Arc アークのレビュー・感想・評価
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生命を宿す芸術から永遠の命まで。その答えは
通して同じ話をしているが、前半と後半でアプローチが違う物語で、二部作が一つになったような構成だ。
前半は、死した肉体に生命を宿すように行うボディワークス編。
リナがこの仕事に関わっていく導入と、寺島しのぶ演じるエマの選択が物語の中心だ。
このパートで面白いなと思ったのが、生命を宿す動きがバレエや剣舞のようだったことだ。芸術というのは命の表現なのだとうっすら思った。言われてみれば、絵や彫刻なんかも「命が宿る」と言われたりする。
それをボディワークスと絡めたのはなかなか興味深い試みだと思った。
後半は一転して不死について。
前半にあったアーティスティックさは失われ、モノクロシーンが続く。
これは、もっと時間が進んだあとのリナの回想であったわけだ。
このモノクロのパートの間にリナが何を思ったのか、何を考えたのか、そしてその結論は?というのがメインだ。
結論から先に言ってしまえば、前半のエマと同じように、自分の息子と同じように、愛する人との滅びを選択する。
生と死は同じことだ。生なくして死はなく、生を受ければ死は100%訪れる。
死ななくなった世界の物語であるからこの理屈は通らないけれど、死を知らない世代と、死を克服しようとしていた世代では考え方も違うだろう。
愛する人と共に生き、自然と訪れる死を共に迎える。あっちへ行ったら逢えるなんてことは言いたくないけど、それに似た感覚を有するのは自然なことに思える。
「アーク」は弧である。弧は円ではないので始まりがあれば終わりがある。
生と死について、生きるとは「誰かと」であると、つまり「愛」についてのシンプルで面白いSF作品だった。
スタイリッシュに「不老不死」を描く
2021年。監督:脚本:編集:石川慶。
原作:ケン・リュウ(中国)はエグゼプティブ・プロデューサーも勤めました。
映像的も斬新ですし、物語も新鮮・独創的で面白かったです。
テーマは「不老不死」が手に入るようになった世界。
主人公のリナ(芳根京子)は17歳から100歳以上を、外見は30歳のままで生きて行きます。
前半はスタイリッシュで奇妙な映像のSFで、後半はリナの出産にまつわる過去が
ジワジワと侵食して来るヒューマンドラマにガラリと変換します。
(100分過ぎからのモノクロ撮影も見所のひとつでした)
(リナが自分の内面と向き合う様を表現したかったのでしょうか?)
あらすじ
近未来。17歳で出産したリナは子供と別れて放浪生活していました。
19歳の時、エマ(寺島しのぶ)に出会い、エマからボデイ・ワークスを作る仕事を学びます。
それは愛する人の遺体を生きたまま保存できる施術(プラステイネーション)をする会社。
その技術を更に進めたのがエマの弟・天音(岡田将生〕でした。
エタニティ社は「不老不死」の薬品開発に成功したのです。
そしてリナは遂にその「不老不死」の瀬術を受けた世界初の女性になるのです。
30歳の外見で永遠に生きられる・・・と言うことなのです。
リナが辿る人生の旅路。
老けないこと、死なないことは、果たしてそんなに素敵なことなのでしょうか?
