劇場公開日 2021年2月19日

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「いじめられた時にはターザンの話を聞かせよう・・・あぁ~あ~」愛と闇の物語 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いじめられた時にはターザンの話を聞かせよう・・・あぁ~あ~

2021年3月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 イスラエルの作家アモス・オズの自伝的小説をもとに、イスラエル建国あたりの歴史的背景を学ぶことができる。ヨーロッパにおけるユダヤ人迫害については会話だけだったけど、エルサレムに移ってからの複雑な状況がわかるようになっています。

 ヘブライ語、アラブ語、英語といった言語が飛び交い、エルサレムにおけるユダヤ人とアラブ人が混在する中、国連が主導してイスラエル建国に至った経緯(シオニズム運動)。さらにはアラブ人も迫害を受けていた民族だと知り、建国後のパレスチナ問題もある程度わかりました。

 そうした国際的政治的な話はメインではなく、アモスの母親ファニアの心の問題がクローズアップされていきます。建国という理想、夢がかなうと、生きる目標が失われる・・・誰しもが生きる目的を考えると思いますが、叶ってしまうとやる気も失せる。ファニアにとっては家族のことよりも大きな要素だったに違いありません。やがて病んでいく母。少年の目にはどのように映っていたのだろうかという心理描写も興味深いところです。

 家族の描き方も少年の視点なので興味深いものがありました。求婚ライバルが多いため、必死でファニアにプロポーズした父アリー。物語を創作してくれる母。そして小説が売れずにいた父の本が5冊全部売れた!と喜んでいた後に、人気ロマンス小説家の部屋にはその5冊の本を見つけてしまったときの少年の心。徐々に父親から心が離れていく様子がうかがい知れます。

 子どものいない夫婦に子どもを貸し出すとか、ちょっと理解できませんでしたけど、それがちょっとした事件に発展。アモスも徐々に心を閉ざしていくようになるブランコ事故でした。「あなたは小説家になるべきよ」という言葉に対して、「ぼくは農家か、犬に毒を飲ませる職業に就きたい」。笑っていいのかどうなのか・・・青年期のアモスを見ると、笑っちゃダメなんだと思ったけど。

kossy