偶然と想像のレビュー・感想・評価
全26件中、1~20件目を表示
いいですね!
色々な方々からいい映画だってお薦めいただいいてましたこの作品。WOWOWで放送されるって知って忘れないように録画しておいたのですが、なかなか鑑賞することが出来ないまま暑く長い夏が終わりそうです。
またまた感じてしまいました。やはり凄い監督さん、脚本家さんだなぁって!
忙しい今日この頃、オムニバス作品なので最悪1話ずつ観ればいいか?って思ってましたが一気観してよかったです。3話が繋がっているわけではありませんが濱口竜介監督の感性をそれぞれ感じさせてくれる素敵な佳作ばかりでした。
1話のなんだかそのへんのカフェで繰り広げられる女子バナがどんな展開になるのかワクワクして観はじめましたが、予想外というか古川琴音さんの不思議ちゃん加減がほとばしる作品でした。最近の、堺雅人さんをドギマギさせるCMで不思議な女優さんだと思ってましたがやはり納得です。
2話では今や安定の領域とも言える渋川清彦さんとの淡々と語る会話劇は好き嫌いが分かれそうですが私は嫌いじゃないですね。森郁月さんのエロっぽさも秀逸でしたがだんだんと会話が続く中、何故か教授と同じ感覚を共有(?)しでいくくだり、5年後のセフレとの偶然の再会でわかる意表を突いた展開は想像できませんでした。
鑑賞した皆さん、それぞれの好みが分かれそうですが、私は3話が1番気に入りました。本当に偶然が生み出した二人の女性の本音部分、「こんな偶然ってあるの?」と思いながらもその短い時間の中でお互いが素敵な発見をしていく展開はピアノの旋律と相まってほっこりした気持ちにさせてくれました。
監督の定番役者さんたち(正直この作品で初めて知った方々が多いのですが)がそれぞれの魅力を発揮して(監督に発揮させられて?)オムニバス作品のメリットが満載だと思いました。
『偶然と想像』という一見結びつかないような2つの言葉が、観終わってみるとなるほどなってうんうんとうなづく自分がいました。多くの方々が推していたことにもうなづく次第です!素敵な映画でした。観てよかったです。
やっぱり棒読み
................................................................................................
全3作のオムニバス映画
1本目は友人が元彼と付き合ってるのを知った女が元彼の所へ。
で色々面倒くさいことを言って元彼が困惑する作品。
2本目は小説で賞を取った大学教授?に感銘を受けた女の話。
直接会って話して感銘を受け、恋愛に似たような感情を持つ。
でエロいメールを宛先を間違えてメーリングリストへ送ってもた。
これで教員はクビ。女も離婚。なーんて話。
3本目は、高校時代の友人に偶然出会った女性の話。
そのまま家を訪問するが、別人だったことが判明。
でもそれなりに意気投合するような話。
................................................................................................
この監督はドライブマイカーで知ったが、何か難しい。
登場人物がみんな何か棒読みで、心が読みにくい。
それをするのが醍醐味なんかも知らんけど、とにかく難しいわ。
淡々と良質な作品
3話のオムニバス。
1話目、最初は、え?何を見せられてるの…?って感じの女子トーク。
琴音ちゃんの独特の世界観が素直でひねくれた性格の女子を好演してた。中島歩さんのオフィスに響くエエ声と相まって、舞台上映観てる感覚。
若い時は掴みきれない魅力的な子とのアドレナリンを選びがちだけど、大人になるとどストレートに性格イイ子とのセロトニンの方が必要ってことがわかるよねー。
最後のカフェのシーンで、両手で顔を覆うと時間が戻る演出、ああそうくるかー結局振り切らなかったのね、って思ったけど、どっちが現実なのかは受け手のお好きな方を…って感じなのかな。
2話目、これも、アドレナリンだよね。
専業主婦兼大学生には家族がいて、若いセフレがいて抑揚はないし女子にハブられてるけど穏やかな日々。セフレの復讐の手伝いすることで教授を誘惑して計画通り乗ってきたらアタシのアドレナリンドバドバじゃん…やろう!!ってなったのに(いや、この心理状態は想像だけど)全然教授は乗ってこないし、なんなら最後は教授に絆されてしまうっていう流れがいい。
最後は大学の事務に会話データを誤送して、先生が辞職して自分も離婚、ってなるけど、もう2人共大人だし「誤解しないで聞いて欲しい」とか「嵌めようと思ってやってました」とか話しているし、肉体関係があったわけでもないから第三者が聞いたとしても、そこまで問題にならないと思うんだけどなー。ここも納得感あるともっと好きなのになー。
ラストは、2つ上の同僚に捕まって結婚する、っていうナメた発言に静かにキレて「やってやんぞ!!」っていうキスをするの、よかったなー。やったれやったれ!!
