「邦画特有の「わざとらしさ」が萎える残念リメイク」CUBE 一度入ったら、最後 AR15さんの映画レビュー(感想・評価)
邦画特有の「わざとらしさ」が萎える残念リメイク
「CUBE」は原作、2、ZEROと鑑賞済みで、今回日本版でリメイクされると聞いて期待半分・不安半分で映画館に足を運んだ。
もともと原作が素晴らしすぎたので、まず原作越えは無いだろうと予想しつつも、日本映画らしい良アレンジがあれば良いと思っていた。
しかし結果、日本映画の悪い部分ばかりが目立つ残念リメイクであった。
・キャラクターが安っぽい
原作では、閉じ込められた人間たちが最初は協調し合うも、徐々に狂気に呑まれて殺し合いに発展していく恐怖の重圧が凄まじかった。
また、一番主人公らしい人物が悪党に変わったり、頼もしい脱獄のプロが一瞬で死んだり、頼りない風に見えていた人物が重大な秘密や技能を持っていたと、キャラクターの顛末が予測不能なのが作品に大きな深みを持たせていた。
だが本作では、最初から険悪な奴らが案の定殺し合ったり、謎めいた雰囲気を出す人物がそのまま黒幕だったり、子供はやっぱり子供のままだったりと、あまりにキャラが台本通りすぎて驚きが皆無。
なので、誰が生き残るかどころか、誰がどういう役割を果たすかまですぐに見透かすことができ、ただキャラが決まった筋書きの上を走らされている感が顕著。
役者の演技力と個性は素晴らしいが、それがかえってわざとらしいフィクション感を強めてしまっている。
・ストーリーの流れが雑
キャラがわざとらしければ、ストーリーまでわざとらしい展開の連発。
「トラップ」によって強引に筋書き通りにキャラを動かしている感があり、非常に脚本がチープ。
例)
人の感情によって照明の色が変わる仕掛け ⇒シリアスなシーンは勝手に照明が赤くなるので「怖さ」が出る
過去のトラウマを映像化して精神的に追い込むトラップ ⇒極めて強引に主人公の過去が他人に明かされる展開に
グループを分断するトラップ ⇒仲が悪い方の奴らが案の定殺し合う展開に
誰かが書き残した建物の設計図を発見 ⇒都合よく謎が解明される
原作だと極めて自然に物語が運ばれていったのに対し、本作はトラップありきで強引に話が進む。
特に、部屋の色の感情連動システムは映画として便利すぎるだろと思ってしまった。
・残酷描写が非常に薄い
原作では、第一の犠牲者がサイコロステーキ化する衝撃的な開幕で、そこからも酸で顔面崩壊したり、移動する部屋の間に挟まれて真っ二つになったりとインパクトあるトラップや死にざまが目白押しだったが、本作は対象年齢の都合か、非常に残酷描写がマイルド。
絵面はCGを駆使しているので綺麗だが、死に方自体はレーザーで胸を一発貫かれて即死など、かなりあっさりで恐怖が全然伝わってこない。
特に、最初の犠牲者の死に方の改変が許しがたい。
クッキーの型抜きのような装置で胸の部分を四角くズコンッと抜かれて死ぬという、恐怖どころかギャグ一歩手前な死に方に変更されている。
・星野源の主題歌が合わなさすぎる
星野源の楽曲は好きだが、エンディングの展開と、陽気な曲調が全くあっていない。
本当に予告編の場違いな雰囲気そのままで、物語から完全に浮いている。
話題性重視で星野源を起用したのが見え見えで、しらけ気味だった気分をさらに落ち込ませてくれる。
(まとめ)
CUBEは大好きな映画だっただけに、とにかく文句ばかり浮かんでしまう出来だった。
否定的評価が多かったCUBE2やZEROを下回る完成度に思う。
邦画らしい「わざとらしさ」が全て悪い方向に作用してしまった残念リメイクであった。
韓国発のデスゲームドラマ『イカゲーム』が世界的に好評を博している矢先、「デスゲーム先進国」の日本がこんな粗末な劣化リメイクを発表していては、もう世界に対抗できるわけがないなと考えさせられてしまった。