「女性監督の秀逸なイラン作品」白い牛のバラッド バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
女性監督の秀逸なイラン作品
昨年鑑賞した「ジャスト6.5 闘いの証」と「ウォーデン 消えた死刑囚」の傑作ぶりが記憶に新しいイラン映画。本作はフランスと共同ですが監督がイランの方で女性、観ないわけがないです、期待大。
この独特と言っていい映像の雰囲気が好きなんです。モノクロのような感じだけどそうじゃない。色はあるけど無機質な感じはイラン映画の特色なんでしょうかね?すごくいいです。なんでこんなに温度を感じない殺伐とした雰囲気があるんだろう?ただの先入観なのかなぁ?けど、それが作品の厚みを演出してくれます。
さて、本作。コーランがベースになっているようですね。全く詳しくないので読みかじりですが、白い牛は生贄・・・さらに「目には目を」の同害報復も絡め「罪の償いとは?」「人が人を裁くとは?」を女性の目線や立場からイスラム社会を風刺しながら描くという・・・なかなかのお腹いっぱいになりそうなテーマがわんさか入っています。そりゃ、本場では上映できないですよね。納得です。ですが、それらがストーリーの中にスッキリ描かれていてかつ考えさせられる1本になってます。
本作は死刑制度の是非についてがテーマとなっておりますが、イスラムの世界における<弱者=女性>の立場に関するアンチテーゼにもなっている・・・というかそちらの方が強いのではないかなぁ?って思える味付けでした。死刑制度云々というのならラストの描き方がちょっと消化不良なんですよね。あれ?認めちゃうじゃん・・・な感じが、むぅぅぅぅぅんなんですよね。
ただ、兎にも角にも男性社会に翻弄されるものの奮闘するシングルマザーのミナの「一人の女性として」「母として」「一人の女性として」「未亡人として」の描かれ方の方が印象に残るのです。口紅の演出がシビれました。女の決意と妻の決意ってとこでしょうかね。おぉぉぉぉぉぉって感じで。女優さんが上手いのかなぁ?(監督さんですけどね)
演出上、いくつかのメタファーを使うのも好きですね。結構散りばめられていると思います。白い牛然り、クライマックスの飲み物然り、ビタが声を出せないのはイスラム女性の現れ?とかとか。また、登場する男性が大体傲慢っていうのもの。また画面の作り方もいいです。ひび割れた鏡の使い方もよかったなぁ。
派手な作品ではありませんが胸に迫る作品でした。