しかし、KEEだった頃もやんちゃでカッコよかったけど渋オジになったなー、かっこよ!
鑑賞後3日目の朝、ふと気づいたけど
最後バスの中でキスしたのって、持つ者と持たざる者の立場が逆転する合図だったな。
セックス中は絶対キスさせなかったし、情が生まれるからキスはしないのが不倫の嗜みだけど、体の相性がよくてキスしちゃったら絶対情が生まれる。それを育んでからズタボロに捨てる未来を想像させられた…!爆笑。
3話目、随所随所に違和感はあったけど、えーーー!まさかの別人やん!でもなんか同い年くらいの東京と仙台で全く違う他人の人生も気になるし、家に入れてもまだ気づかなかったくらい波長が合うなら、もうちょっと話そうぜ、っていうのは女性の特徴かも。
本人を目の前にしたら言いたくても言えなかったかもしれないこともちゃんと言葉にして後悔を成仏させられたかもしれないし、大人になると新しい友達作るの難しいけど偶然友達(もしかしたら親友)を見つけることができたのかもしれない。いろんな示唆を含めた話だったな。
私の顔が河合青葉さんに似ててなんかすごい親近感もあったな。
---
3話ともこれだけ淡々と進み、抑揚がないトーンでまとめられてるのに、ランチ直後の13:30からの2時間全然眠たくならなかった。
クスクス笑いも随所に散りばめられてて良質な作品だったなー!誕生日に観られて満足!
変わった映画(=面白い)
物語の構成には何度も驚かされ、登場人物の一見不可解な言動にはどこか親近感を覚えてしまう。変わった映画ではあるけれど、自分にとっては変な映画ではなく、面白い映画だと思えました。不思議な棒読み台詞の意味は未だに理解できていないのでこれから考察を深めていきたいです。
●魔法(よりもっと不確か)
初っ端から長回しの会話に「これはどこまで続くのか?」というドキドキ感、そしてそれを成立させる役者に敬服。タクシーでの女子トークはリアリティを感じて余計に凄いと思わされた。自分の心理を理解しきれていない女の子の暴走には親近感を覚えた。最後、写真に収めたの風景は工事現場だったので、彼女にとっては成長(build)だったのだと思う。
●扉は開けたままで
タイトル通り人の隠された部分が露わになるわけだけど、その内容を事細かく棒読みされるともはやコントだなと。最後、事務局に送られた録音がノーカットであれば、教授はハニートラップを仕掛けられた被害者として考慮されるのでは?と思ってしまった。人の心の穴が全面的に映し出されたストーリーで、面白いコンテンツにダークな要素は欠かせないなと思った。
●もう一度
先の2作はドロっとしていたのに対し、本作は爽やかな気持ちにさせてくれた。最後、目の前の人と本当に会いたかった人の両方に語りかけるシーンは素敵だった。記憶を思い出した時には救われたような気持ちになり、その流れで終わってくれたので映画全体の後味としても最高だった。
第3話で受け取った宅急便の宛先の名前
ハッピーアワーを観たときからの熱烈な濱口監督ファンです。「偶然と想像」も期待を裏切らないどころか期待以上の面白さで映画の楽しさを満喫できました。ただ、一緒に観た相方が、第3話で河合青葉さんが受け取った宅急便の送り先の名前に「(小林)ミカ」と書いてあったというのです。僕も宅急便の名前は気になったのですが、確認できずそれが画面に映ったのかどうか確認できませんでした。
もし、宅急便の送り先の名前が「ミカ」だったとすると相方が言うように「…あなたは今幸せなの?」と聞かれたときに困惑して、別人だととっさに嘘をついてしまったというお話しになってしまいます。
本当のところはどっちなのかスゴく気になります。もし、お分かりになる方がいらっしゃったらぜひ教えて下さい。
ただ、どちらであったとしてもいろいろな想像が広がるという点で素晴らしい映画だったことにまったく変わりはないと思います。
監督は気楽に観てくださいと言うけれど、、、
