劇場公開日 2021年10月22日

「違う映画のレビューみたいですが…」ひらいて グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0違う映画のレビューみたいですが…

2021年10月24日
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鑑賞方法:映画館

唐突ですが…

2019年9月23日、国連気候行動サミットにおけるグレタ・トゥーンベリ(当時16歳)さんの演説から一部引用します(執筆者:高橋李桂子さん)。

This is all wrong. I shouldn’t be up here. I should be back in school on the other side of the ocean. Yet you all come to us young people for hope? How dare you!

全てが間違っています。本来なら私は海の向こう側で、学校にいるべきなのです。それなのにまだ、あなたたちは私たちの元に来ている。若者に希望を見出そうと。よく、そんなことができますね。

You say you “hear” us and that you understand the urgency. But no matter how sad and angry I am, I don’t want to believe that. Because if you fully understood the situation and still kept on failing to act, then you would be evil. And I refuse to believe that.

あなたたちは言います。私たちの声は聞こえている、緊急性を理解していると。しかし、どんなに私が悲しくても、怒っていても、それを信じたくはないのです。もしあなたたちが本当に事態を把握していながら行動に移さないのであれば、それは悪でしかない。だから、私は信じません。

普通に考えれば、この映画と上記のグレタさんの発言が結びつくなんて思いつきもしないはずですが、グレタさんのドキュメンタリー映画を昨日見たばかりのせいか、なぜかダブってしまうのです。

共通すると感じたのは、『少女の一途な思いは、関わりのある誰かの行動に劇的な変化を与える強い力がある』ということです。

グレタさんについては、今更いうまでもありません。

木村愛の〝超〟がつくほどの自分本位な言動ですが、それは、友達を作ろうとしなかった美雪の心と身体を蕩かし(とろかすという表現が適切かどうか自信はないですが、私にはそう見えました)、たとえには生理的と言えるほどの嫌悪感を抱かせます。

けれども、愛が絡んでこなければ、たとえと美雪の未来への展望は今よりも閉じられたままだったはずです。冒頭の怒りに満ちたグレタの発言はそのまま、たとえの父親やそのことを把握していない教師たちにぶつけても違和感がありません。そのこれまで我慢してきた思いをたとえが表出させ、美雪との未来を具体的に描く選択肢(映画では描かれておらず、あくまでも鑑賞者の想像力に委ねられています)が生まれたとすれば、それはたとえが嫌悪する木村愛がもたらしたものです。

『最後の決闘裁判』には出てきませんが、百年戦争で有名なジャンヌ・ダルクも19歳で処刑されていることからすると、10代半ばの若さで、フランス軍に多大なる影響を与えたことになります。

10代の少女の一途な思いは、多くの敵を作ろうとも、確実に世界を変える力を持っている。

かなりのこじつけだと一応認識したうえで言いますが、強権的な国家ほど、そういう力の台頭が起こらないように、教育も社会規範も制御しているように思えてきます。

※原作未読ですが、木村家のスイーツ作りが得意な母と謎の父のキャラクターがどう描かれているのか、とても気になります。今度、近くの図書館に行って確認します。

※山田杏奈さんのあいみょん、めちゃくちゃ良かった‼️
もっと聞きたいです。

グレシャムの法則
Bacchusさんのコメント
2021年10月25日

愛はかなりの自分本位ではあったけれど、間違いなくとろかしていたし、結果として美雪が大人な切り替えさえ出来れば人生が変わりそうですよね。
少なくとも西村家とその後の言動は自分の為のものではなかったですし。

Bacchus
NOBUさんのコメント
2021年10月24日

今晩は。
 ”10代の少女の一途な思いは、多くの敵を作ろうとも、確実に世界を変える力を持っている。”
 私はグレタさんの映画は未鑑賞ですが(地元のミニシアターで鑑賞予定)仰る通りで、付け加えるならば”全ての人の”という言葉でしょうか。
 けれど、今作では、10代の少女ですね。
 鬱屈した思いからの、愛する男”たとえ君”の想いを遮る”たとえ君”の父に対しての右ストレートグーパンチ。
 私は原作未読ですが、今作を観て、満足してしまいました。では。

NOBU