「【”不条理過ぎる現実・・。過ちを素直に認め、直接謝罪して欲しかった・・。”イランの司法制度、死刑制度の在り方及びイラン女性の生き難さをマリヤム・モガッダム監督が世界に発信した作品である。】」白い牛のバラッド NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”不条理過ぎる現実・・。過ちを素直に認め、直接謝罪して欲しかった・・。”イランの司法制度、死刑制度の在り方及びイラン女性の生き難さをマリヤム・モガッダム監督が世界に発信した作品である。】
■物語はコーランの一節 雌牛の章から始まる。
”モーセは民に言った”神は牛を犠牲にせよ”と命じた。民は答えた。”我々を嘲るのですか・・。”
そして、冒頭とラストで広場に立つ白い牛が意味する事。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・罪亡き夫ババクを、死刑にされたミナ(マリヤム・モガッダム監督)は悲嘆に暮れ、喪服を着て聾唖の娘ビタを抱え、牛乳工場で仕事をしながら、過ごす。一年が経った頃、裁判所からの”呼び出し”で出向いたところ、”真犯人は別にいた。済まない。賠償金は2億7千万トマンを支払う。”と言われる。
- 物凄い人命軽視の司法制度である。日本では、大正、昭和初期の冤罪裁判が未だに行われているというのに・・。価値観の違いなのだろうか・・。だが、ミナは納得していない。-
・そこへ、”昔、ババクに1千万マトンを借りた・・”と言うレナという男が、憔悴し切った表情で現れる。銀行でお金を支払い、レナと一緒に居たと理由でアパートも追い出されたミナ。レナは、ミナに親切に住む家を紹介する。
- ムスリムの戒律を絡ませたりしながら、イラン女性の生き難さを描いている。-
・レナの息子の父親に対する冷徹な態度。そして、父に出征前日に軍に入ったと伝える。彼はそのまま亡き人になる。
- このシーンを観れば、レナがミナが執拗に面会を求めたババクの死刑を決めたアミニ判事だろうと、観る側は気づく。神の裁きがアミニ判事に下ったのだ。
だが、ミナはレナの優しさに惹かれて、それには気付かずに”優しい人”だと思い込んでいる。
そして、息子を亡くし悲嘆に暮れるレナを自宅に泊め、夫が亡くなってから初めて赤いリップクリームを塗る。ー
・ビタの親権を求めるババクの父と弟。拒否するミナ。そして裁判で不利な審理を下されたババクの弟が、ミナの携帯電話にかけ、告げた真実。
<ラスト、ミナはレナとディナーを共にする場で、ホットミルクを勧める。緊迫感、全開のシーンである。一口二口、飲みホッとした顔をするミナ・・。
個人的には、レナは”分かっていながら”ホットミルクを飲んだのではないかと思う。但し、一縷の望みも抱きつつ・・。
謝罪の意を込めたレナのミナに対する数々の行為。
けれども、彼は直接ミナに身分を明かす事は無かった。
口で涙を流しながら謝罪する事も無かった。
今作は、イランの司法制度、死刑制度の在り方への疑問及び、女性の生き難さをマリヤム・モガッダム監督が世界に発信した作品である。>
<2022年4月10日 刈谷日劇にて鑑賞>
こんにちは。
色々なモノを示唆?してた作品だと思えました。
イランの女性でなくて良かったーとつくづく思います。
こうして、映画を見られるってありがたく幸福な事なんですよね。