「新時代の王道」鬼平犯科帳 血闘 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
新時代の王道
"鬼平犯科帳 SEASON1" 第2弾。
通常スクリーンで鑑賞。
原作(血闘,兇賊)は読了済み。
時代劇専門チャンネルが、これまで何度も映像化されて来た池波正太郎の名作「鬼平犯科帳」をリブートさせたシリーズの劇場版。同じ趣旨の「仕掛人・藤枝梅安」もそうだったが、古き良き時代劇を受け継ぎつつ、新しいものを届けようと云う熱意に満ちた作品であった。ダークなトーンだった「仕掛人・藤枝梅安」二部作に比べ、本作は娯楽の王道を行く時代劇エンターテインメントになっており、時代劇と云うジャンルの入門編として最適だと感じた。是非、若い世代に観て欲しいと思う。
おまさを守ろうと命をかける長谷川平蔵の覚悟、平蔵を慕うおまさの想いに胸を打たれた。おまさの窮地を救うために感情を剥き出しにして剣を振るう平蔵がカッコいい。
平蔵の過去が深く絡んだ事件だが、過去と現在を親子で演じるから説得力が増している。悪と紙一重の若き日に悪を知り己を知ったからこそ、平蔵は強いのだろうなと感じた。
殺陣がとにかく多くて最高だった。立て続けにアクション・シーンがぶちこまれ興奮しっぱなし。引き込まれた。
原作を知っているだけに、チャンバラが豊富だろうなとは分かっていたが、期待を軽々超えるシーンの乱れ打ち!
特にクライマックスはスクリーンで観てこその迫力。絶体絶命の中、兇賊への怒りに燃える平蔵の気迫に息を呑んだ。
劇場版ならではの激しいアクションもさることながら、時代劇だからこそ描ける、強く胸を打つ人間ドラマの芳醇さも素晴らしい限り。パンフレットを読むに、シーズン2は2本製作することが決まっているとのこと。(たった2本かと云う寂しさはありつつ…)その内の1本はまた劇場版として公開して欲しいところだ(「流星」か「雲竜剣」を希望!)。
[余談]
北村有起哉さんの兇悪演技が心の底から怖くて、本気で恐怖に顔が歪んだ。鬼平への積もり積もった怨みが腹の底から湧き出していて、えげつないくらいに冷酷非道。故・大杉漣さんの網切の甚五郎もめちゃくちゃ怖かったが、越えて来たように思う。史上最兇の網切の甚五郎、爆誕である。
※修正(2024/07/06)