劇場公開日 2021年3月20日

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「【加害者側の”迷える子羊”を、真っ当な道に導こうとする被害者とのロードムービードキュメント。加害者組織の中にも被害者は居る。事件の悲惨さを知らない若者達が入信している事実にも暗澹たる気持ちになる。】」AGANAI 地下鉄サリン事件と私 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【加害者側の”迷える子羊”を、真っ当な道に導こうとする被害者とのロードムービードキュメント。加害者組織の中にも被害者は居る。事件の悲惨さを知らない若者達が入信している事実にも暗澹たる気持ちになる。】

2021年8月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

ー 当たり前であるが、テロ集団だったオウム真理教を擁護する気は微塵もない。麻原を始め、テロの関わった多くの者が極刑、もしくは無期懲役に処された事は、当たり前だと思っている。
  だが、この作品を観て、再確認したのは、麻原の呪縛にかかり、人生を棒に振ろうとしている人間がまだまだ居るという事である。ー

◆感想
 ・地下鉄サリン事件に巻き込まれたさかはら監督が、Alepfの広報部長に連絡を取り、今作で描かれているように、交流を深めて行く姿。
 本来であれば、自分の人生を狂わせた教団と同じ教えを、事件後20年経っても説いている教団の広報部長荒木に対して、罵声を浴びせてもおかしくないのに・・。
 ー さかはら監督と荒木の関係性は、友人の様にも見える。ー

 ・荒木の人間性の描き方の見事さ。
 彼は、さかはら監督に対して、丁寧語を使いながら、一緒に河原で石切をして子供の様に遊ぶ姿。そして、自分を可愛がってくれた祖母が住んでいた小さな町の駅に停車した列車の中から、涙を流しながら祖母が住んでいた方向を見る姿。
 更に彼は、さかはら監督の”お願い”に驚くほど、容易に従う。
 京都大学で学んでいた彼が、麻原と出会い、影響を受けた事を話す姿。
 さかはら監督の”明日、ご両親に会って下さい”と言うお願いにも、逡巡しつつ従う。
 そして、さかはら監督の年老いた両親を紹介され、喫茶店で二人に”大変申し訳ありません・・”と頭を下げる姿。
 ー 荒木は、非常に真面目な人間である事が、序盤からすぐに分かる。そして、人から影響を受けやすい性質の危うさもキチンと描かれている。ー

 ・ラスト、荒木はさかはら監督に付き添われ地下鉄サリン事件で犠牲になった方々に、霞が関駅に設けられた祭壇に花を添え、祈る。
 だが、追いかける報道陣が出すマイクに、荒木は謝罪の言葉を述べない・・。彼が、さかはら監督の年老いた両親に詫びたのは、さかはら監督との繋がりがあったからだと言う事が分かる。

<オウム真理教のテロにより、亡くなった無辜の方々、今でも後遺症に苦しむ方々は多数いる。だが、この作品ではオウム真理教の信者の中にも犠牲者は多数いるという事を雄弁に語っている。
 最も、恐ろしいのは、事件から20数年が経ち、麻原達が起こした事件が風化し、冒頭描かれているように、若き子羊たちが毎月10-20名、入信しているという事実である。
 あのような、事件は二度と起こしてはならない・・。>

<2021年8月9日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU