「スタイリッシュに「不老不死」を描く」Arc アーク 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
スタイリッシュに「不老不死」を描く
2021年。監督:脚本:編集:石川慶。
原作:ケン・リュウ(中国)はエグゼプティブ・プロデューサーも勤めました。
映像的も斬新ですし、物語も新鮮・独創的で面白かったです。
テーマは「不老不死」が手に入るようになった世界。
主人公のリナ(芳根京子)は17歳から100歳以上を、外見は30歳のままで生きて行きます。
前半はスタイリッシュで奇妙な映像のSFで、後半はリナの出産にまつわる過去が
ジワジワと侵食して来るヒューマンドラマにガラリと変換します。
(100分過ぎからのモノクロ撮影も見所のひとつでした)
(リナが自分の内面と向き合う様を表現したかったのでしょうか?)
あらすじ
近未来。17歳で出産したリナは子供と別れて放浪生活していました。
19歳の時、エマ(寺島しのぶ)に出会い、エマからボデイ・ワークスを作る仕事を学びます。
それは愛する人の遺体を生きたまま保存できる施術(プラステイネーション)をする会社。
その技術を更に進めたのがエマの弟・天音(岡田将生〕でした。
エタニティ社は「不老不死」の薬品開発に成功したのです。
そしてリナは遂にその「不老不死」の瀬術を受けた世界初の女性になるのです。
30歳の外見で永遠に生きられる・・・と言うことなのです。
リナが辿る人生の旅路。
老けないこと、死なないことは、果たしてそんなに素敵なことなのでしょうか?
そんな疑問も私の心に浮かんできました。
「不老不死」を選ばなかった人の人生にも重点を置いています。
決して非情なストーリーではない、温かみのある映画に仕上がっています。
シャマラン監督の「オールド」とは正反対の設定ですが、
「永遠の命」と「48倍速で老ける人生」
意味とその長さは違っても「生きる時間」を操作することは同じ。
前半と後半ではガラリと設定も場所も変わります。
日本人の「死生観」として、
「A rcアーク」の方が共感する点が多かったです。
施設のある島(小豆島など、)の景色も美しく、
妻を看取りながら、漁村で釣りをしたり、修理したり、
古いフィルムの写真機で人を撮ったりして過ごすリヒト(小林薫)の生き方。
変わらないものではなく、変化するものの価値を・・・彼は知っていました。
芳根京子も振り幅の大きい難役を立派にこなしていました。
リナのラストの決断も、私は良かったと思います。