見終わってから、自分なりの解釈をしたり想像したりして、なんだか迷路に迷った感じになってます。
1話目(魔法〜)のラストで、2通りのシーンが良かった。そして最後の最後に、カーン、カーンと工事音が響いて、古川さん役の女子の心を自分で叩いてるように感じました。工事中の渋谷?の街並みをスマホで撮って、この風景もまた変わる、そして私も変わるーみたいな。
2話(扉は開けたままで)教授がミセス大学生の声を誉めた辺りから、彼女の瞳や声に輝きがまし、自信に目覚めた感じがとても良かった◎
バスでのセフレとの再会は最初に突っぱねて、よし!いいぞ!と思ったのに、、、
なんなら教授を探しだして、2人で幸せになってほしいぐらい。
3話(もう一度)仙台にすむ主婦に違和感。息子のフィギアに触らせない(じゃあ客間?に置くなって)
「お帰りなさい」って言ってなかったのに「お客さまに挨拶して」って???
裕福なのに、なんだか寂しそうな感じはありましたが。
いやはや、続きなんかを誰かと語りたくなる映画でした。
シューマンのピアノ曲「子供の情景」も淡々と優しい感じで映画に合ってて良かったです。
インサイダーとアウトサイダーを軸にした基本的な解説は「おまけの夜」...
インサイダーとアウトサイダーを軸にした基本的な解説は「おまけの夜」さんのレビュー動画が整理されていて最高だったので、そちらに預けるとして。
『ドライブ・マイ・カー』に続いて観た本作について、比較しながら所感を書き連ねてみる。
まず『ドライブ・マイ・カー』では劇中劇でありながら、カメラはその場面で重要なモノ(者/物)に焦点を当てていて、今何が重要なのか丁寧に解説してくれる映画だった。特に車の中で岡田と西島が語るシーンでは、淡々としたトーンのわりに、あたかも自身がその場にいるかのように、共感度を引き上げられる感じがして胸が熱くなった。
一方で『偶然と想像』ではその場面に登場する人物が全員映るように引きで撮られていて、どの視点でこの場面を見ればよいのか分からなくなってくる。タクシーでたまたまお客さんの話を聞いてしまったような、隣の席での会話をたまたま耳に挟んでしまったような、歩道橋でたまたま通りかかった時に目にしたような、そんな感覚に陥る。自分が当事者ではないそうした場面に対しては、たいていの場合、現実の断片を想像でつなぎ合わせてしまうものだが、この映画は終始それが求められる。多くを語らない、行間を想像でつないでいくのだ。それがまたこの映画の、現実か想像か分からなくさせる不思議な距離感につながっているのかもしれない。
そして登場人物たちは、本来であれば感情的に話すような内容を淡々と語る。でもきっとこれが人の心のうちの本来の姿であって、人は意外と感情を故意に乗せて話しているだけかもしれない。一見、感情が抜かれているかのように見えるからこそ本心に思えて、本心を淡々と言葉を尽くしてぶつけられることに動揺してしまう。それは言葉を尽くす関係性が一見淡白そうに見えるのに、実はかえってエロティックに感じる感覚に近しいのかもしれない。
そして核心に迫ったとき、共通して登場人物たちはいうのだ。「どうして怒ってるの?」このキーワードをきっかけに、次々と繰り出される感情の吐露は、現実味が一気に削がれ、滑稽にも見える。人は本心を語る時、自己防衛から笑みを浮かべることもあるというが、ある種そんな笑みを浮かべてしまうような滑稽さに、気持ちが浄化されるような感覚になっていく。それが鑑賞後の解放感にもつながっているのかもしれない。
最後の場面でピンクの花が出てくる。この花はなんだっただろうか、花言葉はあるのだろうか、言葉の細部まで意味を詰める監督に、そんな邪推を抱きながらも、その爽やかさに目を細めて、この3話の物語が現実だったのか、想像だったのか、しばし余韻を愉しむこととする。
昨年『ドライブ・マイ・カー』で瞠目させられた同監督、3時間になろう...
