劇場公開日 2022年2月18日

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「イラン映画の豊かな語り口を実感する一作。」白い牛のバラッド yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0イラン映画の豊かな語り口を実感する一作。

2022年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

刑務所を連想させる塀に囲まれた一頭の白い牛、というイメージが強烈な印象を残す一作。映画の内容も抽象的で難解なのかと思ってしまいますが、物語の筋自体は具体的かつ明確です。夫を死刑で亡くした女性が、夫の冤罪を知り、死刑判決を下した判事達に謝罪を求めていく経過に沿って物語は進みます。個人の権利、特に女性の権利が十分に保障されているとは言いがたいイラン社会で、一人の女性が、死刑制度に対する異議申し立てという、政府批判とも受け取られかねないような声を上げようとすることで、様々な波紋が生じます。そんな彼女のもとに、親切だが素性が知れない男性が現れることで、物語は意外な方向へ進んでいきます。

やはり制度への異議申し立てが当局を刺激したのか、本作は本国イランでは上映禁止の措置が下されました。しかし本作がすごいのは、主役の女性を監督自ら演じており、さらに主要な制作スタッフが国外在住であるにもかかわらず、監督はあくまでもイランに留まり本作を制作したところです。本作の描写を観るに、女性の監督が本国で映画制作を続ける困難さを思うと、思わず鑑賞しながら背筋が伸びます。

yui