「生命を宿す芸術から永遠の命まで。その答えは」Arc アーク つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
生命を宿す芸術から永遠の命まで。その答えは
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通して同じ話をしているが、前半と後半でアプローチが違う物語で、二部作が一つになったような構成だ。
前半は、死した肉体に生命を宿すように行うボディワークス編。
リナがこの仕事に関わっていく導入と、寺島しのぶ演じるエマの選択が物語の中心だ。
このパートで面白いなと思ったのが、生命を宿す動きがバレエや剣舞のようだったことだ。芸術というのは命の表現なのだとうっすら思った。言われてみれば、絵や彫刻なんかも「命が宿る」と言われたりする。
それをボディワークスと絡めたのはなかなか興味深い試みだと思った。
後半は一転して不死について。
前半にあったアーティスティックさは失われ、モノクロシーンが続く。
これは、もっと時間が進んだあとのリナの回想であったわけだ。
このモノクロのパートの間にリナが何を思ったのか、何を考えたのか、そしてその結論は?というのがメインだ。
結論から先に言ってしまえば、前半のエマと同じように、自分の息子と同じように、愛する人との滅びを選択する。
生と死は同じことだ。生なくして死はなく、生を受ければ死は100%訪れる。
死ななくなった世界の物語であるからこの理屈は通らないけれど、死を知らない世代と、死を克服しようとしていた世代では考え方も違うだろう。
愛する人と共に生き、自然と訪れる死を共に迎える。あっちへ行ったら逢えるなんてことは言いたくないけど、それに似た感覚を有するのは自然なことに思える。
「アーク」は弧である。弧は円ではないので始まりがあれば終わりがある。
生と死について、生きるとは「誰かと」であると、つまり「愛」についてのシンプルで面白いSF作品だった。
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