昨年『ドライブ・マイ・カー』で瞠目させられた同監督、3時間になろうかという前作と打って変わって、今回は短編集。
監督にはそれぞれベストな尺があると思っているので、この変化に一抹の不安もありましたが・・・
さて、映画。
それぞれ40分前後の短編集。
一話目「魔法(よりもっと不確か)」。
仕事帰り、タクシーに同乗するモデルの芽衣子(古川琴音)とヘアメイクのつぐみ(玄理)。
つぐみから切り出された話は、最近出逢った気になる男性の話。
初対面で、15時間も取りとめもない話をし、意気投合したという。
「寝てもいいかな、と初めて思った」というつぐみだったが、相手の男性は「2年前に別れた彼女のことがあって・・・」とその日は別れてしまった。
思い当たる節があった芽衣子が向かった先は、元カレ(中島歩)のところ・・・
といったところからはじまる物語で、少女漫画やライトノベルあたりにありそうな展開なのだが、「相手を傷つけることしかできない出来ない自分に、思い切り傷つく」という芽衣子のキャラクターがリアルで秀逸。
終局、偶然3人が出くわした場で真実を打ち明けて、ふたりを傷つけてしまいたい・・・と願う芽衣子の横顔へのズームアップは、フランスのヌーベルヴァーグ的な撮り方で、ドキッとしました。
二話目「扉は開けたままで」。
大学でフランス語を教える傍ら小説を書いている瀬川(渋川清彦)。
ひとりの学生が、彼の机の前で土下座をしている。
欠点を取り、留年しそうなのだ。
それから5年。
留年した土下座学生・佐々木(甲斐翔真)は、年上で人妻の同級生の奈緒(森郁月)と不倫関係にある。
周囲から浮いている奈緒の相手は佐々木しかいない。
そんな中、瀬川の小説「アンダルシアの虹」が芥川賞を受賞。
瀬川への恨みを晴らしたい佐々木は、奈緒を使ってハニートラップ・スキャンダルを仕掛けようとするのだが・・・
といったところからはじまる物語で、瀬川に惹かれるところがある奈緒の行動はハニートラップがトラップにならず、と展開。
瀬川の前で、「アンダルシアの虹」のエロティックな一節を朗読する奈緒のシーンあたりから、「ははん、これは村上春樹小説のパロディだねぇ」と気づく。
読んでいる一節の文体が、村上春樹そっくりなのだ。
硬質な台詞のやり取りの中からエロティシズムを感じさせる「大人のコメディ」として成立おり、さらに5年後のハニートラップの顛末と奈緒の意趣返しを匂わせるエンディングも含めて、これが意外と面白い。
他の2編は短編として完成しているが、この話は長編小説の一部を切り取った感もあって、観ている側の想像を働かせます。
三話目「もう一度」。
高校の同窓会に参加するため故郷・仙台へ戻ってきた夏子(占部房子)。
20年以上も経っているので、誰が誰やらわかならい。
そもそも自分はクラスでも異邦人のような存在だった。
同窓会の翌日、仙台駅前の大歩道橋のエスカレーターで、同じ年代の女性(河井青葉)とすれ違う。
