劇場公開日 2023年2月3日

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「食エロ」仕掛人・藤枝梅安 かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 食エロ

2025年8月13日
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世界広しといえども、暗殺者自らがターゲットの身元確認をしてから仕掛に及ぶ国など他にはないだろう。所詮人殺しは人殺しなのだから、そうまでして好い人ぶる必要は別にないと思うのだ。池波正太郎生誕100周年記念作品だけに、勧善懲悪を無理やりにでも成立させたいスポンサー(イオン)の意向が働いたのかもしれない。

梅安を演じるトヨエツをはじめ、相棒の彦さん役には片岡愛之助、その他天海祐希、佐藤浩市、菅野美穂、椎名桔平、早乙女太一等の豪華ラインナップを揃えている。美術セットもそんじょそこらのTV時代劇とは比較にならないほど金がかかっており、かなり見応えのある仕様になってはいる。

池波正太郎の時代劇小説をほとんど読んだことの無い自分が語るのもなんなのだが、食通として知られている作家の趣向に忖度したのだろう、本作には梅安の自宅で、酒の肴である自炊料理に彦さんと舌鼓をうつシーンがやたらと登場する。これがちょっとモーホーぽく見えて面白いのだが、『分とく山』の料理長が監修をしている割には肝心の料理があまり美味しそうに見えなかったのはとても残念だ。

その代わりといってはなんだが最近の邦画には珍しく、(やっぱり原作に目配せしたと思われる)濡れ場が盛り沢山なのだ。レーティングにふれそうなヌードシーンこそ皆無だったが、トヨエツが女中役菅野美穂の💋をちゅうちゅうちゅうちゅう激しく吸いまくるため、その後のハゼを手づかみで食すシーンが非常に卑猥に見えたほどだ。

個人的に最も受けたのが、普段正座などしたことがないであろう、料亭万七の女将役・天海祐希が立ち上がりざまに、多分足が痺れたのだろう、思わず前足を一歩踏み出してしまったシーンである。普通なら撮り直しを命ずるところだが、河毛監督はなぜかNGスルー。宝塚スターが一瞬見せた“隙”が妙に艶かしい希少なシーンである。

基本的には、梅安がターゲットを羽交い締めにして針の一刺しで仕留めるため、アクションという点ではかなり物足りない。相棒の彦さんの仕掛けである毒入り吹き矢もめちゃちゃっちくて、もし剣術使いと正面切って戦わば瞬殺されそうな程弱っちいのである。エロとめしはほどほどだが、クライマックスの殺陣が全然盛り上がらない珍しい時代劇なのである。

妹と弟殺しという共通項で結びつけた1&2だが、それぞれ独立したお話になっていてパッケージにする意味はほとんどないといってもよいだろう。大体自分も女中に手を出しているくせに、若い女を権力者に斡旋するぐらいで、特に悪いこともしていない実の○を殺す必要が本当にあったのだろうか。実は針を寸止めにして生かしておいた、なんてエンドロール後のオチを期待していたんですけどね…

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かなり悪いオヤジ