「首藤凛の偏愛が滲む、純たる略奪と想定外の行方」ひらいて たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
首藤凛の偏愛が滲む、純たる略奪と想定外の行方
公開前からメンツに惹かれていたので、まあまあハードルは上。それもあってか、割と淡々としていたのが結構ギャップで思うより…ってなってしまった。
綿矢りさ作品と言えばやはり大九明子、みたいな所。しかし、今作は首藤凛監督たってのラブコールがそのまま濃縮還元されたような作品。彼女の監督作品は初めてだったのだが、これだけの展開を持ってしても冷静で平然を装うようなテンポ感に慄いた。だから、その事実をただ受け止めるので精一杯。何ならおかわりしてしっかり食べたい。笑
基本は三角関係だが、ワイルドピッチによるゲームチェンジが起こるのが面白いところ。あえて多くは語らず、その関係性をチラ見させる事に終始した宣伝部がなかなか憎い。蓋を開ければ、ピンクのグラデーションが効いた厄介なラブストーリーって感じ。キャラというより人の内面を見せられている気がするし、芋生悠が赤ずきんで山田杏奈がオオカミみたいな童話にすら思える。
そんな山田杏奈、確かに凄い。目の奥に小汚い感情が湧いているように思え、その渇きに驚く。手段を選ばない強欲さを持っているかと思えば、たとえも見え透いている事から、滑稽な姿が浮かんでくる。心の在処が常に定まらず、彷徨っている姿を見事に体現していて、同世代と比べても頭一つ出たと思えるほどの新境地に行ったと思う。
イヤミスではないからこその美しい着地。『夕立ダダダダダッ』は可愛らしさの中に未完な部分を兼ねている彼女たちを形容しているのかもしれない。そんな不思議な感覚のする映画。
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