「あの娘だ」とピンときた夏子は、女性を追いかけ、捕まえる。
「ここから15分程度のところに自宅がある」という女性の言葉に甘えて、挨拶もそこそこに女性の住まいに向かうが・・・
といったところからはじまる物語で、「そんなこと、あるんかいな」的な展開になるわけだけれど、「あれれ、このひと誰だっけ?」というのはよくある。
20数年経っているんだから、判別できなくても当然。
で、この話で面白いのは、本当の自分を吐露するのは「相手だけが知っている、自分の知らない他人」を演じているときだけ、ということ。
「ほんとうの私の心」は「私の知らない私」というのは映画でもしばしば描かれるが、この短い尺でキッチリと描けるとは想像もしませんでした。
ということで、いずれも面白く、すばらしい出来。
なお、二話目、三話目には、登場人物ふたりの正面バストショットの切り返しがあって、「お、小津!」と思わされました。
タイプの異なる話を繋いでいくのはシューマンのピアノ曲集。
だが、演出の工夫もされており、群像に近いざわざわとしたプロローグがあって、登場人物が絞り込まれていき、短いエピローグがある。
脚本時点で相当練られているといえるでしょう。
それが、ベルリン国際映画祭での銀熊賞受賞につながったのでしょうね。
聖なる棒読み
監督の舞台挨拶の回で鑑賞。様々な話が聞けて得しました。
全7本を予定しているという偶然とそれにまつわる想像(創造)の掌編集。いわゆるスターはいないけどサラッと爽やかな演技陣がそこそこのどぎついセリフを、悪い意味じゃなく棒読みチックに応酬、我々観客はいつもより脳味噌を活用して想像を巡らせられる。3本じゃ物足りない。
1本目、筋はとても面白いんだけど、古川琴音、自分には子供にしか見えなくて…ごめんなさい。
2本目、あの小説の下りも監督が書いたんだなあなどと想像。
3本目、まあ、これが最後で良かった良かった。
いま43歳で50歳までには完結させたいとのこと、でもこの題材なら延々続けられるのではと。
ノギスのような甘噛みで
三話とも脚本が抜群ですね。
演劇的ですが、映画の良いところがちゃんと活きています。
第一話【魔法】
タクシーのなかの自然な会話に引き込まれました。玄理さんはセリフ上手になりましたねえ。古川琴音さんは嫌な女ですね。うざい。本当にぶっ殺したくなりましたよ。喫茶店での急なカメラのズームは下手くそ!と思いましたが、なるほど。大人じゃんバージョン。好きなエンディングをお選びくださいってことなのかな。
第二話【扉は開けたままで】
こんなに可笑しい渋川清彦ははじめて。棒読み調がさらに可笑しさを倍加させる。森郁月という女優さん初めてでした。キレイでエロい。しかも、年下のセフレ君をがっちり確保してる女子大生の若奥様。子供を預けて真昼の情事ですよ。声のいい女性いいですねぇ。
5年後。バスのなかで再会して、自分からキスするのもさすが。
朗読の録音データください。約束は絶対まもります。
第三話【もう一度】
同窓会あるある?
