「新しい鬼平に期待」鬼平犯科帳 血闘 10Kasさんの映画レビュー(感想・評価)
新しい鬼平に期待
昨今TVから『時代劇』というものが消え…CSなど専門チャンネルに於いても過去作品を視聴できる程度で新作が放送されるのは叶わないもの・・・ぐらいに思っていた。
『鬼平犯科帳』『藤枝梅安』『剣客商売』といえば池波正太郎の時代小説であり
劇画はゴルゴ13のさいとうたかを先生が
TV時代劇ではフジテレビ系でのシリーズものとして人気を博した硬派な時代劇作品だ。
それが、まさか令和になって『鬼平犯科帳』の新作が観れるとは!!
制作してくださったことに、まず感謝したい。
こちらのサイトのレビューや他SNSでも、
幸四郎の優しい顔が鬼平に合わないとか、若すぎるとか否定的な意見を多く見受ける。
『鬼平』に関しては、そりゃあもう吉右衛門の先代鬼平が完成されてるし、印象が強すぎるのがあるのは当然わかります。
が、そんなこと
松本幸四郎ご本人が一番わかってることでしょう
「『鬼平犯科帳』を継ぐことは天命と思っている。」と述べていましたが
『鬼平』は舞台に於いても初代の松本白鴎が…
そして吉右衛門の『鬼平』で人気作品として不動の地位を…
一族が築き上げたと言ってもいいぐらいの演目です。
幸四郎が、もう少し齢を重ねてから鬼平に挑んだとしたら「やっぱ違うわ」で片付けられ一発作品で終わると思うし
吉右衛門の鬼平という頂が高いからこそ、今からの挑戦だと思うんです。
また鬼平は真面目一徹の堅物役人ではなく、若い頃はヤンチャしてたからこそ大人になって、色々と悟る部分、他者の心情を汲み取ってあげられる部分があったりすると思うので
幸四郎の優しい面立ちのままの普段の平蔵と、火付盗賊改方の長谷川平蔵•鬼平として職務を全うする時のキリッとした表情のギャップがより感じられるし、そのギャップなどが長谷川平蔵という人間の器の大きさであったり、心の余裕を表現できてる様に見えたし
幸四郎版の鬼平ならではの魅力を感じました。
タイトルの『血闘』これは決闘と血統の、ダブルミーニングで、本所の銕と呼ばれた若かりし頃から平蔵に至るまでの流れ、そして因縁•因果で今の平蔵への繋がりをスムーズに描いてあり、『鬼平』初視聴の方に向けてもわかりやすい作りといえる。
ほか、まぁコミカルな部分もありTV時代劇の劇場ってだけで安心して見れる作品です
キャストは、もう適役ばかり!
火付盗賊改方、筆頭与力・佐嶋忠介の本宮泰風、同心・沢田小平次の久保田悠来
剣の腕も立つキリっと少し強面なタイプと
ムードメーカー木村忠吾の浅利陽介、次回作に繋がるクセのある小野十蔵の柄本時生
酒井祐助にバランスタイプの山田純大
これはいいチームだな、と。
彦十の火野正平が良過ぎで、
今作の物語の中核でもある、おまさの中村ゆりも和装の似合う美人だし、キリッとした表情演技も申し分なく、平蔵の脇を固める俳優陣が適材適所すぎました
網切甚五郎の北村有起哉
その父である土壇場の勘兵衛に矢柴俊博
名バイプレイヤー二人の悪党っぷりが、これまた絶妙だ
ただ甚五郎は剣の腕は全くの悪党なので
最後の対決シーンに於いては先に放送された『本所・桜屋敷』の松平健 扮する松岡十兵衛との一騎打ちのシーンには及ばないのは仕方ない…
『鬼平』は盗賊相手で夜のシーンがやはりメインになるので
他の時代劇と比べ、暗めの画が多くなりますし、
夜の静けさというのが、映画館内の暗さと上映中は静かに…というのと相まって案外スクリーン映えする作品ですが
殺陣の見せ方とかカメラアングルがチャンバラ映画のそれでなく、
あくまでTV時代劇の殺陣ですし狭所での殺陣はどうしてもゴチャつくし
幸四郎版の殺陣の迫力は、まだまだこれからという感じでした。
でも今年はTV連続シリーズで「でくの十蔵」「血頭の丹兵衛」と続きますし
その後も定期的に是非制作してくれると信じ
五年後、十年後・・・どんな
『鬼平犯科帳』になっていくのか?
楽しみにしたいと思います。