「夫々ネガティブな印象の続く子どもたちがポジティブに動こうする瞬間が集成される」14歳の栞 てつさんの映画レビュー(感想・評価)
夫々ネガティブな印象の続く子どもたちがポジティブに動こうする瞬間が集成される
「35人、全員密着」で、「劇的な主人公もいなければ、大きなどんでん返しもありません。それなのに、なぜか目が離せない」という評があっても、あまり観る気にはならなかった。今回、再再再再上映ということで、それほど好評なのなら観ておこうという気になった。
冒頭に、馬の親子の映像がしばらく続き、劇場を間違えたかと不安になったが、字幕が渡された注意書きと同じだったので、辛抱した。やがて、子馬も大人の仲間入りをする、ということになっていく。イルカ氏の名曲、『冬の馬』のように、生まれて直ぐに自分で強く生きていかなければいけない、というわけでは、必ずしもないようである。
本題にはいって、35人一人ひとりが順番に取り上げられていくが、境目がわかり難く、よく話す子が、別の子の評価にも出てきて、本人はあまり話さずに終わったり、結論なく中途半端で終わったりして、訳がわからず、不満が続く。
車いすの子が現れて、何か特徴をもたせるのかと期待すると、そうでもない。担任教師への評価もネガティブである。
終盤になって、みんなに気配りのできる子が出てきて、序盤に出たサッカーの好きな子の結末を回収する映像が出てきたりする。次に、不登校になった子に対して思っていることを言う複数の子の姿が続き、輪郭が浮かび上がる。学級最後の記念撮影の日に出てくることを呼びかけて期待をもたせるが、やはりその子は現れない。担任教師は、子どもたちから疎まれながらも、子どもたちを信頼し、期待している、という言葉を発する。それまで、夫々ネガティブな終わり方でしか描かれなかった子どもたちが、ポジティブに動こうする瞬間が集成され、色々な問題を抱えていても、全体として前向きに進もうとする可能性を感じることはできた。注意書きには、ネガティブな感想は遠慮するように、とあるが、出演した子どもに対する感想ではなく、作品に対するもので、かつ少しはポジティブな感想も加えたつもりである。
映画『満月、世界』『小学校』『型破りな教室』のように、現場または実話に取材し、ドラマチックな展開や特定の子どもに焦点を集めていないので、散漫な印象ではあるけれども、悪いところばかりではない。ただ、「私たちが一度立ち止まり、いつでもあの頃の気持ちに立ち返」り、「どこか自分と重なってしまう」という思いをもつことはなかった。現在自分が生きている関係性のなかで、昔よりもできるようになったこともあれば、依然としてできないままであることも多いために、それほど余裕がないからだ。