ロケ地を仙台に決定したのはどなたですか?センスがとてもいいと思いました。占部房子さんはボーイッシュ。実は根岸季衣さんかな?と思って観ていました🙏
とてもいい話を聞いちゃったっていう感じでした。仙台に行きたくなりました。
ベルリン映画祭銀熊賞おめでとうございました。スパイの妻の受賞も濱口監督の脚本の貢献が大きかったと確信しました。
3話目が良かった
1話目はタクシー内でのワンカットトークに飽きてしまい、なんだかPFFみたいだぜ、と思った。2話目は朗読中に不覚にも寝てしまった。教員と学生の距離間を保持した丁寧語による会話は仕方ないのかもしれないが結果的に乗れなかった。ただ、2話ともオチは面白かった(それを映画として観たいかは?)。3話共通で女優さんはみんな魅力的だったので、このポイントは高いだろう。
3話目もオチのある話で、設定としてはこれが一番無理がある(別人と判明した時点で普通は自宅から追い出すだろう)かもしれないが、目の前にいるこの人が、あの彼(女)だったら…、とシンクロしそうになるやるせ無い気持ち、そして、その当時、相手に思っていたことをついに伝える気持ち、伝えられた気持ち(本人ではないが)を思って、泣けてきた。占部房子さんが特に良かったんだと思う。
数多の偶然から生まれ出づる真実
全作品の中で「偶然」がものすごい方向に物語を揺さぶった。
1話目、芽生子の「好きな人を傷付ける自分が欠陥品のように思える」だって、様々な偶然が重なった上で導き出した答えだ。それまで苛立っていた歩を劇的に変化させるほどに。自分自身に価値を見出だしていないと、なぜ自分なんかを好いているのだろうと疑問に感じ、拒絶してしまう。自己を肯定することから、相手を想うことが始まるはずなのだ。
2話目、瀬川の「社会的な評価に惑わされず、自分の価値を自分で抱き締めて生きていきなさい。例え難しくとも。(曖昧)」も同じ。社会でどれだけ罵倒されても、社会が知ってる私は私の中のごくわずかである。その「私」を生かすための努力は努力ではなく娯楽だ。私は目一杯「娯楽」に興じたい。
3話目に関しては、偶然が知恵の輪のように複雑に絡まり合って紡がれている。お互いを知っているようで知らなくて、でも知ろうと努力をしている2人。偶然が努力を生み出し、幸福感を与えている。たまには「努力」という言葉を信じてみてもいいかもしれない。
偶然が、努力を、事実を、その他数多なる感情を紡いでいる。否、偶然の結晶が事実なのだ。その事実を抱え、自分を抱き締めて、精進したい。
劇場で静かな笑いが起きた
濱口監督のメソッドに感情を排して淡々と読むというのがあるらしいんだよ。それをやってきたのかなって思った。
三本のオムニバスで、タイトル通り「偶然、こんなことがありました」っていう話で人物を描いてんのね。みんな役者さんは感情を入れずに淡々と演技すんの。
話ももちろん面白いんだけど、スゴイと思ったのは、どの短編も必ず一度は笑いが起きるんだよね。それも「笑わせよう」ってわざとらしい場面じゃなくて、自然に「確かになあ」ってところで笑いが起きる。当然、監督は狙ってやってんのね。そこのワザが見事だと思った。
《魔法(よりもっと不確か》では、情報量の差で笑いを取るんだよね。
観客・古川琴音・中島歩……古川琴音と中島歩がかつて付き合っていたことを知っている
玄里……知らない
って状況を作っておいて、それで古川琴音と玄里がお茶してるとこに中島歩が通りがかって、玄里が喜んで呼んじゃうっていう。
《扉は開けたままで》と《もう一度》は驚き。「それ、言うか」っていう一言で笑いをとってくの。
三本どれも面白かったけど、ちょっとカッタルくはあるの。一本終わるたびに「もうエンドロールでもいいな」と思ったから。淡々とした演技だからしょうがないね。
《魔法(よりもっと不確か)》のオープニングは、古川琴音がモデル役で撮影されてて、玄里がヘアメイクなんだけど、観たとき「これならむしろ玄里を撮れよ」と思ったね。
そのあとタクシーで二人で話すんだけど、「これテキスト、男の人が書いたな」って感じたの。なんでだろ。淡々とした演技を玄里が徹底できてなかったとか、そんなところなのかな。
あと三本とも、二人で芝居をするんだよね。どのシーンも基本は二人。動きもなくて、でも、会話でもたせるのが脚本すごいと思ったよ。
あの小説は読んでみたい
演劇的シチュエーション
言葉の棘があちこちに突起していて普段からキツい言葉に慣れていなければ攻撃力の強さにメンタルがやられてしまう可能性アリ
場面展開が必要最低限なので生の舞台で観た方がもっと没入感を感じられるかも知れない
3作共小説を読んでるかの様な会話劇が繰り広げられる
2作目のメルアドのタイプミス、3作目の宅急便の伝票の氏名共、非常に見え難かった 多分キモになる様なポイントだから画作りに工夫が欲しい
期待していた程ではないのが悲しい・・・
「魔法」 途中の不快感は相当なものだったが、後半はソコソコ魅せてく...
