劇場公開日 2021年10月22日

「そのアラーム音、目覚め悪くない?」ひらいて サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0そのアラーム音、目覚め悪くない?

2021年11月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

興奮

大好きな山田杏奈主演ということで鑑賞。
ドロドロした恋愛映画のようなので楽しみな反面、1本目に観た草の響きからのこれは重そうなので、少し覚悟して劇場へ。

いや、これヤバイ笑
予想以上にやってくれました。
山田杏奈が出ている映画でえぐいもの多くない?ミスミソウとか樹海村とか哀愁しんでれらとかさ。

頭が良く校内で人気者の愛(山田杏奈)。彼女は、クラスでは地味でいつも1人でいるたとえ(作間龍斗)に思いを寄せていたが、彼には持病を抱える陰気な少女・美雪(芋生悠)と密かに付き合っていた。

山田杏奈がえげつない。
ジオラマボーイ・パノラマガールでは未来に希望しか無い明るくて健気な少女を演じていたのに、本作では笑顔が全て嘘に見える恐ろしい少女になっていた。冒頭から怖すぎる。闇が深すぎるし目に光が無さすぎるし。すごい役者だ、この人は。あんなにも可愛いのにどうしてここまで出来るんだ...。

そんな山田杏奈が演じた主人公・愛。
自分に振り向いてくれさえすれば何だってやる。好意を寄せている男子を見つけると、自分が持っているゴミ箱を階段からぶちまける。好きで好きで仕方なくて、でも誰にも勘づかれないように気をつけていたけれど、我慢を知らない彼女は爆発してしまう。
今まで見てきた映画の主人公の中でも1番病んでるし1番自分勝手。それでもいくつか共感できる部分があるし、山田杏奈の好演もあってか非常に魅力的。なんとも不思議な主人公。個人的にはこの感情が読み取れず実際いたら近づきたくない愛というキャラクターがかなり好きで、「サマーフィルムにのって」のハダシの次に好きな映画の主人公となりました。

かなり狂ってる。何から何まで狂ってる。
ストーリーも展開も登場人物も主題歌も。
哀愁しんでれら×ミスミソウ×人間失格って感じ。
そもそも、手紙を奪い読んで好きな人が密かに付き合っていた彼女に近づき崩壊させるというストーリー、かなりえげつない笑 原作も読んでみたくなりました。
主題歌にもかなり驚いた。恋がしたい恋がしたい恋がしたい、最悪。ものすごいフレーズだこと。最初と最後全く同じセリフなのに激変。最悪と言った瞬間にパタンと終わったのがゾッとした。最高の終わり方だった。

この物語の登場人物は全員自分に酔っている。
そして、全員距離がある。
主人公と好きな人、主人公と友達、主人公と好きな人の彼女、主人公と親、主人公と先生。カップルもセフレも親子関係も、埋めることが出来ない隙間があってもどかしさと息苦しさを感じる。
こんな風にセリフとしては無いが関係性や登場人物に着目すると、自ずと伝えたいことが見えてくる。このような描きがとても丁寧で見やすく、鑑賞後も楽しい。鶴は平和の象徴。ひらいてというタイトルもラスト際で意味が理解できた気がしました。こりゃ面白い...。

ただ、見ごたえはあまり無い。
もっと色んな出来事欲しかったし、冒頭30分には疑問点が残るし、どうしても物足りなさを感じてしまった。登場人物に関する描きが不足しており、これはこれで悪くないんだけどちょっと雑さがみえた。

インパクトがちょっと弱い。
えげつないし、狂ってるんだけどせっかくの映画だからもっと大胆にド派手にやらないと映画映えしない。やってることエグいのになんか柔らかくて優しい雰囲気なんだよなぁ。

いやでも、ものすごい映画を見てしまいました。
色んな意味で素晴らしい本作。
山田杏奈好きにはたまらない一作でした。これ、リピートしたくなるなぁ。。。

サプライズ