「教えてやろうか、俺とお前の違いを。悪を知って外道に堕ちるか、悪を知って外道を憎むか。」鬼平犯科帳 血闘 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
教えてやろうか、俺とお前の違いを。悪を知って外道に堕ちるか、悪を知って外道を憎むか。
もはや、高麗屋のお家芸。当代染五郎、顔立ちは全然違うのに、ときたま吉右衛門の声に聞こえてくるときがある。そんなノスタルジーも時代劇なら許せる。
与力同心の顔ぶれもいい。ここに山田純大とかが並ぶと画が引き締まるな。この後に「碁盤斬り」を観た時に所作(例えば、草彅が大きく肩を揺すって走っていたが武士はそんな走り方をしないだろうし、片腕を切られた人間が普通に会話をするのもありえないだろう)に違和感があったが、さすがに細部に神経が行き渡っている感があって安心できる。
「血闘」は、おまさが長官の犬になるエピなので欠かせないのだが、原作や吉右衛門鬼平では手籠め(しかも、輪●)にされる描写があり、中村ゆりがどうされちゃうのかヒヤヒヤではあった。まあ、あれなら昨今のコンプラ的にも許容される範囲であろう。
若いころ、時代劇のステレオタイプの勧善懲悪ストーリーが嫌いだったが、フジテレビの池波ものは違っていて、悪い奴のなかにも真っ当な人間はいたし、正義の側にも魔が差してしまう人間はいた。それこそが世の中だ。その世界観が損なわれていなくて、とても気持ちがいい。
コメントする