「「女性」を描きながら、言葉で表される以上の何かを描いている映画」偶然と想像 shoheiさんの映画レビュー(感想・評価)
「女性」を描きながら、言葉で表される以上の何かを描いている映画
すごい映画観た。三本の短編映画で構成されている映画なのだけれど、三本ともすごい。そりゃ、今年の邦画ベストワンだとすでに決めていた「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督の作品だし、期待を胸にふくらませて映画館に行ったわけだけれど、想像を上回る出来の作品。今年観た映画のベストワン。濱口監督は女性の描き方が本当にうまい。これまでの作品を観ていれば、そんなことは分かりきったことなのだけれど、もうそう表現するしかない。女性というモデルを描写するのではなく、あるシチュエーションの中に落とし込んで、女性という本質を持った人から想像の上を行く行動を引き出している感じ。登場人物たちを言葉で表せば、一本目の小悪魔、二本目の悪女、三番目の中年女性と野暮な言葉になるけれど、それらのくくりにとどまらないような、彼女らの感情のほどばしりと動揺と自分たちにも分かっていない行動の意外性が、観客の度肝を抜く。これこそ映画としての「女性」の描き方だなあと思う。成瀬巳喜男や増村保三とも少し違う。「ドライブ・マイ・カー」も言葉で表す以上の何かを映画で描いて、画面に刻み込んでいたのだけれど、この三つの短編はその言葉にならない「女性」というか、人間の感情と行動を見事に描いている。一見、普通に撮っているようでいて、抑制された的確な演出、脚本のプロットの巧みさ。本当に映画の表現力の素晴らしさを感じさせる映画作家だと思う。今年のベストワン映画としたい。
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