る前の一人の青年が抱える茫漠たる不安と、それを癒す幾つかの抱擁のシーンは、韓国の多くの若者達に対し、”現実は厳しいが、生きろ!”と言うホン・サンス監督のメッセージ性を感じた作品である。>
<2022年8月21日 刈谷日劇にて鑑賞>
全2件を表示