「ひりひり」ひらいて るる 移行さんの映画レビュー(感想・評価)
ひりひり
二人乗り、深夜の学校に侵入、もう戻ることのない高校時代。
みていてなんだか、ふわふわ、時にひやひやした。
日常に溶け込んでいるようなカメラワークがエモくてとてもいい
山田安奈ちゃん演じる予想外な行動を起こす気の強い破天荒な女の子が魅力的。強烈な片思いで気持ちが狂乱してる演技が凄い
相手の気持ちをコントロールしてたとえを自分のものにしようとする、手段を選ばない、愛ちゃんは怖い女すぎる。
好きな人の好きな人は(美雪)木村とは対照的で、おとなしくて気が弱そう。その時点で、もう、たとえのタイプではないということがわかる。
カラオケの愛ちゃんのこなれ感、と、家族以外とカラオケに来たことがないそわそわ慣れていない感じの美雪の対比がすごくてふたりの演技力の高さを感じた。
はじめて美雪の部屋に行ったシーンで、二人の間にアンジャッシュみたいな食い違いが起きてたのがめっちゃ面白い。その食い違いに気付いて、それを利用しちゃうのはこわいけど笑笑
ふたりの間に首を突っ込んできてわかったことは、相手を思い通りに動かそうとする自分と違って、お互い相手のために行動している、相手の気持ちを尊重しすぎているくらいにしている、ふたり。ふたりの邪魔ばかりしていた愛ちゃんだったけど、あの場(たとえの家のシーン)にいたからふたりは愛ちゃんの逞しさに救われた。見てる側もスカッとしたシーンだった。
最後の手紙。美雪人生何周してるんだレベルにいい子すぎて、自分勝手な自分を心から受け止めて、ひどいことをされてとしても
「一瞬でも心を開いてくれたんだとしたら、私はそれを忘れることができません」
この言葉で、愛ちゃんは心が突き動かされて居ても立っても居られず教室を飛び出す。それが恋心か人間としての好きなのかはわからないけど、心を開いてくれた、こと自体が素敵なことだと思った。
たとえが、愛ちゃんを嫌いな理由、「暴力的で、何でも思い通りにやってきて、自分のためならひとの気持ちなんて関係ない、なんでも奪っていい気持ちでいる。」
これって、たとえの父親と似てるなと思った。父親も「逃さない」っていってて、愛ちゃんも「逃さない」って言ってた(美雪のスマホでたとえを教室に呼び出したシーンで)。たとえの父親を見て自分に似たものを感じたのかもしれない。こんなに自分は傲慢に映っているのかと。シンプルにむかついたのもあるだろうけど、傲慢な自分自身をぶん殴ってやったとも捉えられるなとおもった。事実そのあとの行動を見ると、利己的な行動を取らなくなってるし、「思い悩む必要なんてないんじゃないかな、」とたとえに言ってる
愛ちゃんは、どこか人を見下していて、プライドが高い、だからかっこつけの殻で自分を守って、人に心を開けないんだと思う。そんな愛ちゃんは友達には囲まれてはいたけど、どこか人と人の間に、壁みたいなものを感じた。
愛ちゃんの奥底の部分は共感ができる、大切な人を作るためには心を開くことだ。
誰と出会うかで、人の感性や価値観は変わることもあるし、誰か一人でも自分の心を開ける人に出会えたらいい。
噛めば噛むほど味が出る映画だし、新たな発見がある。お気に入りの映画のひとつ。