戦慄せしめよ
劇場公開日:2022年1月28日
解説
気鋭の現代音楽家・日野浩志郎と、佐渡島の太鼓芸能集団「鼓童」とのコラボレーションを、映画監督の豊田利晃がとらえた映像作品。バンド「goat」および「bonanzas」のプレイヤー兼コンポーザー、ソロプロジェクト「YPY」などでマルチに活躍する日野浩志郎と、2021年に創立40周年を迎える「鼓童」。この両者のコラボレーションが、鼓童メンバーからの一通のメールがきっかけで実現した。日野と鼓動による延べ1カ月にも及ぶ制作期間を経て完成した楽曲群を、2020年12月の記録的な豪雪の中、制作の拠点となった鼓童村の稽古場をベースに、全編を佐渡島内で収録、撮影した。新型コロナウイルスの感染拡大が続く情勢下での新しい音楽体験を目指して製作され、セリフが一切なく、音と映像だけで語られる映像作品になっている。2021年2月5日からVimeoほか各映像配信プラットフォームで配信。
2021年製作/89分/日本
配給:豊田組
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2022年4月18日
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鑑賞方法:映画館
名古屋上映の監督舞台挨拶があった日に、センチュリーシネマで観てきました。
まず、この映画のタイトルからして、激烈なメッセージが込められてそうだった。
豊田利晃監督作品の流れからして、映画を観る前からもう何かわからないけど伝わってくるものがあった。
「これを語りて日本人を戦慄せしめよ。」
柳田国男は『遠野物語』の序文にこう記している。
なんと凄まじい響きを持つ言葉だろう。
明治43年(1910)に発表された当時の遠野ですら、自然と向き合って暮らしている山人と、里人の平地人のあいだで、日本の伝統的な価値観すべてがかけ離れてしまっていたということでしょう。
映画を一言でいえば、佐渡島を舞台に和太鼓集団の鼓童がミュージシャンの日野浩四郎とコラボした記録映画。
という単純なものでは、もちろんないのだが。
鼓童自らが豊田監督に撮影依頼をしたのがきっかけのようだ。
この両者の音を、監督がさらに料理して映像化したのだから、やはり豊田節が炸裂していた。
2020年の12月という、まさに世の中はコロナでパンデミックの真っ最中に、感染者ゼロの佐渡島で撮影された。
監督は、そんな和太鼓集団が長い歴史を持つ背景にある佐渡島に何かを感じ取り、それをどう表現するかという問いに、これは祈りだと思った、とういようなことを舞台挨拶でもいっていた。
だから、誰もが想像しやすい褌姿で普通に和太鼓を叩くシーンは全体的に見ればほとんどないくらい。
のっけから音の表現の仕方とか、まさに祈りを感じる音の世界観がすごかった。
いきなり宇宙のはじまりの、闇を感じるシーン。
まだ光がなかったころ、最初に門が開いて音が広がる感じ。
ガムランのような、はたまたレインスティックの甲高い粒々の雨音のような。
日野が指揮をし、鼓童のメンバーが木を叩く。
ある決まり事があり、あとはそれぞれのリズムで、一瞬ユニゾンのようで微妙にズレてるから揺らぎが生まれ、ものすごいエネルギーの倍音が響き渡る。
その演奏が心地よく、かなり長い時間つづく。
すごいと思った。
と、出だしだけ書いてみたけど、この後を含め、映画の感想や内容など、細かなことはもうどうでもいいと思うような映画だ。
とにかく、スクリーンに映し出される向こう側の映像とその音に、空間ごとこちら側の身を委ねるだけでいい。
過去作同様の絵作りで、わたしの感性とドンピシャ過ぎて嬉しくなり、どんなシーンも安心して見ることができる。
渋川さんが顔出しせずつけていた能面や、衣裳とか。
鳥居があって山の神社へつづく参道とか、冬の凄まじい瀧や、荒れ狂う波しぶきの岩場とか。
まだ行ったことのない佐渡の原風景が強烈だった。
映画の後、わたしがそのことを監督にきくと、ぜひ佐渡へ行ってみてくださいといわれた。
佐渡島は世阿弥が流刑となった場所。
キーワードがたくさんありすぎてまとめきれない。
ヤバすぎる。
まさに、平地人のわたしは戦慄せしめられたのだった。
冒頭より越島とあるものの脳裏に浮かぶある書籍の一節。世阿弥は鬼である。と言う記述。正にその様をまざまざと見せつけられたかのような音音音の連なり。本作のお陰で神仏の神代の時代の我が国の態度を見せてもらったような心持ちが得られた。血湧き肉躍る血管内部の沸々と沸き立つ血液の高まりを得られるドキュメント◎👹オンデコ=鼓童に賞賛👏
荒れ果てたお寺、滝、舞台など、重厚なロケーションに、太鼓の音が響き渡る。
太鼓の音は、時に軽やかに、時に地響きのように、空気を揺らす。
滝の音と、波の音が混ざり合う。
シネマート新宿のブーストサウンドで鑑賞。
ぜひ、劇場でご堪能ください。