劇場公開日 2024年5月10日

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「脚本がいい!柄本明さん圧巻!新たな鬼平を是非スクリーンで!」鬼平犯科帳 血闘 ターコイズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0脚本がいい!柄本明さん圧巻!新たな鬼平を是非スクリーンで!

2024年5月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

冒頭の若き銕のシーンが生きてくる巧みな構成が見事。現在と過去を行き来する脚本が素晴らしい。20年の時を経て再会する鬼平とおまさ。おまさが鬼平の役にたちたいと無理をする強い思慕が愛おしくて泣けた。おまさにとって銕三郎との絆は、底辺を這いずり回って生きてきた自分の人生で唯一の愛おしい記憶で、唯一慕った人が今こうして輝かしい役を得て奮闘しているのなら自分はその狗として尽くすのが本望という気持ちなのだと思う。それが美しくて切なくて。

今回おまさの描き方に配慮したという。梅安と比較すると、梅安の動機として女性をいたぶる悪党を成敗という趣があったこともあり痛ましいシーンが散見されたが今回はほぼなく、事後どまりだったのは個人的にはホッとした。気がかりだったので。

この血闘は、ユーモラスなシーンもあり、鬼平の愛嬌などを含めたキャラクターとしての懐の深さ、そしてシリーズ通じての単純な善悪でははかりきれない世界観、そして殺陣などの迫力や江戸の街の美しさなどもしっかり伝わってきた。

今回の血闘は二人の盗賊がクローズアップされ、そのどちらもが素晴らしいの一言。老盗賊の鷺原の九平を演じる柄本明さんはもう、最高としか。飛んで駆けて魅せてくれる。そしてあの表情…。そして北村有起哉さんの網切の甚五郎の執拗さ、狂気も凄まじく、この二人の盗賊が血闘という作品を盛り上げたことは間違いない。

おまさの切なさと強さ、木村忠吾を演じる浅利陽介さんの軽妙な味わい、火野正平さん、本宮泰風さん、仙道敦子さんもとても世界観にあっててよかった。
そして、新たな鬼平の松本幸四郎さん、声が本当に叔父の吉右衛門さんに似ていて、ぐっとくる。若き銕を演じる染五郎さんの無頼な雰囲気もとてもよくて、またこのシリーズで銕三郎を見たい。

エンタメ作品としての完成度の高さに瞠目。ハマったキャスト、美しい絵、そして鬼平らしい飯テロさ。鬼平の世界を堪能できて大満足。リピートしたい。

ターコイズ