そんな疑問も私の心に浮かんできました。
「不老不死」を選ばなかった人の人生にも重点を置いています。
決して非情なストーリーではない、温かみのある映画に仕上がっています。
シャマラン監督の「オールド」とは正反対の設定ですが、
「永遠の命」と「48倍速で老ける人生」
意味とその長さは違っても「生きる時間」を操作することは同じ。
前半と後半ではガラリと設定も場所も変わります。
日本人の「死生観」として、
「A rcアーク」の方が共感する点が多かったです。
施設のある島(小豆島など、)の景色も美しく、
妻を看取りながら、漁村で釣りをしたり、修理したり、
古いフィルムの写真機で人を撮ったりして過ごすリヒト(小林薫)の生き方。
変わらないものではなく、変化するものの価値を・・・彼は知っていました。
芳根京子も振り幅の大きい難役を立派にこなしていました。
リナのラストの決断も、私は良かったと思います。
生きるとはなんなのか
芳根京子さんのお芝居がとにかく素晴らしい。
人は老けずにいつまでも長生きしたいと思う人が多いのかもしれないけど、大事な人を失ってまで生きている意味はあるのだろうか、命に限りがあるから懸命に生きようと思えるのではないかと考えさせられる作品でした。
不老不死と死生観
不老不死の世界が当たり前になった近未来の世界が舞台。
世の中どうなってしまうんだろうという
恐怖に近い好奇心が揺さぶられると思いきや
物語の主軸は主人公の女性の成長を描いたヒューマンドラマだった。
冒頭の近未来の世界から作中で100年近く経過するのだが、
未来を上手に描いている。
洋画の近未来SFのようなあからさまな描き方ではなく、邦画らしい良さが出ていたと感じた。
死生観について改めて考えさせられつつ、
主人公におこる不思議な巡り合わせの数々から
よかったな、感動するなぁと思えるシーンも散りばめられていて、満足度は高かったです。
和製『メッセージ』とでも言うべき、ケン・リュウ原作の素敵な邦画SF
よかった!本作は邦画SFを予算的無理のない計算で上手く成立させていると感じた。その大きな要因が、バキッと決まったルックとSF的ガジェットを描き過ぎないミニマルさと考える。現実と違うと一目でわかる緑のハンバーガーなどは興醒めするくらいである。(ただ、「食」を描くことも本作では必要不可欠と思う)
映画は社会からドロップアウトしたリナ(芳根京子)がエマ(寺島しのぶ)の導きを受けてとある仕事に就く前半と、不老不死となったリナが娘と過ごしながら自らの死期を悟った夫婦と触れ合う後半に分かれる。
印象に残ったセリフに、後半のシーン、小舟で生き別れになった自分の子とリナが対話するところがある。自身の母への思いから始まり生い立ちを語るリナの子が「あんたもそろそろ自分の人生を生きるときだ。母さん。」と言う。印象に残った演出に「リナが手で何かを触れること」がある。赤ん坊に触れる、死体に触れる、天音に触れられる。彼女は「何かに触ることが好きだった」と語る。
本作では、始まりから終わりまで濃密に「生」と「死」が描かれている。生まれる赤ん坊の画から始まって、プラスティネーションの死体達、老いる老人、死んだ赤子。そして不老不死が実現したリナは「死が無くなった人間において生きること」を問いかける。
これは凄く深い問いだと思いました。未だに自分の中に答えは無いけど、映画ではリナは一つの答えを出す。これが凄く感動的、というか不完全な人間の肯定だと思うのです。
何かに触れることが好きだった彼女は、映画の最後に空を掴むようにして何かに触れる。オープニングとの対比として描かれるこの描写。
私の解釈にはなりますが、それは彼女自身の人生であり、生きることそのものを掴み、理解し、取り戻したのだ。それを得るために人生に始まりと終わりが必要であって、そのひと続きの人生が積み重なって人間社会や食物連鎖、もしかすると輪廻転生といった大きな円が形作られる。Arc(円弧)というタイトルを思い出して噛み締めたくなる。
物語の起伏をもってつまらないと感じる方がいるのも分かります。ただし、私個人としては本作は大満足ですし、自分だったらどんな選択をするかと考えることが凄く楽しい作品でした。
蛇足
こういう「生」や「命の循環」を描く作品では生のメタファーとして「性」描写がよく出てくるし、その必然性もよく分かる。とりわけ性的な臭いをよく感じたのが冒頭のダンスシークエンスだったけど、本作に濡れ場は無かった。この作品には性描写はあった方が良くなるのでしょうか。
テーマが難解で深い
ポーランドで映画作りを学んだ不思議な魅力がある石川慶監督作品。最新作を楽しみにしていました。
バディを組む撮影監督ピオトル氏の個性が作品を創り上げているのかもしれません。
蜜蜂と遠雷の映像を思い起こすようなちょっと不思議な映像体験ができました。
SF作家ケン・リュウの短編小説は未読。近々読みたい。
芳根京子さん主演で映画化ということで定評のある演技力が見られます。
プラス 芳根ちゃんが神々しく美しい!