「魔法」
途中の不快感は相当なものだったが、後半はソコソコ魅せてくれた。
「戸は開けたままで」
これは逆に途中までは面白いのにラストが不快。
「もう一度」
あれだけ付き合いのあった相手を20年ぶりに会ったからといって間違えるっていう設定に納得できないんだよね。
とはいえ、全体的にはソコソコ面白かった。
日常の中に大切な何かがあることが分かる映画
12/25、香川県高松市にある「ソレイユ」で鑑賞しました。短編集が3話ある映画です。
第1話(魔法)が圧巻でした。
モデルの芽衣子(古川琴音)がヘアメイクのつぐみ(玄理)から最近の恋愛話を聞いて、出会った彼氏の元カノが自分だと分かり、ドロドロとした人間関係が引き起こされるのかと思い観ていると、最後に芽衣子からそれを言っちゃおしまいというような強烈な発言が。。。しかし、濱口監督が温かい配慮をしてくれ、常識的な展開となり事なきを得ました。監督、ありがとうございました。
第2話(扉は開けたままで)は、森郁月さんの凛とした演技が光っていました。
第3話(もう一度)は、人は多かれ少なかれ、あの時言えなかったこと又は言い過ぎてしまったことなどの悔いを持っています。私自身もそのような感情を持っています。今作では言えなかったことの物語ですが、その時、言えなかったことを言いあうことで、癒し合うという映画です。占部房子さんと河井青葉さんが素晴らしい演技をしていました。私自身も込み上げてくるものがあり、目に涙を浮かべました。
この映画は、若い方からお年を召した方まで愉しめる映画ですので、時間の許す方は、是非、ご覧になってみてください。
素晴らしい映画を製作してくれた監督と映画会社、そして上映してくれた映画館に対し深く感謝いたします。ありがとうございました。
虚実皮膜の間
上映前に濵口監督のビデオメッセージが現れ、肩の力を抜いてご覧下さい、と仰る。予告編も未見で、この題名では何やら哲学めいて自然と身構えていた者にとって、そう云われてみても……
「魔法」の冒頭、タクシーの後部座席での女性二人の長いシーン、あぁ『PASSION』の最初のシーンと同じだぁ、乗り物の好きな監督!
『天国はまだ遠い』の玄理が出てる、久し振り。そして台詞のリズム相変わらず弾み、遣り取りは自然で惹き込まれる。“三日後”またもや〈偶然〉は三人を引合わせる。
唐突な古川琴音へのズームアップ、何だこりゃ、と思っていたら、琴音の元カレであった事をぶちまける〈想像〉のシーンであって、実際は波風立てずに身を引くという場面がカットなしに続いている。あざやかな演出。
三人それぞれの役作りとその関係性が映画ならではの表現で描かれる。もとより映画はフィクションでありフィクションは〈偶然〉を織り交ぜて虚構の話を作り上げるが、その作り話と作り話の間に人間の微細で繊細で摩訶不思議なリアルが潜んでいるように感じられる。言語化は難しい。だから映画表現が……
「魔法」だけで息が切れました。
最後に『ハッピーアワー』の桜子役の菊池葉月の名前がエンドロールに音楽?担当として出ていました。
濱口竜介の世界観
あり得ないような偶然と想像をテーマに異なる3つの物語がオムニバスで紡がれる。全体的な評価は3.5だけどそれぞれ評価が異なるので以下3編をそれぞれ細かく書きました。
1.魔法 ★★★ 3
タクシーの後部座席での女の子二人の恋バナ。
カメラの長回し、膨大な台詞の量、哲学的な台詞…冒頭から濱口イズムがガンガン溢れてるよね。ドライブマイカーでも車の後部座席の会話が重要なシーンだった。別れた恋人が親友といい感じとか聞くと誰もがモヤモヤするよね。そのなんとも歯痒い気持ち、わかるよ。主人公の女の子古川琴音ちゃんの独特の空気と話し方、適役だわ。
2.扉は開けたままで★ 1.5
大学に通う、娘もいる主婦が同じ大学の男の子とセフレ関係にあり、その男の子に懇願されて大学の教授を陥れるハニートラップをするも、全く違う展開に…最後に重大なミスを侵して本人は離婚し、教授も大学を辞めるというストーリー.あの大学生の男が不幸になればいいのに。
申し訳ないけど、この設定が生理的に受け付けない。劇中の教授のセリフにあったように、不倫とかハニトラとか下ネタを中盤に挿入することにより程よいスパイスになるけど、私はどうも拒否反応がでちゃうんですよ。評価0だったんだけど、教授がいい人すぎて、あの録音のシーンとかなおと教授のやり取りが面白すぎてそこで点数アップです。教授、仙人か!
