「リメイクとか以前に単純につまらん」CUBE 一度入ったら、最後 N Tさんの映画レビュー(感想・評価)
リメイクとか以前に単純につまらん
全体的に辛口のレビューが目立つようですが、まぁ妥当な評価でしょう。オリジナル版の「CUBE」は低予算ながら、独特の映像とショッキングな内容、巧みな展開で多くのファンを獲得した名作でしたが、どうやら本作はオリジナル版の「低予算」の部分だけを受け継いでしまったようです。
まず、リメイクとしてではなく、この作品を単体で評価すると、「安っぽい」「意味不明」の2点になります。映像的には主人公たちが閉じ込められている立方体内のみで物語が展開しますが、同じような角度で固定されたアングルが多いので、セット感が強く安っぽい。もっとカメラアングルを工夫して立体感を出してほしかった。ストーリーについても結局「謎は謎のまま」の投げっぱなしで、伏線回収もなし。途中にある主人公の過去のトラウマ関連の展開についても意味不明で「は?」としか言えませんでした。
また、こういったソリッド・シチュエーションものでは、どれだけ細かい部分にリアリティを持たせられるかが観客を引き込むポイントだと思うんですが、①長時間閉じ込められて動き続けているのに髪の毛がサラサラ。②結構な運動量なのに汗一つかいていない。服に汗染み一つなし。③空腹、尿意、便意なし。④胴体に大穴が開いているのに出血なし。これではダメでしょう。
次にリメイク作品としてオリジナルとの比較ですが、まず画面(部屋)が明るすぎる。オリジナル版では、絶妙な照明が立方体の無機質な不気味さを表現していましたが、本作では全体的に部屋が明るすぎるせいか、オリジナルの息が詰まるような嫌~な空気間が薄れてしまっています。また、CUBEといえば工夫を凝らしたトラップが醍醐味ですが、これも独創性がなくイマイチでしたね。あと、部屋が意思を持っている(人物の感情に応じて色が変わったり、都合よくトラップが発動したり)ような演出がありますが、そんなのいらないです。立方体はただただ無機質に定められたルール通りに動いているからこそ人間ドラマが面白くなるんですよ。リメイクなりのオリジナリティを出したかったんでしょうが、余計なことはしなくて結構。
登場人物にしても、オリジナルでは、体力系、冷静系、知能系、何かを知ってる系とそれぞれに特徴があり、それぞれが得意分野で協力しあうことで謎を解いていく面白さがありましたが、本作では主人公たちのキャラ付けや関連性が薄くてつまらない。黒幕っぽい人も登場時点から露骨に怪しすぎるし。
本作の制作には、原作者も参加しているそうですが、本当にこれでよかったんでしょうか?
本作は、有名作品の名前を借りて人気俳優を集めただけで、面白い作品を作ろうという気概が残念ながら感じられませんでした。もし、この作品がリメイクでなくオリジナルだったとしても、数十年も語られる作品になることはなかったでしょう。オリジナル版が公開されて20年以上経っているにも関わらず、何一つオリジナルを超えられていないことにリメイクの難しさを感じました。