遠くない未来の話…リナという女性の数奇な運命が描かれる本作。
私だったらどちらを望むのだろう?と問いかけられた。
リナが出会った姉弟それぞれの死生観。
姉は最愛の人を亡くして遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術する「ボディワークス」を確立。
弟は美しいまま生きる不老不死の研究を進める天才科学者。
そして30歳になったリナが選んだのは不老不死の処置。
人類史上初の永遠の命を得た女性となるけれど…やっぱり来たきた予想外の展開が。
できるなら、ずっと若くて綺麗なままいたい。
でもニナみたいに愛する人たち…自分の息子や親友が自分より先に老いて先に亡くなったら?と考えると不老不死ってやはり虚無感ありますね。
何百年もローンを払い続けるのも嫌だし。
なんか自然の摂理に反する行為とも思う。
不老不死が当たり前となった世界は人類を二分化して混乱と変化をもたらしていく。
死ぬ人がいなくなれば人口が増えて食糧難に陥る。
リナが選んだ結末は私には正解に思えた。
エマ役寺島しのぶさん、天音役の岡田将生さん、倍賞千恵子、風吹ジュンさん、小林薫さん、清水くるみさん…俳優陣が素晴らしかった。
私は楽しめました。
いいテーマだけど
脚本のせいもあり、少し集中して映画を観ていられなかった。
日本はこの手のSF要素がでてきたら急に舞台調な過剰な演技をしだすのが気になった。俳優さんたちの演技がいつもよりもかなり大袈裟なぶぶんもあり、キツかった。
音楽は良かったし、映像もやはり綺麗だけど、何かうまく噛み合っていない。
89歳はモノクローム。色をつけてくれ
2021年映画館鑑賞63作品目
7月11日(日)MOVIX仙台
原作未読
芳根京子演じるリサが不老不死の体を手に入れる話
19歳のリサはさえないダンサー
あやしげなクラブであやしげなダンスを披露
追い出されたところを寺島しのぶ演じるエマにスカウトされる
人体の不思議展のような技術で死体を保存する職場に転職
エマは弟天音によって理事を解任され30歳のリサは職場の中心的人物に
天音にプロポーズされるともに不老不死の体を手に入れることに
しかし天音は遺伝子異常で不老不死は叶わずかえって急速に老化し早死にすることに
半世紀以上悩んだ末に冷凍保存しておいた天音の精子を使いハルを出産
5歳のハルの母親リサは89歳になっても30歳の若さのまま
リサが営む老人ホームに小林薫風吹ジュン演じる老夫婦がやってくる
年老いた老人はリサが若い頃に愛することができず出産直後に見捨てた自分の息子だった
なんやかんやで不老不死をやめた135歳のリサはよく見たら寅さんの妹さくらで有名な倍賞千恵子
孫は芳根京子でハルは中村ゆりになっていた
エマと天音の年齢差
ハルが初期のしんちゃんのように母親を名前で呼ぶこと
不老不死を諦めた決断理由
いろいろと謎は多いがそれは見る側のご想像に任せる形かな
難解な内容だ
タイムスリップと違い不老不死はテーマが悪いのか作品そのもののテンポが悪い
眠くなるのも無理はないし高評価する人がいてもおかしくない
安易に駄作と切り捨てるわけにはいかず評価は難しい
ダンスやプラスティネーションの部分は大胆にカットしても良かったのではないか
芳根京子の若さには価値がある
とてもキュートだ
風吹ジュンや倍賞千恵子の年齢で役者の仕事があるかどうかは彼女次第だろう
悪くない
芳根京子さんの演技が好きなので観に行きました。
どういう話なのかどうやって終わる話なのか考えながら観ていたので、特に眠くもならず、あとはただただ芳根京子の演技と造形美、岡田将生の造形美に感動してました。(人前に出る仕事をしてくれてありがとう)
たしかに長いなとは思いましたが、リナの135年を考えるとこれくらい長くていいでしょう。後半の30歳からみせられても、私はリナという人物を理解できないなと思ったので問題ないです。
不気味な世界が当たり前であることを1時間ほどやってくれたので不老不死もわりとすんなり受け入れられました。
また、135歳までリナの見た目が全く変わらないので、89〜90歳以降モノクロ画面になるのは、映像の時系列が混ざった時にわかりやすくてよかったです。
私的に、この映画を観た後に思ったのは、人間が不老不死の選択肢を得たとしても案外世界は変わらないのでは?ということです。
だとすると、衣食住が昔(リナ19歳)と今(リナ90歳)でほぼ変化がないのは良い魅せ方だなと思います。
ちなみに、後半で島の外の状況が全く分からなかったのですが、あくまでリナの話なので。
一部の人はそういう近未来での文化や技術変化も見たいそうなので(変わらないわけがないという先入観なのかしら)、そういうことを楽しみたい方には全くおすすめ出来ません。どうかハリウッド作品を観てください。
まぁただ単に予算がなかっただけかもしれませんけどね。
原作未読 せっかくコンセプトは面白いのに色々ツッコミどころが箱詰め...
