「偶然の怖さと人間の本性」偶然と想像 知徳さんの映画レビュー(感想・評価)
偶然の怖さと人間の本性
恐らく本年最後の映画鑑賞になるでしょう。タイトルは「偶然と想像」。最近の作品では「ドライブ・マイ・カー」がよく知られている濱口竜介の最新作で、短編3本からなります。この後に4本分の短編集を制作して完成らしい。「このままいくと、最悪の結果になるかも…」と言う不安をかき立てながら、最終的には軟着陸すると言うお話。
1本目は古川琴音演じるモデルとヘアメイク、モデルの元彼という構成。2本目は芥川賞を受賞した大学教授と、彼にハニートラップを仕掛けようとする学生(ただし人妻で子供あり。同じゼミの学生とちょっと不倫中)のお話。3本目は仙台に高校の同窓会で帰郷した女性と、たまたま駅で出会った同級生と思しき女性の一時の出会い。ほんのちょっとの偶然が思わぬ事態を引き起こす。車中や家、大学研究室などの閉じられた空間の中で言葉を重ね、それが時にこれまでひた隠しにしてきた本性を浮かび上がらせたりもする。
登場人物たちが胸に秘めたもの、ちょっとした嘘が、これまで大切にしてきた人との関係性を壊してしまうかもしれない、そんな危うさが日常に転がっていることを痛感せずにはいられない。それは少し前に観た「ドライブ・マイ・カー」と通じているところでしょう。
この作品は上映館も少ないけれど、何故か2室で日に7回も上映している。昨日は午後3回目の上映で観たが、ほぼ満席で若い人も多い。特に宣伝がされているというわけではないのに、良い作品については、口コミでその良さが広まるということか。
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