3.もう一度 ★★★★ 4
三章では舞台は変わって仙台に。中盤のどんでん返しに爆笑!うそ、こんなことってあるの?ってな偶然と、会いたかった人に相手を見立てて話をするという“想像”
彼女たちは40代、この年代に差し掛かると人や主婦には響くんじゃないかな。二人の思いがけない邂逅が胸にジーンとくる作品だ。
“時間に殺される”っていい表現、これ、現代人のほとんどがそうだよね。
「トライメライ」などをはじめとするクラシックピアノがいい。
ああまあだった
会話をずっと聞いているので眠くなる。特に第1話は雰囲気がとても悪い。あんなふうに議論を吹っ掛けられてばかりいたらどんなに好きでも続かない。第2話は、そんな程度のことでクビになったり離婚したりするだろうか。するかもしれないけど、まったく間違いが許されない恐ろしい世の中だ。第3話は相手のことをお互い自分に都合よく勘違いしていたのがあり得そうで面白い。
第2話と第3話は子どもを持っている女性が、人生が子ども中心にならない。あまり子どもに対する気持ちがなさそうだ。
第3話、高校生の息子が好きなアニメのフィギュアをリビングに飾るか? 変なやつ。
二話目、抑揚の少ない話し方で気付く、言葉が本来持つ力
本編前の映像で、監督が気楽に観てって感じの事をおっしゃっていたので、言われた通りに気楽に観ました。
『魔法(よりもっと不確か)』
最初のタクシー内での芽衣子とつぐみの会話、よく有りそうな感じなんです。
だけど、面白い考え方が所々に挟まるから、長くても飽きないんですよね。
それから、場面を移したオフィスのシーンは、カズと芽衣子の強い言葉の応酬。
ここは、考え方の面白い台詞の連発で、楽しかったな。
この話の最大の偶然は、女子社員の戻ってくるタイミングですよね。
このタイミングがずれてたら、違う未来になっていたよね。
『扉は開けたままで』
この話の瀬川と奈緒の会話のシーン、渋川さん演じた瀬川は抑揚が少なく感情がこもらない話し方なんですよ。
そして、その話し方で奈緒の事を次々と自然に肯定していくの。
ここのシーン、私は感動したな。
それでね、話の上手な人って、抑揚の付け方が巧くていろんな感覚を使って、人の心を動かすじゃないですか。
逆に言うと、瀬川の話し方で感動したというのは、これは言葉の持つ本来の力だけで心を揺さぶられたんだと思うの。
心揺さぶられたから、最後の結末は残念だったな、そういう映画だから仕方ないんだけど。
『もう一度』
これは、会話が自然なの。
なので、無さそうで実際無いだろうって話なんだけど、なんだか有りそうって思えてくるんですよね。
三本とも面白かったから、これからも楽しみです。
全26件中、1~20件目を表示