原作未読
せっかくコンセプトは面白いのに色々ツッコミどころが箱詰めになってて没頭感がサッパリ・・・
もっと激しいストーリー、非道いシークエンスとかがあればそのアラも忘れるのに。
もうちょっとコンパクトにならんか
原作読了済。映画「メッセージ」を見た後、原作者テッド・チャンを漁った時に、ハヤカワ文庫のセレクト集でケン・リュウを知った。この2人、何となく雰囲気が似てる。現時点でSF界の最高峰に位置する作家たちだそうである。そのケン・リュウが"エグゼクティブプロデューサー"だというので、期待していたんだけど…。名前だけなのかな。
ストーリーは割と原作にそっている。原作は短編なので、そのまま映画にすれば90分以内で終わると思う。しかし127分になった。感覚的に長い。途中で飽きてきた。原作からプラスした部分が、どうも間延びさせている原因な気がする。
不老不死の処置を受けられない人のために、島に施設を作る。施設はきれいだけど、島内の家や街並は昭和を感じる。古い漁船の燃料は、この時代でもあるのだろうか。ネガフィルムのカメラに、モノクロ手焼きプリント。あまり未来感がないなぁ。
ロケ地・小豆島の風景はモノクロでもきれいだった。俳優の演技は良かったが、見た目が若くて精神は円熟というのは、やはりわからなかった。あと、不老不死によって起こる世界の変容も、突っ込んで描かれておらず、ラジオ放送で説明されるのみ。材料を与えられて、自分で考えてということかな。何というか、話を詰め込んでみたけど表面なぞるだけで終わった感じで、全体的にコンパクトにまとめた方が、自分には合っていたと思う。
そうかなぁ
不老と不死は違う。
いつまでも若々しく死が訪れないということは、永遠に自分を“生かし”続ける責任を負う。そんなの嫌だ。疲れるし、飽きる。全然楽しそうなイメージが湧かない。いつでもできると思ったら前向きに生きなさそうだし。劇中でも自殺者激増と言ってたのはそういうことかな。
不老ってそんなに全員が望むことなのかな?
旧人類だからそう思うのかな。でも入れ替わりの過渡期の社会の混乱を新旧人類は乗り越えることができるのだろうか?
みんな何歳くらいで老化ストップしたいのかな。肉体的成長が止まるのっていくつくらい?
世の中、その年齢以下の容姿の人だらけになり、それより上のいわゆるオジサンオバサン爺婆の姿は存在しなくなるってことだよね。
以外ネタバレ?
作中、なぜ夫(小林薫)は不老措置をしないのか?と周りがやたら不思議がっていた。
愛する妻が老いて死んでいくとわかっているのに、それを自分だけ若い容姿のまま見守り、最期を看取るなんて耐えられるか?
連れ合いが老いていくなら、一緒に歩んでいきたいに決まってるだろう。
そこだけすごく違和感があった。あなた達そのくらいの想像力もないの?その程度の感性で不老措置の選択なんてできるの?と。
不老不死
もし、不老不死になれたら、なったとしたら、どうなるのだろう。
映画の最後の方に描かれたように、若い人は無条件に不老不死を選択する一方、一定程度年齢がいった人は、限りある命を選択するのだろうな、と思いました。
何か、小学生は「夏休みが一生続けば良いのに」と思う一方、大人が「一生続くと何もしなくなる上、ありがたみも忘れる」ということを悟っているように感じました。
メインのテーマには考えさせられるところがありましたが、「オープニングのあの踊りは何?」「父親は誰?」などと、理解が出来ない面もありました。
なお、芳根京子が、松岡茉優やベッキーに見えたりしました(私だけ??)
芳根京子に盛大な拍手
全体を通して言えることは、キャスティングの良さと、俳優の皆様の演技力だった。演技はで知られる芳根京子さんは今回も素晴らしい位の熱演だったと思う。特に、今作ではさまざまな年代の役を演じられていることもあり、相変わらずの演技力に息を飲んだ。
問題としては脚本であると思う。無駄な部分がおおく、ただダラダラと長いような気がしてしまった。永遠の命に対する反発に関しての、登場の短さ、それを多くの記者からの罵倒で養っているような気がして安っぽく感じた。やはりデモ的な要素は民衆の声として必要なものなのではないかと感じた。
また、終盤の小林薫さんと風吹ジュンさんの掛け合い脚本、演出に関しては良かったのではないかと思う。私は20代で1人ではあるが、あの二人のような歳の取り方をしてみたいものだと思った。
はじめの演出でグッと引き込まれた。 ダンサーの仕草や表情、続く芳根...
はじめの演出でグッと引き込まれた。
ダンサーの仕草や表情、続く芳根京子の仕草と表情。
何で足元に砂?って思ったけど、最後も砂浜のシーンだったから、リンクしてたのかなぁ。あんまりよくわからなかったけど、、
そこからしばらく、とにかく絵がキレイだし、雰囲気が好きだな〜って思いながら見てた。
動きを固定するとこの寺島しのぶの動きかっこよかったなぁ
で、後半。
画面に映る平均年齢がグッと上がるしモノクロだしでどうしても華やかさに欠けてしまうし、ゆったりするんだけど
名だたる名優たちの演技でまた違った良い時間。
しかもいろんな繋がりがわかってきたり、見た目年齢と役の実年齢があべこべなので頭の中が忙しいのでそこまで退屈はしない(とはいえもう少し短くてよかったかも)
30歳で薬打って70歳くらいで長生きやっぱしなくていいやーって薬やめたら急に老け込むのかな?
長生きはしたくないけど若い時間が増えるのはいいなー
覚書として
私自身、いいことも悪いことも忘れるからこそ、遅かれ早かれ人は死ぬからこそ、だからこそ生きていけると思ってるので不老不死を願う人がいること自体信じられないのですが。
さて果たしてそうなった世界はどうなるんだろうと観てみたら、出生率の低下、自殺者の増加などなど、なるほど。
コンテンポラリーな作品ですが、掘り下げがうまくて飲み込みやすく分かりやすいです。
日本での、香川県の島々での撮影だそうで、個人的に馴染み深い瀬戸内の海の色が画面いっぱい広がってるのに、画面の色は硬質で日本じゃないみたい。
途中モノクロにもなりますが、濃淡が美しい。
色や光の美しい映像です。
見所は多いが、中途半端
原作未読。
がっつりSFというのではなく、レトロフューチャー的。「わたしを離さないで」や「リトルジョー」「ビバリウム」みたいなのを狙ってたのかな。
雰囲気のある画面と静かな音楽。前半は死体を新しい剥製?にする会社の話で、結構エグいシーンも。
前半はカメラのせいか、画面が暗くて荒い(邦画でよく見る)。奥行きもあまりなくて、せっかくの雰囲気のある建物も安っぽく見えるのがもったいない。しかし、モノクロのシーンは美しい。全編モノクロで良かったのに
その会社の代表エマ(寺島しのぶ)が引退し、跡を継いだ弟アマネ(岡田将生)はずっと不老不死の技術を研究開発していたが、ついに実用化される。老化しない人と今まで通りの人に世界は二分される。
こういうスパンの長いストーリーは話を進めるだけで手一杯になりがちだが、この作品も登場人物それぞれの葛藤を描くことはなくただただ流れていく(とはいえ、寺島しのぶは、死体を物と言いながら、自分のパートナーには執着し思い通りにならないアンビバレンツを短いシーンで表現してる)
ヒロインに関しても十分描かれているとは言えず、ただ周りの人に引っ張られて流されるだけに見える。
昔産み捨てた我が子との再会も、夫に「その子の名前も知らない」と言ってたのに、実は自分の両親が育てていたらしいことが示唆され(じゃ、知らない訳なかったんじゃ…)と見ててずっこける。だから、捨てた子に対する後悔とか執着とかもなかったのでは?と思ってしまうのだ。ヒロインにとって「生きる意味」ってなんなんだ?
なにより、不老不死の処置を受けたら「死ねなくなる」のかと思ってたのに、老いることも死ぬことも選べたのか!と。だったらあえてその処置を受けないことの意味が軽くなっちゃうよなあ。
生と死の意味についてがテーマだったのかもしれないけど、消化しきれなかったという印象。
長編映画にする意味がないなら無理しなくても
序盤が面白くないの。
2シーン目ぐらいで主人公が海辺にいて、少しザラツイた感じの映像で、カメラも少し揺れるのね。「主人公の心象表現なんだな」と思うんだけど、陳腐な感じがして「この映画つまらなそうだな」と思っちゃうの。
それから退廃的な盛り場みたいなところで、「どうして退廃的な盛り場では前衛的なダンスが行われるんだろう」っていうステレオタイプがくるのね。寺山修司の頃の演劇っぽい。
そこで芳根京子が才能を発揮して寺島しのぶに認められるんだけど「え、それで認められんの?」っていう良く解らないダンス。
それでボディ=ワークス社に入ってプラスティネーションやることになるんだけど、主人公が死体に接する様子とかなんか訳分からない描写が入ってくるのね。
あと建物も服装も1960-70年代で統一してるんだけど意味あんのかな。香川県が協力だから、ロケ地が香川県庁舎なんだよね。前の東京五輪のころ活躍した丹下健三建築。この一点で、前衛的なダンスも含めて、時代感を1960-70年代にした気もするんだけど、効果ない気がしたな。
それで寺島しのぶが死体にポーズをつけると『天才だ!』って感じになってるんだけど、ただ下むいてた顔を上に向けて、手をさしのばしただけだからね。無理あるよ。
そのうち寺島しのぶが死んで、物語が次のフェーズに進むんだけど、そこまでが面白くないのね。それで映画に対する興味が完全に消えちゃうの。「早く終わらないかな、この映画」って感じで義務感で観ちゃうのね。寺島しのぶパートは回想形式でも良かったのに。
しかも、そこまでして描いた寺島しのぶパートが後半に効くかというと、ほぼ効かなくて、なんなら寺島しのぶパートなくて映画は成立するの。なくした方がいいよ、絶対。尺の問題あるだろうけど。
でも、寺島しのぶに出演してもらって、そのパートを全カットするって無理だから、編集段階で気付いてもできなかったろうな。
その後は「不老不死になったら人間はどうなるか?」っていうテーマで、だいたい想定の範囲内で話は終わり。
プラスティネーションで死体を永久保存にすることによる永遠と、不老不死を手にしたことによる永遠でなんか対比があるんだろうと思ったら、特になかったの。
50頁程度の短編作品を2時間の映画にするっていう大変さに挑んだ石川慶監督に敬意は払うし、時系列いじらずに順番に語る構成にしたのもある意味すごいと思ったな。
でも、そういうの抜いて作品として観ると、序盤のもたつきで後半が活きなかったかな。
映像とキャストは魅力的だが…
映像の見せ方や芳根京子の演技(特に表情)は、非常に魅力的。
他のキャストも演技達者な人が多く、ポイント2点。
しかし、話の展開が唐突で、説得力がなさ過ぎる。
なぜリナが子どもや故郷を捨てて流離う踊り子になったのか、
プラスティネーションの道に入るに至った動機も含めてわからない。
この部分が描かれていないので、息子との再会や最後の選択が生きていない。
さらに不老不死の技術が完成してからの未来の描き方も雑だ。
脚本のお粗末さで、せっかくの映像美が台無しの作品になったと思う。
人体の不思議展
死体と遊ぶな子供たち(1972米)という映画を思い出しました
捨て子がジジイになって逢いにくるホラー映画という法螺
パペットショーから突然キャストが入れ替わるマジックショー
脳髄をプラスティネーションしちゃうぞ
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